50代エディターの「大阪・関西万博」駆け込みレポート。予約なしでも楽しめる万博建築&アート!

5月の開幕に始まり、いつか行こうと思っているうちに気づけば、10月13日の閉幕までカウントダウン。遅ればせながら、初めての「大阪・関西万博」へ行ってきました。予約ゼロ、行列に並ぶ自信もない私が見て回った万博は...、予想以上に大充実! 建物は面白いし、会場のいたるところにアートもたくさん。行くだけでも、楽しい!それが万博でした。
異文化に触れる海外パビリオン。

万博は、海外の文化や価値観に触れ、“世界”を知ることのできる貴重な機会。大好きなあの国、興味のある国、知らないけど覗いてみたい国...、見てみたいパビリオンはキリがないほどありますが、限られた時間で堪能するため、事前に自分なりのTODOリストをつくりました。
・予約なしで入れるパビリオンに3つトライする
・有名建築家の建築を鑑賞する
・会場内に点在するアート作品を見つける
・夜景を鑑賞する
目的を絞ると、気持ちもラクに!
マイボトルを片手に、熱中症対策も万全。いざ、会場へ。

伝統と未来が交差するUAEパビリオン。建築にも圧倒!

夢洲駅から東ゲートを進み、大屋根リングを見上げたその先に見えたのは、「UAE(アラブ首長国連邦)パビリオン」。ガラス貼りの建物の中には、最大16メートルにもおよぶ独特な柱が立ち並ぶ、“オアシス”のような空間が広がっています。私にとって未知なる国UAE! ユースアンバサダーの案内でしっかり説明を聞くことができました。
展示テーマは「大地から天空へ」。大地に根を張り、天へと伸びるナツメヤシはUAEの象徴。90本もの柱は、ナツメヤシの農業廃棄物である葉軸が使われているそうです。伝統的なエミラティ建築様式「アリーシュ」を再解釈し、日本の木工職人の手によって建てられた、いわば友好の柱ともいえそう。

UAEでは、ナツメヤシは200種ほどあり、その実であるデーツ(ナツメ)は客人のおもてなし菓子としてコーヒーとともに振る舞われるほど、重宝されているそうです。

客人を家に迎え入れる時は、お香とコーヒーでもてなす。
UAEの先住民エミラティは人口1100万人のうち、たったの12%。世界200カ国の人が住む、まさに“多様性”に寛大な国。建国の祖は「人々の健康があって国が豊かになる」という言葉を残しており、国民の医療費は無料、助け合いの精神が根付いているといいます。
館内は、伝統的な道具の展示から、最先端の宇宙開発や医療分野までを解説。“開けた国”UAEの今を知ることができました。

AIや衛星通信など、先端技術を取り入れた宇宙探査の分野にも積極的。

子どもから大人まで楽しめる、さまざまなワークショップも人気。私が参加したのは、植物のエマルションを使って自分だけのアート作品をつくる「アンソタイプ」を体験するワークショップ。
パビリオン内にはレストランも併設。私にとっては未知のUAEの料理だったので、ワクワク。
ランチBOXで提供された料理は、お客様をお迎えする際や日本のお正月にあたる「イード」と呼ばれる祭りの場で振る舞われる、特別な料理をイメージしているそう。
ランチは4種類あり、私が選んだのはチキンの「ダジャジュ・マッチブース」。大麦やザクロが入ったサラダ、カルダモンとクミンの香りがきいた「カミールパン」、ペーストしたカボチャにカルダモンが香るデザート、と、どれも初めての味。
独特なスパイスの味は、“バザー”という、カルダモン、クミン、フェンネルなど10種以上のスパイスをブレンドしたエミラティ料理に欠かせないミックススパイスで、「これぞUAEの味」になるそうです。ドリンクで選んだ「アイス・スリマニティー」は、ローズウォーターにこの“バザー”をきかせた紅茶で、とてもおいしかったです。

UAEパビリオンのユースアンバサダー、ハムダさん(左)、アマルドさん(中)、ユリさん(右)。
UAEパビリオンで印象的だったのはユースアンバサダー。お国柄なのか、人柄も穏やかで展示を丁寧に説明してくれたおかげで、遠かった国がちょっとだけ近く感じるように。万博ってやっぱり楽しい!
憧れのフランス館は、華やか一色!

