移住した北海道で、自然とのちょうどいい距離感を考える日々ーたべるとくらしの研究所・安斎明子さん【住まいと暮らしvol.63】

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の佐々木陽子さんのバトンを受けてご登場いただくのは、「たべるとくらしの研究所」の安斎明子さんです。

安斎さんの暮らしのルール

1)身体感覚を大切にする
2)遊びと仕事のギャップを作る
3)なにかと話し合う

東日本大震災を機に、福島県から北海道・札幌に移住した「あんざい果樹園」の安斎明子さん。2018年には札幌から車で3時間の町、蘭越町に引越したそう。

「札幌は都市と自然の距離感がちょうどよく、暮らす上では理想だと思っていますが、自然環境の危機が叫ばれ、体感する今、自然側に立って人の営みの幸せとは何かを研究したいと思いました」

タオルはあけびのかごにしまって。

現在は近隣の尊敬できる農家さんや庭で採れたものを調理したり、ご主人の実家である福島の「あんざい果樹園」の果物を瓶詰めにして、不定期で販売しています。

「原点回帰や昔の生活に戻るとかではなく、どうやって人が自然環境に、より積極的に関わる生活を営むことができるのかを考えています。人と自然のちょうどいい距離感を探したいです」

果物は発酵シロップにして保存。「ドリンクとしてだけでなく、おやつや料理の甘味としても活躍しています」

保育所だった建物をリノベーションしたという現在のご自宅。一番のお気に入りは、露天薪風呂なのだとか。

「人目を気にせず、満点の星空を眺め、大音量で好きな音楽を流し、お酒を飲みながら入るお風呂は最高です。

犬を連れて町内を散歩していると、長年暮らしている方々が庭先に花を植え、きれいにしている光景が見えます。こんなにも豊かな自然に囲まれている限界集落で、より積極的に日々の営みを満たす暮らしをしていることに、感銘を受ける毎日です」

花屋のない町に暮らす安斎さん。「その辺りの草花から枝物まで、季節の花を生けています」

部屋の真ん中にある薪ストーブ。「天井が高い平屋なので、ロフトを制作して冬も暖かく暮らしています」

業務用シンクを使ったシンプルなキッチンは、ご主人の手づくり。

そのときどきのお気に入りを飾る棚。「ときに神さまと呼んで、感謝したり手を合わせたりしています」

デッキに作った外風呂。「薪で沸かすお湯。森には誰もいないので、音楽の音量をあげても大丈夫です」

毎朝の味噌汁は、ご主人の担当。「出汁と具材によって、入れる味噌の量が変わります。料理の基本だと思って日課にしています」。お気に入りのお椀は渡邊浩幸さんのスープボール。

根曲り竹はこの土地の名産。「ざるはいろいろなものを干すのに活躍します。今回は野草茶用に」

発酵シロップと季節の果物、フレッシュハーブのジュース。「そのときどきの素材に合わせて、お酒を入れることもあります」

家は町にある元保育所をリノベーションしたそう。

家の裏手にはきのこが。「北海道で山菜ときのこの豊かさを実感しました。山の達人にちらほら出会います」

3年前から犬を飼い始めたという安斎さん。「ポツンと一軒家に番犬は必須。車移動、家から出ない生活になりがちの中、毎日の犬との散歩、外遊びが楽しくなりました」

北海道のニセコエリアは雪深い地域。冬は屋根まで雪が積もり、雪遊びができるのが醍醐味だそう。

イタヤカエデの樹液採取は、春の仕事。「40分の1に煮詰めて、自家製のメープルシロップを作ります」

樹液は直接木から。「ポタポタ採れるのは、一年で2週間だけの限定です」

敷地内の森の中で、灯りを灯してホームパーティをすることも。

profile

安斎明子/あんざいあきこ

神奈川県出身。福島県「あんざい果樹園」に嫁ぐ。2011年に北海道に移住。「たべるとくらしの研究所」を設立。種まきからテーブルまでを掲げ、食を中心とした暮らし全般まで、農家や自然環境とのさまざまんコミュニケーションを表現している。
https://www.taberutokurashi.com

安斎さんがバトンを渡すのは、「暮らしかた冒険家」の伊藤菜衣子さん。「インテリアはもちろん、その先の一歩踏みこんだ心地よさの探究と、その解像度の高さは知らないと損だと思ってしまうほど。多大な影響を受けました」と安斎さん。伊藤さんの暮らしは、9月中旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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