地元民が推す「春の京都」の穴場 !とっておきのスポット、おいしいものを教えます

旅をお休みしていた数年を経て、ようやく自由に行き来できるようになりました。マチュア世代に人気なのは、何と言っても京都。春夏秋冬どの季節も美しく、多彩な表情があります。そんな京都の魅力を「暮らす人」の視点で紹介した書籍『京都 季節を楽しむ暮らしごと365日』(主婦と生活社)より、一部を抜粋してご紹介します。

日々の小さな発見が愛おしい 古都の春夏秋冬

特別なことをしなくても豊かな気持ちになる。楽しいこと、おいしいもの、好きな人がゆるやかにつながっていく 。京都の日常から見つかる日々の小さな発見が愛おしい古都の春夏秋冬「幸せのヒント」。

京都 季節を楽しむ暮らしごと365日』 では、京都にゆかりがあり、京都をこよなく愛する方々がそれぞれに見つけた小さな発見、日々の楽しみを紹介しています。春夏秋冬、季節の移ろいを感じさせてくれる二十四節気ごとに、1日1ページ365日分が登場。日記のような感覚で楽しめます。

今回は、365日分のなかから3月と4月の「暮らしごと」を抜粋してお届けします。


古社名刹だけじゃない!春の京都を楽しめる穴場スポット

【啓蟄/三月七日鴨川ピクニックを楽しめるカフェ
鴨川近く、北大路通から細い道を少しだけ下がると、「WIFE&HUSBAND(ワイフ&ハズバンド)」という小さなカフェがあります。コーヒー豆やアンティーク・ヴィンテージ品の販売もされている素敵空間。
お店の前に並べている椅子や折り畳みテーブルがたくさんあって、売ってるのコレ?と思っていました。すると、これらをレンタルできて、こだわりのおいしいコーヒーとおやつをバスケットに詰めたものを運んで、近くの鴨川で手軽にピクニックができるとのこと。近くに鴨川があってこその画期的なシステムだなと。いつか、レンタルして鴨川でコーヒー飲むぞと思いつつ、店内の空間も好きなので、入店できたら、そのまま店内でコーヒーを飲んでしまいます。時折、気持ちをリセットするために行きたい店。でも、外遊びが好きなので、いつかこのシステムを試してみたい。_photo&text:Nao Daimon

【啓蟄/三月二十日】馬がいる京大キャンパス
日本で2校目の帝国大学として、明治30(1897)年に創設された京都大学。そのキャンパスは一般にも開放されていて、京都の人々にとって親しみのある場所です。創立の地、吉田キャンパスの正門をくぐると、まずは目に入ってくるのが京大のシンボル、クスノキと時計台。構内には歴史を感じさせる特徴的な校舎があり、医学部の桜並木や理学部の銀いちょう杏並木など、豊かな自然もあります。
キャンパス北部構内には、研究用の作物が栽培されている農場があり厩舎まであります。馬場の中に入ることはできませんが、京都の街中でこんな牧歌的な風景に出会うことができるのは新鮮です。大学が休みの季節、構内は静かですが、乗馬クラブに所属している学生さんたちは毎日やって来て丁寧に馬の世話をしています。_photo&text:Mikiko Toshima

【春分/四月一日】黄緑の桜「御衣黄(ぎょいこう)」
黄緑の桜「御衣黄」を見たのは、京都で初めて。庭園デザイナーの烏賀陽(うがや)百合さんとお散歩しているときに教えてもらいました。「御衣」とは、貴族の着物のことを意味していて、緑色の花びらが、平安時代の貴族の衣服の「萌黄色」に近いことが由来とのこと。オオシマザクラを基に生まれた日本原産の栽培品種だそうです。
西陣にある雨う宝ほう院いんで初めて見てから、他の神社などでも、御衣黄があることに気づくようになりました。「草と本」の近く、堀川今出川にある白峯神宮にも、御衣黄があることを知ったのは、最近のこと。近くに何年もいて、通っている神社なのに。知らないと、素晴らしいものが近くにあっても、見過ごしてしまうのだろうなとつくづく思います。「知る」ことの大切さを植物からも教えてもらいました_photo&text:Nao Daimon

