【53㎡→30㎡ワンルームにお引越し/後編】冷蔵庫も小さくして余分な食材を買わなくなり、ムダもゴミも激減

本当に気に入ったものがあればたくさんはなくていい。その分、ひとつひとつに思いを込めて。そんなふうに暮らしをコンパクトにした方々を取材しました。パフューマーの山藤陽子さんは53平米1LDKの部屋から30平米のワンルームにお引越し。
これからの人生を見つめるために住まいとものを最小限に。
荷物はかなり処分したとはいえ、新居にはクローゼットがひとつしかないため、収納はかなり知恵を絞ったそう。
「調理グッズや仕事の書類を置く棚は新調しましたが、組み立て式でひとりでも簡単にバラせるものを探しました」
仕事の道具や頻繁に出し入れしない私物は、ネットで見つけた紙のボックスに収納し、積み重ねてリビングに。

左側はワークスペース。右側に積んである収納ボックスに入っているものも6割は仕事の道具。広く見えるようスッキリ白でまとめて。洋服も減らしてラック1本分だけに。
「これなら小さく畳めてすぐ処分できると思って。暮らすうちにきっと不要なものも出てくるし、住まいに対する考えも変わると思うので、いつ、どうなってもフレキシブルに動けるようにしました。家具や収納は全部キャスターをつけて、家事や体の負担を減らす工夫も」
住まいと持ち物がミニマムになり、生まれた変化。
住まいも持ち物もミニマムになったことで、さっそく生活にも変化が。
「冷蔵庫も小さくしたので余分な食材を買わなくなり、少ない材料や調味料で料理を考えるようになってムダもゴミも激減。設備も年季が入っているので、ものを大事に扱うようにもなり、自然と〝丁寧な暮らし〟をしている自分に気づきました。」

鍋や調理器具はしまわず見せる収納に。もともと持っているキッチン道具は少なく、料理はほぼこの道具だけでまかなっているそう。

普段使いの食器はこれがすべて。収納棚2つに入る分だけを厳選して持ってきた。

キッチン収納は『無印良品』のキャスター付きボックスで揃えて。「キャスター付きはひとり暮らしに必須。簡単に動かせるので、使い勝手が悪ければ後からでも置き場所を変えられるし、掃除のときもラク。年齢的にもちょっとしたことが負担になるので、我ながらいいアイデアでした」
「ずっと住み続けるつもりはなかったけれど、でも、住んでみたら景色もいいし、居心地がいいんです。田舎暮らしも考えたけれど、都会に暮らすよさも改めて実感しているところ。ここでじっくり考えます。次の取材のときは、また暮らしががらりと変わっているかもね」

広めのバルコニーがついていたのもこの部屋に決めた理由。「周りに高い建物が少ないので抜けがよく、朝は富士山が見えるし、日差しがポカポカ暖かくて気持ちがいいんです。マンションを一歩出ればおしゃれなカフェがたくさんあるエリアなのですが、ここで飲むコーヒーが最高」。

玄関には旅先で買ったスノードームや好きな絵を飾って。「フェーブも趣味で集めていて、こういう生活に必要ないものほど捨てられないんですよね」。
PROFILE

山藤陽子/やまふじ・ようこ
パフューマー・ライフスタイルコーディネーター
パフュームブランド『SCENT OF YORK.』代表。空間演出やコスメの香りをプロデュースするほか、“気持ちいいこと”をキーワードに、もの選びやライフスタイルを提案。
山藤陽子さん自宅の間取り図。

築50年のヴィンテージマンションで、30平米の簡素なワンルーム。生活スペースは7帖ほどで、小さい収納がひとつだけ。バスルームと玄関がやや広めに取られている。
『クウネル』2025年5月号掲載 写真/玉井俊行、取材・文/矢沢美香、間取りイラスト/丹下京子