【住まいと暮らしvol.38】自分の機嫌をとりながら、新しいことに挑戦する日々ーhaku hostel +cafe bar 菊地恵実子さん

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の那須真由美さんのバトンを受けてご登場いただくのは、北海道で「haku hostel +cafe bar」を運営する菊地恵実子さんです。

菊地さんの暮らしのルール

1)自分の機嫌は自分で取る
2)四季を楽しむ
3)あるものを活かす

北海道白老町で、ホステルとカフェバー「haku hostel +cafe bar」を営む菊地さん。

「移住した当時、町内にはあまり宿泊施設がなく、気軽に泊まることができる場所を作れないかと夫が提案。私も長年、“自分の場所を作りたい”という想いがあり、この場所がそうなるのではと、夫の志に同意しました」

ホステルは、菊地さんにとって初めての事業。それまでは何事もどこか人に委ねているようなところがあったと振り返ります。

「思うようにできないこともあるけれど、夫もスタッフも、みんななんとか頑張っている。そう感じて、自分で自分の機嫌を取るようになりました。花を飾ったり、手芸をしたり、習いごとをしたりしていると、自分を労って大切にしている気持ちになれるし、家族や仕事の人間関係を少し楽にしてくれる気がします」

今年にはビール工場、来年にはギャラリーショップもオープンと、次々に新しいことに挑戦している菊地さんが大切にしていることとは?

「ヴィジョンを明確に持つことでしょうか。一枚の絵のようなものを最初に頭に浮かべて、そこに近づけるようにすること。周りの人にその絵を共有して、一緒に目指すことが大切だと思います。家族や友人、身近な人が喜んでくれることが原動力になります。

昔と比べて、人が自分のことをどう思うかはあまり気にしなくなりました。いつか自分のペースで営業する、生活道具の店をのんびり経営してみたいです。人前で話したり、運転をしたり、苦手なことはいろいろありますが、ひとつひとつ克服していけたらいいなと思っています」

天然素材の台所道具が並ぶキッチン。「天然素材は使うほどにいい風景になります。国内外のルックスがよく、使いやすいものは「haku hostel +cafe bar」でも販売しています。

暮らしの中で花は欠かせないという菊地さん。「春になると、ホステルや自宅の近くで見つけた野花を適当にまとめてしつらえています」

秋になると、庭の常緑樹でリース作り。「昨年はアセビ、イブキ、ローズマリーのシンプルなリースを作りました。隣の作品は、北海道蘭越町のアーティスト、吉田みなみさんのもの」

アートを生活に取り入れることも大切に。「写真の作品は、清水智裕さんのもの。夫がドローイングなどをコレクションしています。「haku hostel +cafe bar」でも、北海道を中心としたアーティストの個展を開くなど、積極的にアート作品を紹介しています」

庭に生い茂る草木は、古道具のビーカーを合わせて、草木の勢いのまま盛大に飾るのが菊地さん流。

北海道の寒い冬には、薪ストーブが欠かせません。「薪は夫が牧場で切ったものを中心に、近所で調達。自然に猫たちが寄ってくる。冬の幸せな光景です」

正月のおせちは、毎年作るようにしているそう。「好きなものばかりを詰めたもので、伝統的なものではありませんが、家族揃って元日の朝、ハレの食事をいただくことを大切にしています。季節の料理は、娘に伝えたいことのひとつ」

長らく、朝食を抜くダイエットに取り組んでいたという菊地さん。「最近、午前中にしっかり食べる方が、忙しい1日の中で身体が楽なことを実感しています。北海道にはおいしいパン屋が多く、出かけた先ではその土地のパン屋を探して、多めに買って冷凍庫にストックしています」

自宅から1kmほどの牧場で、馬を2頭飼育中。「町内に競走馬の牧場があり、白老への移住も、馬と暮らしやすい環境だったことが決め手になりました。これは生まれたときから一緒の、シバとフウと今より幼い娘の写真です」

借りている牧場には、通称「トトロのトンネル」があり、木々を通り抜けると、鳥のさえずりと小川のせせらぎが心地よいサンクチュアリが。この場所で佇むことが、至福のときなのだとか。

自宅から10分ほど歩くと、海岸もあり、娘さんと散策も。「流木やサンゴ、丸い石などを拾って。石は、haku hostel +cafe barの箸置きにも使用しています。海岸から頂きものをしたときは、必ずゴミを拾うようにしています」

幼少期から社会人まで取り組んだ、クラシックバレエを約20年ぶりに再開。「週2回、隣町まで通っています。忙しい日々のなか、すべてを忘れて身体を動かす時間は、最高のメディテーション。バレエを踊れたら幸せ。ご機嫌でいられます」

時間を経て、美しく価値の出る古い生活道具が好きだという菊地さん。「古物商の資格も取得しました。これは、愛媛県四国中央市の実家から受け継いだ道具たち。どれも丁寧に作られていて、娘にも引き継ぎたいと思っています」

自作のリースとキャンドルは、冬の生活の必需品。「北海道の暮らしは冬が長いので、意識的に火を灯すようにしています。やわらかな炎に心がほぐれます」

profile

菊地恵実子/きくちえみこ

haku hostel +cafe barディレクター。大学時代をアメリカで過ごす。東京での生活を経て、岩手県移住とともに結婚。3年後、さらに北海道白老郡に移住。2019年4月、夫と共にホステルを開業する。8歳の娘、猫6匹、馬2頭と暮らす。夫と友人たちと共同で、ビール工場「THE OLD GREY BREWERY」を今年開業予定。来年には、同敷地内にてギャラリーショップオープン予定。
http://hakuhostel.com
Instagram:@hakuhostel、@minori.emiko
@theoldgreybrewery

菊地さんがバトンを渡すのは、北海道虻田郡豊浦町大岸で、夫婦で有機JAS認証の苺を育て、畑の隣で喫茶室を営むさとうりつこさん。「素敵な喫茶室に初めて訪れた際、晴れやかに迎えてくださったりつこさん。その美しく健康的な佇まいに、すっかりファンに。多忙ななか、朝のお弁当作りから畑の作業、お菓子作りまで、軽やかに日々を送ってられる印象があるので、暮らしのルールを知りたいです」と菊地さん。さとうさんの暮らしは、7月下旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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