【春分/四月二日】宝ヶ池公園でお花見ピクニック
京都は子育てのしやすい街。よく子連れでピクニックをします。桜が咲き始めた頃、京都の地下鉄の最北駅、国際会館駅すぐのところにある宝ヶ池公園でお花見をしました。ここは比叡山を背に、市内の公園の中でもいちばん自然な森に近く、オシドリなどの絶滅危惧種の鳥なども飛来し、豊かな京都の季節の花々も見て味わえます。桜も森の中にゆったりと並んでいて、眺めて回るお花見というより、桜の木の下でゆったりシートを敷いてお弁当を食べながら眺めて過ごすのにぴったりです。
公園内には「子供の楽園」という体をめいっぱい使えるような遊具がたくさんある場所もあり、子どもたちと思い切り動いて過ごしたい時にも。大人も楽しめる京都ですが、子連れでも安心して楽しめる、懐の広い京都です。_photo&text:Eriko Ueda

【清明/四月五日】歴史を感じる森で深呼吸
京阪電車・出町柳駅を下車し、少し歩くと「糺(ただす)の森」に。世界遺産に登録されている下鴨神社の境内に広がる原生林で、『源氏物語』や『枕草子』『新古今和歌集』の中にも詠まれ、近年では縄文時代の土器も発掘されるなど、京都の歴史のロマンがふんだんに感じられる場所です。この近くにあるバレエ教室でリハーサルがあるときは、少し早めに家を出て、この森でいったん深呼吸してから仕事に向かいます。静謐で穏やかな空間の中に厳かに起立する無数の大きな樹々、清らかで水の音が心地よい小川のせせらぎ、この神聖なる空間のみずみずしい空気の粒子を浴びることで、細胞が入れ替わり新しい自分に生まれ変われるような、なんとも言えないよい気持ちに。駅近なのに深い森なので、夏場、涼みながら散歩したい方にもおすすめです。_Photo&text:Takuma Oshiba

 

【清明/四月十八日】自然の中の美容室でハーブシャンプー
綾部市の豊里地区、農業大学校や牧場に向かう道から緑の道を進むと、まるで修道院の小屋のような古民家「美容室マノワ」が現れます。ふんわりとした柔らかな女性がひとりひとりを出迎えてくれます。
窓から草木が揺れるのを感じながら、優しく手入れしてもらう時間。なんとも至福なのはインドのハーブの粉のシャンプーをしてくれるところ。実や根、葉や土、ヘナ( 指甲花 )が細かな粉になっていて優しい泡となり、ふんわりとしっとりとした髪に。食べ物も着る物もなるべく自然素材のものを選んでいた私にはぴったり。仕上げもオイルで整えてくれます。数日はほんのり香って地肌もぴかぴかに生まれ変わるように呼吸しています。
里山ならではの自然の中の美容室。心まで至福と安心感に満ちて帰ります。_photo&text:Eriko Ueda

【穀雨/四月二十九日】東山トレイルのパワースポット
東北西の三方を山で囲まれている京都は、街の中心部から気楽に山へ行くことができます。京都一周トレイルの一部、東山トレイルは、伏見稲荷から比叡山までを縦走する約24・6㎞のコース。とはいえ全工程を歩かずとも、サクッと短い距離を歩くことができるのも、京都のハイキングの良さです。
蹴上(けあげ)駅から三条通を少し歩いたところにある参道を上がっていくと、京都最古の神社のひとつ日向大神宮が森の中に姿を現します。さらに山を10分ほど登ると伊勢神宮を拝むことができる遥よう拝は い所じょがあります。その場所からは京都の街を眼下に望むこともでき、平安神宮の大鳥居が小さく見えます。伊勢神宮から一直線上に日向大神宮、平安神宮そして京都御所、大文字山が並び、神様の通り道=パワースポットとも言われています。_photo&text:Mikiko Toshima

【穀雨/四月三十日】和束(わづか)の茶畑に絶景あり!
ここに絶景あり! 皆様に一度は訪れてほしい茶畑と茶室をご紹介します。「海外萄畑でワインを嗜むように、茶畑でもできたら和束町のお茶のブランド力も上がるのではないか」。京料理「木乃婦(きのぶ)」の高橋拓児さんのひと言から始まり、お茶の産地・和束町に移動式茶室はできました。和束の茶畑の景色は景観資産に選ばれています。傾斜に沿うように刈り込まれた茶畑。見上げると天まで届きそうな幻想的な景色です。この絶景を生かした移動式茶室の設計は、茶室設計でも知られる建築家・眞さな田だ大だい輔す けさんにご協力いただきました。お茶の味わいを決めるのは、気候(天)、地形と土壌(地)、作り手(人)です。ここにはお茶を愛する人たちが暮らし、歴史を紡いでいます。京都府和束町で大きく深呼吸し、心をリフレッシュしにお越しください。_photo:Limited Liability Company Muramura / text:Tomoko Tsuda

