55年ぶりの『大阪万博』へ!70代アーティスト片山優子さんが人生二度目の大阪万博をレポート

55年ぶりに大阪で開催中の国際博覧会『大阪・関西万博2025』。大阪在住のアーティスト・片山優子さんが現地を訪問。高校生ぶりに体感したという『大阪万博』の魅力や楽しみ方をたっぷりとレポートいただきました。
1970年『大阪万博』の記憶
1970年の大阪万博。当時、私は高校1年生。それまで外国というのは、テレビや映画の中だけのものでした。
物心ついた頃から夢中になって観ていたのは、SFドラマ『宇宙家族ロビンソン』。特に次女ペニーが大好きで、画面越しに広がる未知の世界に想像をかき立てられていました。
『奥様は魔女』のサマンサのヘアスタイルや衣装にも惹かれ、モノクロテレビだったにもかかわらず、頭の中ではお気に入りのバービー人形を通して金髪にワンピース…と、自分なりにカラー変換をしていたように思います。
そんな私が万博で、初めて実体験として日本以外の世界に触れました。
大好きな岡本太郎氏の「太陽の塔」のもと、世界各国のパビリオンを巡り、各国のコンパニオンのお姉さまたちの制服も憧れました。ミニスカートブームの火付け役で、67年に来日したツイッギーの姿を思い出したのもこの時です。
初めて外国人を一度にたくさん目にして、改めて世界の広さに驚きました。
入場料は確か500円ほど。お小遣いで入れた、と記憶しています。「人間洗濯機」や「月の石」にはもちろん長蛇の列。レストランで「Tボーンステーキ」を初めて食べた、という友人もいましたよ。
「ダイダラザウルス」というコースターもあり、5つのコースのうち、私は青か赤に何度も何度も友人たちと並んだことを思い出します。
そんな記憶を胸に、再び大阪万博の地へ——。
人生二度目の『大阪万博』へ
1970年の万博から55年。体力のことも考慮しつつ、17時入場の3,500円チケットを申し込み、夢洲駅に降り立ちました。
もちろん今回はジェットコースターのような乗り物はありません。開催前の評判も決して良いとは言えず、大阪市民として「成功してほしい」と思いながら、どこか他人事でした。
でも、やはりこれは“行っておくべき”チャンス。大阪メトロ中央線で夢洲駅に。
東ゲートへ。手荷物検査とチケットチェックで10分ほど並ぶと、目の前に広がる景色に心が躍ります。今回は友人と2人で訪れました。

・万博の空気の中に自分たちの存在を感じること
・万博のシンボルであり、日本の神社仏閣などの建築に使用されてきた伝統的な貫接合に、現代の工法を加えた「大屋根リング」を歩くこと
・世界各国のパビリオンの建築を楽しむこと
・予約なしで1〜2か所でもパビリオンに入れたらラッキー
と、行く前にざっくり決めました。友人は下調べをしてくれたうえに、お弁当まで作ってきてくれました。
入場してすぐ、公式キャラクター「ミャクミャク」にご挨拶。最初は不評だったらしいこのキャラクターも、今ではグッズが売り切れるほどの人気ぶり。

スポーツメーカー『ミズノ』が作った「ミャクミャクスニーカー」も、実はちょっと気になってました
入場ゲートから「大屋根リング」の内側へ。
敷地内にはさまざまなアート作品が展示されているようですが、最初は名和晃平作品の鹿とご対面しました

