【私の東京の味】甘糟りり子さんに聞いた、“ドレスダウン”の感覚で美食に出合える3軒(前編)

流行最先端のレストランクルーズは、若い世代にまかせ、大人の東京を愉しむなら、〝ドレスダウン〟をキーワードに、自分だけの東京の味を見つけましょう。作家、甘糟りり子さんが教えてくれたとっておきの3軒。前編はとっておきの東京フレンチの名店から。

「2007年に逗子マリーナに引っ越し、15年には実家の鎌倉に戻りました。予約の取れない店や知る人ぞ知る隠れ家的な店に行くことを得意がっていた時期は過ぎ、あえて肩の力を抜くのが大人のかっこよさだと今は思っています。レストランもそんなドレスダウンな感覚を持っているのが東京っぽいんじゃないかな」

たとえば、皇居外苑に面したパレスホテル東京の「フランス料理『エステール』」は、一流ホテルのダイニングなのに、かしこまりすぎない、どこか遊び心のある空間で、日本の食文化をリスペクトしたフレンチがいただけます。 「『エステール』に行ったら、椅子に注目してもらいたいですね。ホテルのダイニングでこんなデザインコンシャスなものを持ってくるセンスが好き」

同レストランにパートナーとして迎えられた「デュカス・パリ」が、世界のここだけにしかない椅子を用意したのだとか。それは、建築家ジャン・ヌーヴェルが遺したデザインを復刻させたものです。 「料理も小島景シェフが毎朝、お住まいの鎌倉の市場で仕入れる鎌倉野菜を使うなど、親しみがもてます」

フランス料理『エステール』都心の楽園で母なる大地と海を味わう至福の“東京フレンチ”。

仏料理界の巨匠が設立した『デュカス・パリ』をパートナーに迎えた『エステール』は、グレージュ色の椅子をアクセントにしたモダンな空間で、海の幸、山の幸を使ったフランス料理がいただけます。「日本で最もデュカスの料理哲学を理解している」と評判の小島景シェフは、フランス、モナコで修業して帰国後に『ブノワ東京』、『ベージュ アラン・デュカス東京』でシェフを務めました。シグネチャーメニューの鮑料理には、バターや動物性のフォンは使いません。

「ソースには利尻昆布をベースに、鯛のアラからとった出汁とくたくたに煮たキャベツを合わせて煮詰めました」

バターたっぷりのヘビーなフレンチを敬遠する人にはうってつけ。※鮑を選べるコースは2万2,000円から。

〈蝦夷鮑 アーティチョークとキャベツのグリエ〉

木のぬくもりを感じる野菜のオブジェがアプローチに飾られている。

日仏のアラン・デュカスの店を歴任した小島景シェフは鎌倉育ち。

フランス料理『エステール』

住:F6パレスホテル東京 1-1-1千代田区丸の内
営:11:30〜13:30 L.O. 18:00〜22:00(20:00 L.O.)
休:月、火(祝日は営業)
予:予約が望ましい

PROFILE

甘糟りり子/あまかす・りりこ

1964年生まれ、鎌倉市在住。90年代から東京や湘南のレストランの変遷をエッセイや小説で発表。最新刊に『私、産まなくていいですか』(講談社文庫)。

『クウネル』2024年 5月号掲載 写真/木寺紀雄、取材・文/田村幸子

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『クウネル』No.126掲載

私の好きな東京

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