本に囲まれて暮らす読書好きな方々が、今年刊行された書籍の中で最も心に響いたおすすめの1冊をピックアップ。それぞれの作品の魅力を語っていただきました。今の時代を写しとった文芸作品から、生き方や想いに共感した本、学びのための本まで。新たな出合いのきっかけに、ぜひ手にとってみてください。
甘糟りり子/あまかすりりこ
作家
著書に、女性や家族問題を取り上げた『産まなくても、産めなくても』(講談社文庫)、『バブル、盆に返らず』(光文社)など。
戦う姿が、背中を押してくれる。
フェミニズム運動をする女性とその恋人の物語。韓国の小説です。主人公スンジュンが泣く泣く別れた元恋人と再会すると、彼女は「メガル(フェミニストを揶揄的に呼ぶ言葉)」に。スンジュンには理解できず、しばしば衝突します。私も若い頃、男性から無自覚に女性差別的な発言や行動をされて悔しかったことが何回もあります。いつも仕方がないとあきらめていた。しかし、主人公が好きになった女性は違います。はっきりと間違いを指摘し、自分の立場が悪くなろうと差別と戦い続けます。
私もこうしたかった、いやすべきだった。お互いを理解しようと、きちんと向き合っている彼らがうらやましい。私や私たちの世代の女性があきらめてしまったために女性の立場はなかなか向上しません。この後悔の気持ちを忘れずにいたいし、これからの自分の作品の原動力にしたいです。
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