2013年の絵本デビュー作『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)を筆頭に数々の絵本やエッセイを発表している絵本作家のヨシタケシンスケさん。思わずクスっと笑ってしまうキャラクターや、独自の言葉選びや表現は、子どもだけではなく幅広い世代の心を掴んでいます。
そんなヨシタケさんの初の大規模個展が東京・世田谷文学館で開催中。展示内容の一部や見どころをご紹介します。
■入口から遊び心満点!ヨシタケさん自らのアイデアも。
まず、展覧会の名前からしてユニークなのです。その名も「ヨシタケシンスケ展かもしれない」。
入口には、段ボールで作られた小さな建物が置いてあり「ほんとうの会場はこっちかもしれない」というヨシタケさん自筆の看板が。これから始まる世界にワクワクを隠せません。
一般的な展覧会というと作品や原画などがずらりと並んで展示されるスタイルが多いですが、今回の展覧会はひと味もふた味も違います。
テーマはずばり「ヨシタケさんのアタマの中をのぞきこむ」。
数々のヒット作を生み出しているヨシタケさん。そのアイデアや、どういうプロセスを経て作品となっていったのかを見る・知ることができます。
とくに圧巻なのは、天井近くまで壁一面に展示された小さなスケッチ。
これは、ヨシタケさんが20年以上使い続けている愛用の手帳に描かれたスケッチの複製で、その量は膨大(この展示もごく一部なのだそう)。
気になったことや考えたことなど、なんでもこの手帳に描き留め、それが絵本のテーマになることも多々あるのだといいます。
■ 本人直筆の付箋があちこちに。
日々、スケッチをたくさん描き留め、そのなかからテーマを絞り込んだら、A4サイズの紙にアイデアスケッチを描いて絵本のテーマや内容を具体化していくのがヨシタケさん流。
ヨシタケさんが描くアイデアスケッチは、絵も字もとても小さいため(これには理由があります。答えは展覧会で)、見やすいように拡大されたパネルが並びます。
会場にはヨシタケさんによる直筆の付箋が貼ってあり、制作秘話を知ることも。それらをじっくりと目で追うだけでも楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
■ 絵本にはない展覧会のための描きおろしも。
また、会場を進むと目に飛び込んできたのが体験展示の「てんごくのふかふかみち」と「じごくのトゲトゲイス」。これは、『このあとどうしちゃおう』に登場する、おじいちゃんのノートにあった天国と地獄のイメージから生まれたものだそう。
おじいちゃんが考える「地獄」と、その地獄にいかにもありそうなトゲトゲイスがとってもユニーク。実際に座っている子どももいて歓声が上がっていたのが印象的でした。
ほかにも、ヨシタケさんが大学時代に制作した立体作品や、アトリエにある愛蔵コレクションなどの展示も多数あり、最後まで飽きません。
筆者の取材時、会場には、親子連れのほか、服飾関係の学生さん、外国人の方、おばあちゃん世代の方々まで、幅広いお客さんの姿があり、じっくりと作品に見入っていました。
■ ヨシタケさんの生い立ちや絵本作家のデビュー秘話も。
展覧会の後半には、ヨシタケさんの年表や会社員時代のエピソードなどもあり、ヨシタケさんの新たな一面を発見することができます。
最後はヨシタケさんからのスペシャルメッセージも。その言葉はさりげなくもじんわりと心に響き、でも、最後まで遊び心を忘れないのがヨシタケシンスケさんなのです。
知れば知るほど面白いヨシタケ・ワールド。東京会場の世田谷文学館は2022年7月3日まで。その後、全国を巡回予定です。ぜひ、この機会にヨシタケさんのアタマの中をのぞいてみてください!
ヨシタケシンスケ展かもしれない
会期:2022年4月9日(土)~7月3日(日)
会場:東京都世田谷区南烏山1-10-10
世田谷文学館 2階展示室
時間:10:00~18:00
休:月曜休館
※混雑防止のため日時指定制。世田谷文学館ホームページの公式オンラインチケットサイトでご購入ください。
取材・文/結城 歩