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豊かな自然と歴史に育まれた駿河文化に触れる、大人の春旅

富士山

晴天に恵まれた早春のある週末、東京から新幹線で1時間ほどの静岡駅で下車し、駿河(静岡県中部地域)を旅してきました。

新しいお茶文化を体験した前編に続き、徳川家の城下町として発展してきた歴史と文化、温暖な気候と豊かな自然に恵まれた駿河の魅力をお伝えします。

富士山と駿河湾を一望できる絶景ポイント「日本平」

静岡県の東に横たわる日本平は、正面に富士山、眼下には三保松原や駿河湾を望むことができる絶景スポット。日本観光地100選で1位に選ばれたこともある景勝地。

訪れたのは隈研吾建築事務所が設計を手がけた「日本平夢テラス」。精巧な木組みによる美しい建築と、圧巻のパノラマビューが楽しめます。

駿河の歴史が学べる展示室や絶景が楽しめるカフェを併設しているので、家族旅行や女子旅でのんびり過ごすのに最適。日本平までは景色を楽しみながらドライブするもよし、静岡駅と東静岡駅からはバス便でもアクセスできます。

日本平 隈研吾
隈研吾設計事務所による木組みの建築も圧巻。入場無料で地元民の憩いの場としても人気のスポット。夜には美しい夜景も楽しめるます。

ロープウェイに乗り込んで、いざ久能山東照宮へ

日本平 ロープウェイ乗り場
見晴らしも素晴らしい日本平ロープウェイ乗り場。駿河の名産を集めたお土産店も併設。
日本平ロープウェイ
「日本平」の山頂と徳川家康ゆかりの史跡「久能山東照宮」を5分で結ぶロープウェイ。
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美しい富士山にご挨拶したら、ロープウェイからの景色を楽しみつつ、晩年を駿河で過ごした徳川家康公の墓所がある「久能山東照宮へ」。

「東照宮」といえば日光を思い浮かべますが、より歴史が古いのはこちら。遡ること400年以上前、徳川家康公が晩年を過ごした静岡にある久能山に埋葬してほしいという遺言を残したことから、当時の名工・中井正清を大工棟梁として創建されました。

 

 

久能山東照宮 入り口
神様の正面を邪魔しないようにという配慮からか、少しずつ左に寄せて作られた参拝路。
最初に目に入る楼門の中央には平和の象徴「獏」が。細部にわたり様々なメッセージが込められた彫刻、装飾が施されている。
久能山東照宮 馬
家康公の愛馬を飼育していた国定重要文化財の神厩。現在は日光東照宮の眠り猫と同様、左甚五郎作と伝わる愛馬の像が納められている。
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国宝に指定されている御社殿は本殿と拝殿を床の低い石の間でつないだ日本で最初の「権現造(ごんげんづくり)」。カラフルな色彩は漆塗りや岩絵の具によるもの。創建当時から50年に一度のペースで塗り替えを行うことで、400年前と変わらない色彩が保たれているそうです。

修復は漆を剥がすところから始まり、30工程ほどかけて1から塗り直すため時間がかかり、直近の修復作業は平成14年〜21年と、約7年半の歳月をかけて行われたのだそう。美しい色彩と細部に至るまで精緻な装飾からは、創建当時の職人たちの能力の高さ、家康公への畏敬の念が伝わってきます。

 

久能山東照宮 権現造り
日本最初の「権現造」として歴史的建築物としても貴重な御社殿。
久能山東照宮 拝殿
隅々まで豪華絢爛な装飾が施された拝殿の内部。
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極彩色の拝殿の中で、あれ、塗り残し?と気になる箇所を発見。聞いてみると、これは「完璧に仕上げるとそこから綻びが始まる」という考えから、あえて一部分を未完成にすることで崩壊を防ごうとした願掛けのようなものでは。とのこと。日本人特有の「未完の美」を感じたエピソードでした。

久能山東照宮 拝殿
すべてを完璧に補修せず、一部分があえてそのまま残されたことで、時の変化や先人からのメッセージを感じることができる。

御社殿からさらに階段を登り山の上へと進むと、家康公が眠っているとされる墓所が見えてきます。家康公の墓所は日光東照宮にもあり、どちらに遺骸が埋葬さsれているかは今だ解決していない謎。こちらの墓所は富士山、そして日光東照宮まで直線で結ばれていて、墓所を詣でると同時に富士山と日光東照宮も参拝することできるのだそう。

久能山東照宮、富士山、日光東照宮が一直線に並ぶ「レイライン」と呼ばれる不思議な立地を含め、歴史ミステリー好き、建築好きにはたまらないスポット。家康公にあやかり仕事の成功や出世を祈願に訪れる人も多いそうで、旅の記念に「出世守り」を授かりました。