京都の春を告げるおいしいお菓子

【春分/三月二十七日】思わず顔がほころぶお菓子
堀川五条近くにある「菓子屋のな」の名主川(なぬしがわ)さんとは、お店をオープンされる前から知り合いで、本の文章からイメージして作られていた和菓子の写真をInstagramにあげられていたのを楽しんでおりました。「草と本」のオープン後すぐに開催した小さなマルシェに、特別なお菓子を予約制で作ってくれたこともありました。名主川さんの和菓子は、見た目にも美しく、果物やハーブを使われることが多いので、季節によって、使われる素材や色合いを楽しませてもらえます。お菓子の入った箱をあける時、顔がほころぶ。手書きの文字やお菓子の説明文もうれしくなる。のなさんの和菓子もおいしいけれど、ご主人様が焼かれるチャバタにあんバターを挟んだ「あんバターチャバタ」がどうにもおいしい。手土産にいただくとうれしいお店のひとつです。_photo&text:Nao Daimon

【春分/四月三日】都をどりの楽しみ
「都をどりは〜ヨーイヤサー」の掛け声で始まる春の風物詩、都をどり。揃いの青い着物が目に焼き付きます。舞台は春夏秋冬そして再び春の情景を舞い表した全8景の一幕仕立て。祇園甲部の芸舞妓さん総勢約60人が舞う姿は圧巻です。何年か観劇に行くと〝推し〞の舞妓ちゃんができてきたりします。数年すると舞妓ちゃんが芸妓さんに襟替えしていたり、芸妓さんが結婚されて引退されたりと、アイドルの追っかけならぬ芸舞遍歴をみたり。下積みから芸や作法を身につけ、厳しい世界を生き抜いてるんだろうなと応援したくなります。をどりが始まる前のお茶席で、お菓子をいただいた後に持ち帰れる団子皿を集めるのも密かな楽しみです。四月いっぱい京都の街が華やぎます。_photo&text:Naho Masumoto

【清明/四月十日】初めてのお使いに、お菓子屋さんを
出町桝形商店街からもほど近い寺町今出川を7〜8分ほど北上していくと、ひっそりと住宅街にたたずむ老舗のお菓子屋「大黒屋」さんがあります。稲を刈る鎌の形をかたどった細長いお餅「御鎌餅」は素朴な見た目ですが、優しく上品な甘さの黒糖餡をもちもちの柔らかいお餅で包んだそれは、頬ずりして吸いつきたくなるほど! まるで赤ちゃんのようだと毎回にんまりします。
甘いものがそれほど得意でない私も喜んで食べたいと思うお菓子です。
ひとつからでも買えるのと、お店の方が親切なので、うちの子たちの初めてのお使いはこちらで挑戦させてもらっています。近くの賀茂川まで出て、すぐ食べる楽しみも。
地元民に愛されるお餅です。_photo&text:Naho Masumoto

【啓蟄/三月十九日】春を告げる桜シロップ
三月の声がきこえたら八重桜の塩漬けをシロップにして瓶詰めにします。炭酸水や白ワインで割るもよし、寒天やブラマンジェ、レアチーズケーキにかけるのもいつもと一味違ったデザートが楽しめておすすめです。ふわっと香りでテーブルに春を告げる桜シロップはお花見にもぴったり。市内では烏丸松原の「木と根」さんでお取り扱いいただいています。
外はまだ寒いけれど山のような桜の花ひとつずつ茎を外し塩抜きする作業が始まると台が桜色に染まり、炊いて瓶詰めするまで何度もわあきれい、と声が出ます。毎年のことなのに桜の花には決まって心を動かされる。どこかへ行かなくても桜をぎゅっと味わえる桜シロップで今年最初のお花見をしてる、そんな気持ちになるのかもしれません。暖かくなったらまた、あちこちで桜を愛でられますように。_photo&text:Mitsuko Morishita

※本記事は『京都 季節を楽しむ暮らしごと365日』からの抜粋です。

365日分の京都の魅力が詰まった書籍が、絶賛発売中!

『京都 季節を楽しむ暮らしごと365日』

特別なことをしなくても豊かな気持ちになる。楽しいこと、おいしいもの、好きな人がゆるやかにつながっていく 。京都の日常から見つかる日々の小さな発見が愛おしい古都の春夏秋冬「幸せのヒント」。
『京都 季節を楽しむ暮らしごと365日』(主婦と生活社)

SHARE

IDメンバー募集中

登録していただくと、登録者のみに届くメールマガジン、メンバーだけが応募できるプレゼントなどスペシャルな特典があります。
奮ってご登録ください。

IDメンバー登録 (無料)