好きなものを好きな場所に置く。パリの女性に教わる心地よい部屋づくりのコツ【前編】

古いものを大切に、完璧を目指さないのがフランス流。拾ったものや、不揃いでもOK。でも”好き”という気持ちにとことんこだわり、だからこそ個性的な部屋が生まれます。今回はパリの女性アーティストが暮らす素敵なアパルトマンを訪問しました。

PROFILE

Veronique MARMEUSE/ヴェロニック・マルムーズ

パリ生まれ。ソルボンヌ大学で美術史を、その後国立芸術学院で彫刻を学ぶ。映画や芝居の背景制作などののち、現在はアーティストとして活躍。

好きなものが好きな場所にある。物が多くとも心地よい暮らし

アトリエで作業中のヴェロニックさん。最近はワイヤーを使ったオブジェを製作中。使うワイヤーは丸めて棚の柱にかけている。

パリ東部、バンセンヌの森にも近い郊外に位置するモントルイユ。ここ数年、住宅地として人気が高く、なかなか賃貸の空き物件が出ないと言われている地域です。

ヴェロニック・マルムーズさんが暮らす家は、メゾネットタイプのアパルトマン。1階にキッチンとリビングダイニングルーム、アトリエ、バスルーム。2階にベッドルームと仕事部屋という80㎡以上の恵まれたスペースです。

「夫と離婚した後、10年前に息子とこの家に引っ越してきました。息子が独立したので、今はひとり暮らし。彼が使っていた2階を、あらためて私の寝室と作業場にしたんですが、将来はもう少しコンパクトな部屋に移ってもいいかなと考えています。でも元夫も息子も同じエリアに住んでいるから、何かの際にはこの家に集まれる。それはそれで便利なんですよね」

小さなオブジェや写真やアートをバランスよく棚に飾り、壁に貼り付けてデコレーション。天井の高さがさほどなくとも、縦長目線になるような空間デコレーションの演出が見事。

ヒーターの上にシャンパンの空き箱を置き、サボテンなどお気に入りの植物を並べている。

次の展覧会のために制作中のワイヤーオブジェを壁にディスプレイ。

この部屋を決めた理由は、両サイドに窓があり、自然光がたっぷり入る明るい部屋だから。しかも入居した際に修理したり、手を加えることもなく、そのままの状態で住めました。

「私が住まいに求める要素は、日中明るいリビングやキッチン、そして夜、静寂を保てる寝室なんです」

コンパクトでも4口コンロの機能的なキッチン。冷蔵庫の脇、ステンレスの壁の上など、ほんの少しのスペースにもお気に入りのものをディスプレイ。奥には2階に続く階段。

祖父がシェフだった影響からか、料理がとても好きと話すヴェロニックさん。

「キッチンで時間をかける煮込み料理を作ったり、友人を招くためにレシピを見ながらふだんと違うメニューに取り組んだり。とにかくキッチンに立っている時間が好きなんです」

キッチンに並ぶツールも機能性のある精鋭揃いで、ヴェロニックさんが料理にかける思いがうかがえます。コンパクトながらも、使い勝手がよく、お気に入りのキッチンです。

「料理の時間と同じぐらい好きなのが、リビングの丸いテーブルに座って、外を眺めながらお茶を飲むこと」

テーブルは祖母から譲り受けたもの。表面についたシミもまた味わいです。道で拾ってきたデザイン違いの椅子には、自分の手でアニマルプリントのカバーを作り、部屋にもしっくりなじんでいます。

後編はこちら

写真/篠 あゆみ、コーディネート/鈴木ひろこ、文/今井 恵

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『クウネル』No.122掲載

やっぱり、家が好き!

  • 発売日 : 2023年7月20日
  • 価格 : 980円 (税込)

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