毎日使うキッチンだから、使いやすさやデザインを重視したい。しかしそれだけではなく、地球にやさしい配慮や道具を選んでいるのが、脇もとこさんのキッチンです。キッチンが完成するまで妥協せずにこだわりぬいたそう。まるで自分の部屋と感じられるような心地の良い空間は、どのように作られたのでしょうか。
環境も考えた、地球にやさしいキッチン
まるでキッチンが自分の部屋みたい。家にいる日は、終日キッチンで過ごしてしまうこともあります、と語る、スタイリストの脇もとこさん。目の前に大きな窓がある、長さ3・2mのオープンキッチンは、壁側が総タイルで、明るく開放感が抜群です。この家は12年前に土地を買い、建築家に依頼して一から建てたもの。
「最初にお願いした建築家の方とは方向性がまったく合わず、何度打ち合わせをしても、ワクワクする図面が上がってこなかったんです。悩んだ挙句、夫とも相談して依頼をキャンセル。新しく、家具のテイストが好きだったパシフィックファニチャー・サービスに頼んだところ、細かい指示をせずともテイストがピタリと合う方にめぐり合えました。なので私たちからは『大草原にポツンと立つ家』とか『アアルトの家』とか、広さも立地もまるで違う理想のイメージだけを伝え、ほぼお任せで作っていただきました」
キッチンに関しては、脇さんが使いやすいサイズをオーダーしました。カウンターの高さは88.5㎝。シンクの幅は90㎝という具体的な数字。さらに蛇口はこれ!とピンポイントでブランドを指名しました。「この家の前に、賃貸で外国人向け住宅に住んでいたんですが、そこのキッチンがとても使いやすかったんです。なのでサイズは、ほぼそのキッチンのまま。とくに蛇口は料理中で手の平が汚れていても、甲や手首でワンプッシュすれば水が出る、TOTOのものをお願いしました」
ガスコンロとオーブンはフランスの老舗ロジェールのフリースタンディングガスレンジです。「本当は昔のアメリカのドラマによく出てくる〝マジックシェフ〟のコンロが究極の憧れだったんです。でも残念ながら、予算がオーバーで……」ロジェールは白いホーロー仕上げで、ガラストップカバーがついているのが特徴です。使わない時はカバーで覆うと、キッチンがすっきり見え、とてもスタイリッシュな印象に。「コンロも4口あるし、オーブンでは丸鶏をくるくる回して焼けるほど大容量。機能性には満足しています」
そんなふうに完成したキッチンですが、唯一の欠点は収納が足りなかったこと。工事の最後に「これでは食器や道具が収まらない」と、キッチンの背面に棚を作ってもらい、作業台の上には吊り棚を設置しました。「できあがった瞬間は、広いキッチンをありがとう、という気分でした」脇さんは広告や雑誌のプロップスタイリストとして長年活躍しているだけあって、キッチン家電やツール、食器もこだわりを持ってセレクトします。
「キッチンツールは使いやすさを重視します。機能性ありきのうえで、見た目も大事だなと思います」料理の際に使うレードルや計量カップなどは頭上にぶら下げて収納。菜箸やスパチュラ、ウッドボードなどはコンロの横にまとめてすっきりと。出したままにしたくない蒸篭や使う頻度が少ない大鍋などは、頭上の吊り棚や背面の収納棚に収めています 。
わきもとこ
スタイリスト、参鶏湯研究家、薬膳アドバイザー。中医学をベースに食を通して心とからだを調える『ホームキッチンファーマシー』を主宰。
https://www.homekitchenpharmacy.com
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◎コウケンテツさんの台所探訪。目指すは、良い道具を使いこなせる料理人。
『ku:nel』2021年5月号掲載
写真 目黒智子 / 取材・文 今井 恵