料理をするために、いつしか増えてゆく道具や材料。キッチンの収納やコーディネートでお困りの人も多いのではないでしょうか。家具で収納力を補い、統一感のある収納を心がけることで、便利で美しいキッチンに。工夫を施し、独自の世界観を生み出す飯塚さんのキッチンを紹介します。
飯塚さんのアトリエ、アンピュールは、浅草橋に佇むビルのワンフロアにあります。
「築50年、年季の入ったフローリングと南向きの窓が気に入りました。後付けの小さなキッチンはアトリエとしては十分ですが、収納が皆無なのでそこを補う工夫をしています」
収納家具の主力は、イケアのキャスター付きのワゴンです。
その収納力たるや、ボウルやふるい、タルトを伸ばすキャンバス、鍋、カッティングボード、ケーキクーラー、絞り出し袋など、棚一台分ほどに相当。材料を並べたり、焼き上がったタルトにクリームを絞ったりする作業台としても優秀です。
ほかにも、息抜きに欠かせない紅茶や日本茶は統一した缶にラベリングで分類したり、お菓子の型はケーキスタンドに重ねてオブジェ感覚でディスプレイしたりと、雑然と見せず楽しく収納する工夫がそこかしこにあります。そしてメタルとモノトーンでまとめた世界観も、プロならではのこだわりです。
「お菓子や料理が引き立つように、極力、色を使わないようにしています。渋好みなのは、生まれも育ちも浅草の江戸っ子だからかもしれません」
収納ゼロでも工夫次第でキッチンは使いやすくなる。
飯塚有紀子/イイヅカユキコ
料理研究家。グラフィックデザイナー業のかたわら、アトリエ、アンピュールを主宰。ステイホームを豊かにするレシピサイト「eatat home」も好評。www.eat-at-home.jp
『ku:nel』2021年5月号掲載
写真 奥田一平 取材・文 間中美希子