どこか異世界へと迷い込んだような、五感を刺激するインスタレーションに圧倒される「フランス館」。
フランスが誇るクラフツマンシップと彫刻、そしてアート。世界的メゾンも全面的に参画した、これぞフランス!を見せつける展示はやはり圧巻でした。夜は、建物がトリコロールカラーにライトアップされ、ムード満点な姿に変わります。



夜空に浮かぶ「One World.One Planet.」は、ドローンが描いたメッセージ。
ホスト国ニッポン!楽しく“いのちの循環”を学ぶ「日本館」。

朝一番に会場入りしたことが功を奏し、さほど並ばずに入れた念願の「日本館」。
「プラント」「ファーム」「ファクトリー」の3つのエリアをぐるっとひと巡り、ゴミのこと、微生物のこと、二酸化炭素のこと、海藻のこと...、まったなしで考えるべき課題の今と未来について、「いのちの循環」をテーマに分かりやすく展示されています。32種の藻類キャラに扮したキティちゃんのディスプレイは、誰もが楽しくお勉強できる秀逸な展示でした。





日本館は、万博会場で出たごみを微生物が分解してエレルギーを生み出す再生工場の役割も。円環状の建物の中心にある屋根のない水盤スペースに張られたまっさらな水は、ごみから生まれた水だというから驚く。
目玉スポットの一つ「火星の石」の展示もあり、鑑賞後には「鑑賞証明書」なるものも配布していました。

一見の価値あり!楽しいパビリオン建築探訪
こんなの見たことない!? じつは名だたる建築家が手がけたパビリオンも多数あり、中にはかなりユニークなものも。建築を見るまわるだけでも、相当楽しい。それが万博!

外壁と、外部に開放された通路がカラフルな布に覆われていた「NTT Pavilion」。

万博のメインホールである「EXPOホール」。建築デザインは伊東豊雄氏。

パナソニックグループパビリオン「ノモの国」は、永山祐子氏による建築。繊細なオーガンジーの膜が風にひらひらと揺れていて美しかった。

シグネチャーパビリオン「Better Co-Being」 は、SANAAがデザイン。森と溶け合うように佇む、完全屋外型のパビリオン。

まるで宇宙から生み落とされたタマゴのような「電力館」。大屋根リングを歩く人たちの影がタマゴに映りこんだ瞬間を偶然撮影できた。

上から吊り下げられたロープで建物が覆われた「ポルトガル館」。デザインは隈研吾氏。

螺旋状のオブジェが目を引く「オーストリア館」。

ライトアップされると一層スペイシーな雰囲気だった「クウェート館」。

隈研吾氏による「カタール館」は、木の箱を模した建物を白い布で覆ったようなユニークなデザイン。


夜空に浮かび上がる大屋根リング。木造建築のライトアップは幻想的で美しい。
ライトアップされる夜は昼間の景色とはまた違い、まるで夢の国。大屋根リングにのぼり、会場全体を見渡してみるのもおすすめです。
会場に点在するアート作品も見逃せない!

会場中央の「静けさの森」の近く、屋根も壁もない開放的な空間「Better Co-Being」。来場者はWEBアプリやデバイスによって、繋がり、導かれながら、アート空間を巡る。光、風、雨といった自然の気配が流れ込み、訪れる時間帯や天候によっても体験は変化する。プロデュースは宮田裕章氏。 ※入場には予約が必要です。朝と夜の時間帯で、一部エリアに予約無しで入場できる「自由観覧」も実施中。

金沢21世紀美術館の展示作品《スイミング・プール》でも知られる、レアンドロ・エルリッヒの作品が万博会場でも! 《Infinite Garden - The Joy of Diversity》は、鏡張りの建物に視覚のトリックが仕掛けられ、映り込んだ人が幾重にも見えたりと空間が無限に続く不思議な感覚を味わう。

国際的に活躍するアーティストによるパブリックアートは、会場内の21箇所に点在しているそう。繭の中に引きこもる人を連想した、奥中章人の作品《INTER-WORLD/Cocooner: Apparent motion of celestial bodies》は実際に中に入ることもできる。

東ゲート近くに鎮座する名和晃平の《Snow Deer》を、帰り際に発見。(勝手に)お見送りありがとう。
遅ればせながらも初万博、やっぱり面白い。テーマパークのように趣向を凝らした各国のパビリオンはさることながら、建物やアート作品を見て回る時間も堪能できました。これらが閉幕後はすべて幻となってしまうなんて、、と思ったら、疲れなんて吹き飛んでしまいました。
「大阪・関西万博」は、10月13日(月・祝)まで。
まだ行けていない方も、リピートしている方も、あと1ヶ月。後悔のないよう計画を立ててみては!

撮影・文 神保亜紀子