料理家サルボ恭子さん&夫セルジュさん。「国際結婚のいいところは二つの国が自分の国になること」
個を尊重するフランスと、和を大切にする日本。国際結婚だからよかったこと、大変なこと。 文化や言語の違いを乗り越えて結婚した日仏カップル3組に、話を伺いました。今回は、料理研究家のサルボ恭子さんと、フランス語教室を主宰する夫のセルジュさん。
目 次
フランス人は、家族や自分の時間を削ってまで仕事をしません
数年前から、同じアトリエでそれぞれ料理教室を主宰する料理研究家のサルボ恭子さんと、フランス語教室を主宰する夫のセルジュさん。終わり時間が読めない料理撮影など、結婚当初は恭子さんの仕事がなかなか理解できなかったセルジュさんも、職場を同じにしたことで仕事の様子が分かってきたといいます。
「フランス人は、家族や自分の時間を削ってまで仕事をしません。日本に住んで30年経ちますが、日本人の仕事ファーストの価値観は、未だに不思議に思うことも」(セルジュさん)
「フランスは個の文化ですし、彼は家族との時間を何より大切にしています。子どもたちが小さい頃は、フランスでバカンスを計画する彼と、部活の合宿に参加したい子どもたちの間で調整役になることもありました」(恭子さん)
渡仏前のフランス語教室でセルジュさんを食事に誘ったことがきっかけ
セルジュさんは再婚で、すでに成人して独立した一男一女は離婚した前妻との子ども。2人の交際は、フランスで料理を学んだ恭子さんが、帰国後もフランス語を忘れないようにと、渡仏前に通っていたフランス語教室のセルジュさんを食事に誘ったことがきっかけなのだとか。
「離婚歴があり子どもがいることは知っていましたし、ご縁あってのことなので、結婚に迷いはありませんでした。でも家族に報告したら心配されてしまい、そのことに少なからずショックを受けました。実際に会ったら、彼の実直な人柄に安心してくれたのですが」(恭子さん)
結婚当時、恭子さんは33歳でセルジュさんの長男は10歳、長女は8歳。
「ステップファミリーが多いフランスでは、子どもが離婚した父親と母親の間を行き来するのが普通。サルボ家もそうだったので、親3人の意見に子どもたちが迷わないよう、調整役を担うことが多かったかもしれません」(恭子さん)
二つの国が自分の国に。視野も世界も広がります
子どもたちが独立後は、夫婦2人の暮らしを経て、4年前から恭子さんの両親と二世帯暮らし。
「それぞれキッチンも別なのですが、夫がコーヒーを淹れて、両親に持っていくのが朝の習慣。家族を大切にするし、裏表がない誠実な人」(恭子さん)「彼女はさっぱりしているけれど優しい。子どもたちも信頼しています」(セルジュさん)
「国際結婚のいいところは、二つの国が自分の国になること。世界が広がって人間が大きくなるんじゃないでしょうか」(セルジュさん)。恭子さんも同意しつつ、常に意見を求められるフランスの文化には戸惑うこともあったと言います。
「フランスでは日本のように『話を流す』という概念がないので、どう思うか、なぜそう思うのか、常に意見が求められます。日常の会話を通して、自分の考えや求めていることを言語化する習慣がついたのは、フランス人の夫のおかげかもしれません」
恭子さんに5つの質問
Q 夫がフランス人で良かったことは?
A バカンスや食事など家族の時間を大切にすること。
Q 文化の違いで戸惑ったことは?
A 常に意見やその理由を求められる。
Q 国際結婚に迷いはなかった?
A ありませんでしたが、彼が再婚で子どもがいることもあり、家族は心配していたようです。
Q けんかはする?主な原因は?
A 些細なことでよくします。
Q 仲直りの方法は?
A 些細なけんかなので自然に。
PROFILE
サルボ恭子/さるぼ・きょうこ
フランスで料理と製菓を学び料理家として独立。料理教室を開きながら数々のレシピ本を出版。食から暮らしを愉しみ学ぶ会〈レトォア〉主宰。
サルボ・セルジュ/Serge Salbot
パリ出身。サルボフランス語教室 を主宰。1994年に来日し、今年で30年。恭子さんとは再婚。
『クウネル』2024年9月号掲載 写真/玉井俊行、取材・文/吾妻枝里子
SHARE
『クウネル』NO.128掲載
フランス人の素敵なルール
- 発売日 : 2024年7月20日
- 価格 : 1000円 (税込)