家庭的で丁寧に作られたお弁当のケータリングが口コミで広がり、雑誌への料理・レシピの提供、食や暮らしについてエッセイなどを執筆するようになったという、料理家の麻生要一郎さん。
日常の食卓を切り取ったレシピと短いエッセイで綴る、2冊目となる著書『僕のいたわり飯』が話題です。心と身体をいたわることができるのは日々の食事。献立の役に立つレシピはもちろん、気持ちを穏やかにしてくれる食卓づくりのヒントが見つかります。
麻生要一郎/あそうよういちろう
家庭的な味わいのケータリング弁当が好評。雑誌へのレシピ提供、食や暮らしまわりについての執筆などを経て、2020年には初の著書『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社)を出版。
Instagram:@yoichiro_aso
■おひとりさまでも、自炊
母が亡くなってしばらくの間は、愛猫チョビとふたり暮らし。
その期間、僕は誰のためでもなく、自分のためにごはんを作っていた。あれやこれやと手をかけず、 鍋ひとつでできる簡単なものが多かった。
料理は誰かのために作ったほうが美味しいというその「誰か」とは、 向こう側の人のこともそうだけれど、当然ながら「自分」という存在も含まれている。
今夜はこれが食べたい、ちょっと疲れているから、 昨日外食だったからなあ……
手をかけ、手を抜き、自分をいたわりながら手を動かして膳を仕上げていくのは、 大切な時間であると僕は思っている。
■ひとりでも、ちらし寿司
なにもハレの日ばかりではない。
僕にとって「ちらし寿司」は、ちょっと刺身が余ってしまったときにも勝手のいいメニューだ。
今日はごはんの中に「どんこ含め煮」と合わせ、酢蓮やみょうがの甘酢漬けを細かく刻んで入れてみたが、もう少し簡単に、がりなどを用いてもいいだろうし、寿司酢を使ったり、せん切りにした大葉を混ぜたりしてもよいと思う。つい、のせる具材に意識がいきがちだが、ごはんに少し風味をつけてあげることで、いっそう美味しく仕上がるというわけだ。
ご自分の好みの風味を導き出し、ひとりの食卓のときにこそ、ぜいたくに味わっていただきたい。
撮影/山田薫
※本記事は『僕のいたわり飯』(光文社刊)からの抜粋です。
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大好評『僕の献立』に続くレシピ&エッセイ第2弾。「いたわり」をテーマに、心身に余裕のないときにも活用したい、シンプルで滋味深い家庭料理を紹介。
2大対談では、漫画家のよしながふみさん、『eatrip soil』の野村友里さんが登場し、多くの人が面倒に感じる毎日の献立決めや買い物、段取りなどについて、日々の実践とその考え方について語る。
『僕のいたわり飯』(光文社)