読後の感動を分かち合いたい!「多種多様な人々の存在に世界の広さを知る」文筆家・金井真紀さんの愛読書3冊
軽やかな文章とやさしいイラストで、重いテーマも 風通しよく伝えてくれる文筆家兼イラストレーターの金井真紀さん。お薦めの3冊は 「誰かに贈りたくなる、世界の広さを知る」本です。
PROFILE
金井真紀/かないまき
文筆家・イラストレーター。1974年生まれ。新宿ゴールデン街にあった詩人・草野心平ゆかりの店での体験を綴った『酒場學校の日々』(ちくま文庫)が好評。
「絵の入った本は贅沢な印象」という金井さん。選ばれた3冊も、まず絵の楽しさに惹きつけられます。同時に、描かれた多種多様な人々に世界の広さを感じ、読後はその感動を誰かと分かち合いたくなる本です。
『種をまく人』は金井さんが「人人本」と呼ぶ、1冊の中にさまざまな人が登場するスタイルの作品。 「ルーツも年齢もバラバラな13人が、貧民街に畑を作ることでつながっていくお話。といっても、すぐに仲よくなったりせず、恐る恐る距離を縮めていく感じがいいなあと。寓話めいていながら説教臭くないのも好みです」
『なくなりそうな世界のことば』では50の少数言語の中から、各言語の研究者が選んだ「その言語らしい」言葉が、絵とともに紹介されます。 「例えばミャンマーやインド辺りで話されるラワン語では、〝ドー〟という1ワードで、〝十分に火が通るまで弱火でコトコト煮込む〟の意味がある。たった一言の広がりに驚かされます。言葉ごとに専門家がつけたデータも、小さなキャプション扱いなのに濃い内容。手間のかかった料理の味わいです」
最後の『世界の市場』は文字どおり、12カ国の各都市の市場を、こまやかで心なごむイラストとともにルポ。 「とにかくイラストの情報量の多さに、同業者として圧倒されます。一番小さな金額のお札とそれで買える物が描かれているのも市場らしい。3冊とも、こんな本が自分でも描けたらいいなと、憧れる本でもありますね」
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