自然と調和した屋外アートが魅力的な札幌の旅。心身が解放できる癒しのスポット3選【大人のニッポン観光】

新しいものを受け入れ育む北海道の中心地札幌。市内には豊かな自然とアートが共にあるスポットが多数点在しています。人気の屋外アートスポットをご紹介します。
触れて感じて全身で 遊ぶ、屋外アート。
日々の喧騒を離れてリラックスしたい、無心になりたい。大人は時々、ギュッと固くなった頭と心を緩めたい衝動にかられます。日本最北端の政令指定都市でありながら自然もたくさん残る札幌。そこには心身が解放できると人気の屋外アートが多数点在しています。
spot1/石山緑地

林間からのぞく、風雨で削られた火山灰層の尖塔。
札幌市内から車で約30分、札幌軟石の石切場跡に造られた『石山緑地』があります。大胆に切り取られた採掘跡に圧倒され進むと、螺旋状の石塔の前でギターを弾き語る男性。「自然の中で歌えるのは本当に気持ちいい」。また、軟石の階段で遊ぶ近所の高校に通う仲良し3人組にも遭遇。「地元なのに初めて来ました。不思議で楽しい」。

螺旋状の石塔と水路がまるでラピュタのような『スパイラルスプリング』。

軟石の階段が水紋のように拡がる『ネガティブマウンド』。見るだけでなく、市民が遊んだり歌ったり暮らしの一部としてある憩いの場所。
石山緑地
札幌中心部より車で南へ30分。かつてこの周辺は、現在でも北海道内の建造物に使われている軟石(凝灰岩)の産出地でした。石切場跡として荒れていた土地を、道内の彫刻家集団『CINQ(サンク)』が計画から携わり、市民がくつろげる公園に再生。緑に恵まれた南北に細長い敷地は、間に市道を挟む形で遊具やテニスコートを擁する北ブロックと、『CINQ』の造形作品が点在する南ブロックで構成されています。南ブロックの切り立った火山灰層の岩肌は、まさに自然が手がけた迫力の彫刻作品!そのダイナミックな景観も見所です。
住:札幌市南区石山78-24外
電:011-578-3361
営:駐車場 7:00-21:00
休:駐車場 11月下旬〜翌4月中旬 閉鎖 ※公園のため年中開放
spot2/札幌芸術の森

思わず同じポーズをとりたくなる『椅子になって休もう』(作・福田繁雄)。
そこから車で約10分、70以上の彫刻が広大な土地に展示されている『札幌芸術の森』に到着。

風で表情が変わる『大地からの閃光』(作・飯田善國)。

白い円錐の先には何がある!?『隠された庭への道』(作・ダニ・カラヴァン)などアートを全身で体感できます。
「北海道は四季が鮮やか。夏は比較的涼しく過ごしやすいのでおすすめです。その反面、冬は厳しく雪深い。そんな豊かな気候でエイジングされた変化を楽しんで鑑賞できるのも屋外アートの魅力ですね」と、スタッフの阿部有歩さん。

空に線を描くような『うつろひ』(作・宮脇愛子)。

山道で会う『若きカフカス人への追幻想譜』(作・鈴木実)。
札幌芸術の森 野外美術館
緑生い茂る起伏に富んだ広大な敷地に、国内外64名の作家、74点の彫刻作品が展示されています。「ここに作品を置く作家の多くは実際に足を運び、設置する場所など考えを巡らせました。時と共に変化する作品のエイジングも屋外アートならではの魅力です」(管理課業務係・阿部有歩さん)。光や風、鳥や虫の音に、緑や土の匂い。訪れる季節や時刻、天気が違うだけでも、作品の印象は大きく変わります。札幌中心部より車で南へ約40分。五感すべてでアートと自然に浸れる心地いい場所です。
住:札幌市南区芸術の森2-75
電:011-592-5111
営:9:45-17:00(6/1〜8/31は17:30まで。入館は閉館30分前まで)
休:11/4〜翌4/28
入館料 800円(一般)
https://artpark.or.jp/
spot3/安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄

美唄市(びばいし)生まれの世界で活躍する彫刻家・安田侃(かん)の作品が7万平方メートルの敷地に展示されている野外彫刻美術館。巨大大理石から彫られた『真無(まむ)』が芝生と綿毛のタンポポと共演。見て触れて感性の扉を開いて。
そして札幌市内から車で移動すること約1時間、『安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄』へ。周囲を山に囲まれ、にぎやかな蝉の声、カエルの大合唱が響きわたる山あいの地、安田侃の彫刻が迎えてくれます。

『天(てんもく)』。

『水の広場』。
スタッフの泉沙希さんは「正解も間違いもない。ここにあるのは自分と作品と自然だけ。情報であふれた生活から少し抜け出せば、こんな豊かな時間が流れているんですよね」。

『天聖、天』。
安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄
炭鉱都市として栄えた美唄市。1973年市内の全地下炭鉱閉山、’81年には市立栄小学校も閉校しました。その旧体育館を地元出身で国際的に活躍する彫刻家・安田侃が作品を保管するためのアトリエとして使用。そこに置かれた彫刻を見つめる子供たちの姿を見た安田侃が「子供たちが走り回れる広場を作ろう、止まり木のように自分の彫刻を置きたい」と’92年に美唄市とともにスタート。「作品は観る人を映す鏡。抱き着いたり座ったり、自由に無心で楽しんでほしい」と安田氏は言います。広々とした敷地内には、彫刻40点余が並びます。
住:美唄市落合町栄町
電:0126-63-3137
営:9:00-17:00
休:火曜、祝日の翌日(日曜除く)、年末年始
入館無料(任意による寄付)
https://www.artepiazza.jp/
写真 伊藤徹也、取材・文 遊馬里江、河田実紀