葉山の山の上で貸し切りレストランとケータリング業を営む伊藤千桃さん。「お金は無くても、何とかなるわよ」が口癖ですが、その精神はどこからくるのでしょう?お金について伺いました。
「お金はね、それはあるに越したことはないです。でもね、無いからといって悲観したり、焦ったりは全然しません。よく『老後の貯えは何千万円必要』とかTVでいっているでしょう?みなさん、そんなにお持ちなの?!って本当びっくりしちゃう。もちろん、我が家にはそんな貯金は無いですけども」
そういってニコニコ笑う千桃さんは実に大らか。一般にはなかなか話題にしづらいお金のことですが、「なんでも聞いて」と話します。
「老後のお金どうしよう?って不安に思っているお友達の話など聞くと、『そんなに不安を抱えていたらそこから鬱々とした気持ちになってかえって病気になっちゃうわよ』って思っちゃう」
人生についてどこか達観している千桃さんですが、山あり谷ありの人生を歩んできたからでしょうか?
「親も事業に失敗して、お金が無くて苦労しながらもなんとかやっているのをそばで見ていたからかしらね。人生なんとかなるんだなって思えるんです。離婚して貯えも仕事もないなか、娘と息子と子どもふたりをよく育てたな~。私どうやってやりくりしてきたんだろう?っていまでは不思議なくらいです」
「貯金なんて全然ない!」とあっけらかんと語る千桃さんですが、病気になったら?とか、不安にならないのでしょうか?と尋ねると……。
「保険も最低限しか入っていないんです。『じゃあ大病したらどうするの?』って聞かれるんですが、子供たちには私が病気になったら延命治療しないでって伝えてあります。それで、亡くなったら献体してもらうつもりで、もう登録してあるんですよ。解剖して医学の役に立ててもらい、火葬してもらって骨になって戻ってくるんです。お葬式もしなくていいし、お墓には納めずに、遺骨は海に撒いてってお願いしているんです。お墓があると遺された人たちが管理が大変ですし、海に還っていると思うと、どこにいても祈れるでしょ。調べたら、そういう団体で手続きをすれば海洋散骨していただけるんですって」
人や世間がどうではなく、自分がどうしたら心地よいかを知り、それを実践している千桃さん。その生き方は本当に清々しく、凛々しいのです。
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取材・文/鈴木麻子