久能山東照宮 家康の墓
大きな一枚岩を重ねて作られた徳川家康公の霊廟。しんと静かな山の中で荘厳な空気が漂っていました。

職人の手から手へと受け継がれてきた漆塗りの工房へ

久能山東照宮を400年美しく保ち続けてきた漆塗りの素晴らしさに感動し、駿河の代表的な漆工房、「鳥羽漆芸」さんを訪ねました。

漆塗り 工芸
ショールームに併設された工房では、若い女性職人さんが丁寧に漆を塗り重ねていました。

浅間神社や久能山東照宮の建立時に全国から集められた職人たちが、温暖で暮らしやすい駿河にそのまま移り住んだことから、高い技術が継承されている「駿河漆器」。

漆の木から樹液を集めるところから始まり、驚くほど手間のかかる塗りと乾燥を重ねて完成する漆器は美しく堅牢で、国内外から多くの注目を集めています。

漆
「生漆(きうるし)」と呼ばれる生の漆は乳白色。空気に触れると酸化してみるみる褐色へと変化していく。
赤い漆は顔料、黒い漆は鉄分と反応させることで鮮やかな色を生み出している。

人気の商品は試行錯誤の結果鮮やかな色付けを実現したカラーグラス、「拭き漆」と呼ばれる技法で木目を生かしたナチュラルな風合いのカップや器など。

漆 カラーグラス
ガラス×漆という新発想と高い技術からうまれた色とりどりのカラーグラス。
漆 カップ
工房で職人さんが漆を塗っていたカップの完成形。木目が美しい「拭き漆」のマグカップ。
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江戸時代から脈々と受け継がれてきた伝統技法が「今」の感性でアップデートされ生活の中で息づいていく。そんな駿河文化の変遷を感じ、胸が熱くなりました。

若き後継者の情熱が支える完全有機栽培のお茶作り

駿河文化としてやはり欠かせないのがお茶の栽培。独創的な「一本仕立て」という方法で完全有機栽培を手がける「葉っピイ向島園」の工場と茶畑を見学させていただきました。

駿河 茶畑
訪れた時は生憎の雨模様でしたが、霧が立つ山あいに茶畑の緑が映える美しい光景に出会いました。

園主の向島和詞さんが農園を受け継いだのは父の和光さんが若くして急逝した18歳の時。独自の信念を持っていた和光さんは完全有機栽培を目指すも、道のりは険しく、残ったのは莫大な借金。

和詞さんに残されたのは、和光さんが15年の歳月を費やして確立した「一本木仕立て」という栽培法。この「一本仕立て」に未来を感じた和詞さんは、たった一人、まさにマイナスからのスタートで農園を引き継ぎ、完全有機栽培茶の製品化に邁進します。

その精力的な活動は徐々に実を結び、完全有機栽培における数々の厳しい基準をクリア。2015年に食の安全、環境保護、労働者の保護が認証された農場に与えられる認証J-GAP認証を取得。2009年には最年少青年農業士に認定され、講演やワークショップを行っていたことも。

2017年に新工場を構え経営が軌道に乗った現在は、自分らしい仕事のあり方を模索しながらSDGsにも積極的に取り組んでいるそうです。

葉っピイ向島園 向島和人氏
葉っピイ向島園の園主、向島和司(むじうじまかずと)さん。SDGsへの積極的な取り組みなど、駿河の地から新しい茶園のあり方を発信。
駿河者
全国にも多くのファンを持つ「葉っピイ向島園」の完全有機栽培茶。商品はホームページから購入可能。

早朝の小川漁港で駿河湾の豊かな恵みを体感

駿河の魅力としてもうひとつ欠かせないのが、駿河湾がもたらす豊かな海の恵み。「早朝の漁港の活気を感じてほしい」という地元の方の案内で、ホテルに一泊した翌日、夜明け前の小川漁港を訪れました。

日が登る前の薄暗いうちから、水揚げされたばかりの鯖や鰯で、港のコンテナがどんどん満たされていきます。

朝焼けに輝く富士山を背景にきびきびと働く海の男たちの姿に、静かに感動してしまいました。見学の後は7時から開店する漁港の食堂で鯖定食をいただき大満足。

初めて訪れた一泊二日の駿河週末旅。忙しい日常生活の中では忘れがちですが、今の私たちの生活が先人たちの知恵や工夫の延長線上にあること。伝統を継承しながらも常に新しいあり方を模索していくこと。自然の恵みに感謝し、次の世代へと繋いでいくこと。など、今を生きる私たちに大切なことに気づかされた充実の旅となりました。

取材・文 吾妻枝里子 写真 伊東武志<Studio GRAPHICA >
取材協力 するが企画観光局 VISIT SURUGA

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