【京都の絶景たび】叡山電鉄の車窓風景に癒され、幽玄な世界が広がる貴船山と鞍馬山をゆっくり詣でる時間

1300年に及ぶ京都の歴史と文化を形づくってきたのは、神社や寺院という存在。 京都とその神社仏閣を愛するみなさんに、お好きな祈りの場所を聞きました。今回はイラストレーターとして活躍する平澤まりこさんに、とっておきの場所を教えてもらいました。

PROFILE

平澤まりこ/ひらさわまりこ

イラストレーター。6月に初の作品集『いつかの森』(求龍堂)を出版。

貴船山と鞍馬山、 自然豊かな寺社にゆっくり詣でる。

叡山電鉄に乗って鞍馬に向かうときから、車窓の風景に癒されるのです。新緑の季節なら緑のど真ん中へ、秋にはすぐそこまで紅葉が迫ってきて。それだけで旅の気分が盛り上がってきます」

京都が好きで、お寺や神社も大好きな平澤まりこさんが紹介してくれたのは、市中からは少し北へ離れた貴船神社と鞍馬寺。いずれも深い森に囲まれ、伝説も多く残された幽玄な世界が広がります。

「旅行をするときはあまり予定を立てないタイプ。どうしても行きたい料理屋さんがある場合は予約をしたりしますが、余白を持たせたほうが旅は楽しい。直観的に惹かれるところに行って、しばしその場の空気に触れるんです。外国でも、教会や修道院へ行ってしばらく座ったりしますね」

貴船神社は三社詣といって、貴船山の麓にある3つの社を本宮→奥宮→結社の順にお参りする。写真は本宮。

貴船神社も鞍馬寺も洛北の自然の中に複数の社やお堂が点在しており、ゆっくりと木々を通り抜ける風を感じながらの参拝がおすすめだそう。

「貴船神社は京都の水を守る神様だそうです。貴船川が鴨川の源流とのことで、境内にある神様の水はとってもおいしくて、水筒にいただいて持って帰ったりします。水のいいところは気の流れもいいので、それも貴船神社に惹かれる理由だと思います」

貴船神社は絵馬の発祥の地でもあるそう。いつか絵馬の絵を描く仕事をしたいと思っていた平澤さん、あるご縁から山形にある神社の絵馬を描くことになりました。「これは貴船神社さんのご利益だと思って、お礼参りに行ったくらいです」

鞍馬寺は牛若丸、のちの源義経が修行をしたという伝説があり、天狗が住むと言い伝えられる霊山としても有名です。上りの参道をケーブルカーで一気に上がる方法もありますが、平澤さんは徒歩で登っていくのが好き。

「ゆっくり登ればそれほどハードではないし、徐々にお堂に近づいていく高揚感、たどりつくまでの道すがらの美しさを感じるのが好きなのです」

京都の自然と混然一体となった洛北の寺社、ちょっと足を延ばして気持ちもリフレッシュできそうです。

『貴船神社』:心がすっとする神様の水。いい気の流れに身をゆだねて

「大木にも惹かれる」という平澤さん。社内の「相生の杉」という2本並んだ杉の木のたたずまいも好み。

全国に約500社ある貴船神社の総本宮。貴船川は鴨川の源流にあたり、御所の真北にあることから、京都の水源を守る神として大切にされてきた。貴船川沿いに下流から本宮、結社、奥宮という3社が鎮座する。

主祭神は「タカオカミノカミ」という、水や雨を司る神様。写真のご神水も清らかな「すっとする、おいしい水です」。

貴船神社

住:京都市左京区鞍馬貴船町180
電:075-741-2016
休:無休
料:無料
WEB:https://kifunejinja.jp

鞍馬弘教総本山『鞍馬寺』:参道を歩いて登る時間も楽しんで

「本殿に向かって歩いて、だんだん近づいていく高揚感がいいんです」と平澤さん。Photo/Aflo

鑑真の高弟・鑑禎が770年に草庵を結び、毘沙門天を安置したことが始まり。山門からつづら折りの道が続き、本殿金堂前からは比叡山などの山々を見渡せる。『枕草子』『更級日記』でも描かれた歴史ある寺院。

本殿金堂。手前にある金剛床はこのお寺のパワースポット。天と地核を結ぶエネルギーの通り道との説も。

本殿の両側に鎮座する狛犬ならぬ、「阿吽の虎」もお気に入り。毘沙門天のお使いである虎が大切にされているという。

鞍馬寺

住:京都市左京区鞍馬本町1074
電:075-741-2003
営:霊宝殿は9:00~16:00 霊宝殿は火曜、12月12日~2月末日
霊宝殿入館料:200円
WEB:https://kuramadera.or.jp

『クウネル』11月号掲載 取材・文/船山直子

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