名和晃平〈Snow-Deer〉
個性豊かなパビリオンを紹介!
圧巻の大回廊リングの真下。これから回廊内側に入ります。

時計回りに進んでいくと、ガラス張りのアラブ首長国連邦館がありました。待ち時間なしだったので中へ。
カナダ館を通過して、隈研吾氏設計のポルトガル館へ。続けてコロンビア館、スイス館、オーストリア館も見学。
休憩所の横には、墨のように真っ黒の古代木がアートのように並び、不思議と癒される空間も。木の中に入ると、何とも言えない落ち着く感情がわいてきました。
次に入場したのは、ガラス張りで中の様子が見えるブラジル館。
待ち時間なしで入場できました。予習によると、こちらは「タイプX」という万博協会代行の簡易パビリオンだそうですが、想像以上に魅力的。
光・色・空気・立体物の変化を使い、植物や動物、人間などが共存する世界を提案しているようでした。3歳くらいの男の子が展示の一部で自由に遊んでいる姿が印象的で、空間と見事にマッチしていましたよ。
中国館、クウェート館を通り、夕日を背に力強く佇む「いのちの未来館」(石黒浩氏プロデュース)へ。スモークと夕日が幻想的で、まさにアートのようでした。
「大屋根リング」の上から夜景を楽しむ
日も沈み、いよいよ万博のシンボル「大屋根リング」の上、スカイウォークへ上がる時間です。全長約2km、総工費350億円ともいわれる藤本壮介氏設計。

思ったより高さがあり、登るとさらに一段外側にリングが!海側の景色はまさに絶景。そしてパビリオン群を見渡すと、そのスケールの大きさに改めて感動。
スカイウォークから夜のパビリオンを見下ろします。
シンガポール館、イタリア館(この時間も行列)、ベルギー館、インド館(未完成)、サウジアラビア館、スペイン館、ドイツ館(レストランが素敵)、アイルランド館など…。
ハイブランドの魅力溢れる「フランス館」へ
リングから降りて、入場出来ればいいなと思っていたフランス館へ。
照明で変化するロープとピンクの銅のスロープが印象的。待ち時間ほぼゼロで入場できました。
心臓の「鼓動」。体験全体をシンクロさせる音楽のテンポとして。

パビリオンのテーマは「愛の讃歌」。メインスポンサーはLVMHで、劇場式でハイブランドの魅力がそれぞれ楽しめます。
「赤い糸の伝説」を軸に「自分への愛」「他者への愛」「自然への愛」といった多様な愛を表現しています。
各展示シーンには、ロダンによる手の彫刻が配されていて、まさに劇場空間でした。
まずはルイ・ヴィトン。
常設展示を締めくくる最終エリアに配置されている「奇跡の庭園」。
プロバンス地方から運ばれた樹齢1000年のオリーブの木が。プラントハンターの西畑清順氏が探してきたそうです。

順に回ると、幻想的な空間の中へ。
次はいよいよディオール。
あえて真っ白の空間に。白なので、細かいディテールがより分かります。吉岡徳仁氏の「メダリオン チェア」や、高木由利子氏の写真、建築家・妹島和世氏が手がけた「レディ ディオール」も。
最後のブランドはセリーヌ。
次の空間に進むたびに、エレガントで美しさを感じるサプライズがあります。
最終のドローンショーを少し見て、名残惜しく帰途に着くことに。
余韻に浸っていて、お互いなかなか「帰ろう」とは言い出さず、しばらくウロウロ。
最後に東ゲートから出ると、夢洲駅までかなりの遠回りでロープが張られ強制誘導。メトロは超満員。帰りの時間配分は要注意です。
1970年の万博では17歳。今回は71歳。経験値も体力も違いますが、「できない」と思っていたことをやりきれたうえに、デジタル社会の中でもしっかり楽しむことができて、幸せな時間となりました。
通期パスを購入したという友人も数人います。せっかくなので、私ももう一回くらい行くかもしれません!
『大阪・関西万博2025』
会期:2025年4月13日(日)〜10月13日(月・祝)
https://www.expo2025.or.jp
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この記事の
プレミアムメンバー

片山優子
ボタンを用いて、想像を超えるコンテンポラリーアートジュエリーを制作するアーティスト。さまざまな年代と背景のボタンを用い、新たに愛と想いを吹き込むことで力強くも美しい作品を生み出す。CHANEL「ベストサヴォアフェール」にも選ばれた経歴を持ち、国内外でも注目を集めて幅広く活動している。
Instagram:@yuukokatayama