【素敵な人の着こなし術】おしゃれ迷子の大人には、きちんと感のある素材が味方になります。
年齢を重ねると、「何を着ればしっくりくるのか」と迷うことも増えてきませんか?そんな大人ならではのファッション悩みに効くヒントを、おしゃれな方々に教えていただく連載。今回は、スタイリストの千葉和子さんに、大人に似合うスタイルのつくり方や、冬に楽しみたいコーディネートについて伺いました。
目 次
大人のおしゃれの基本は、質のいい素材選びから
大人のきちんと感を意識しながら、程よいカジュアルさを演出する千葉さんのコーディネート。SNSでも大人気のそのスタイルには、自身もマチュア世代だからこそ生まれる悩みを解決するヒントがありそうです。
「以前、仕事でスタイリングのカウンセリングをしていた際、私と同世代の40代後半から50代は、おしゃれの悩みが本当に尽きないなと実感しました。ちょうど体型の変化や、社会での立場に変化が出てくる頃ですよね。昔着ていたものが似合わなり、何を選べばいいのか分からなくなったという相談も多かったです」
「親としての場所、仕事先での役職など、選ぶ服が変わる時期でもありますし、体型も気になってくる。でも、今の自分に似合うおしゃれを楽しみたいですよね」
洋服選びに迷う同世代のスタイリストとして「まずは、きれいめな素材の服を選ぶことが大切ですね」とアドバイス。
「一概には言えませんが、カジュアルなデザインでも、かしこまった場面に使えるような素材なら、着こなしの幅も広がると思います」
例えば、洗いざらしのデニムには、シルクタッチのような上質な生地のトップスがおすすめだそう。
「若い頃とは違い、肌の張りや質感が変化してくるため、着こなしを少し工夫するといいですね。細身ならデコルテを引き立てるよう、ストールなどを巻いたり、首元が詰まったタートルネックやスタンドカラーを。ふくよかな場合は、手首や足首、首元を見せれば軽やかな印象に。何か物足りないと感じるパーツは、アクセサリーで補うと全体がバランスよく整います」
シャツはどんな場面でも「正解」のアイテムです
ニットのジレでカジュアルさを出しつつ、それぞれのアイテムの質感で、きちんとした大人の雰囲気もキープ。
今回はロングシャツに、カシミアのジレとライトカーキのパンツをコーディネート。ジレは、最近よく愛用しているアイテムなのだとか。
「このところ、すごく暑くなったり寒くなったり、汗をかいたりと、体温調節がうまくいかないことがあって。そんなとき、ニットのジレなら調節しやすくて着脱も簡単。シワも気にならないので、バッグに入れて持ち歩くこともあります」
ロングシャツは、5年ほど前にフォーマル用に購入。今ではさまざまなシーンで活用しているそうです。
「近頃はショート丈のトップスがトレンドですが、毎日トレンドを意識してコーディネートする必要はありませんし、長め丈は私たち世代にとって安心感のある存在。長く着ていますが、上質な生地なので、気負いなくゆるっと着てもラフになり過ぎないところが魅力です」
ブラウンのパンツやブーツに合わせてシックに仕上げたり、今回のようにカジュアルに着こなしたり、「オンオフに関係なく、どんな場面でもシャツを着ていれば間違いないですね」と千葉さん。
「大人のおしゃれに“きちんと感”を添えられる、やはりシャツは大事なアイテムだと思います」
ボトムスにパンツを取り入れるときには、適度にハリのある素材を選ぶようにしていると言います。そこにも大人ならではの理由が。
「若い頃は、汚れたスニーカーにヨレヨレなTシャツとパンツでも、全然平気で着こなせていましたが、大人が同じ装いをすると、疲れて見えちゃう気がするんですよ(笑)。そういったところに少し意識をおくだけで、全体の印象も洗練されると思います」
使いやすいライトカーキのパンツは『オーラリー』のコットン製。
マチュア世代が頼れる、調節上手な薄手アウター
長め丈のベーシックな形で、抜群の着回し力という『オーラリー』のステンカラーのコート。「襟元で表情を変えられるところもいいですよね」
シンプルなデザインが好みという千葉さん。愛用するコートも「飽きずに長く使えそう」と購入した、ベーシックなステンカラーです。
「これ、実はリバーシブルなんです。裏面はシルクで、本当にきれいに作ってあるんですよ。軽くて暖かいところがすごく気に入っています。アウターも、体温調節しやすい薄手がちょうどいいと思うようになりました。寒いときはストールなどを使います」
ベルトループがちらりと見える裏面は、シルク素材を使ったリバーシブル。
首元を彩るのは、フードにもなる立体的なフォルムのストール。
「シンプルなアウターには、ストールやグローブ、バッグなど小物で遊び心を加えたり、自分らしさを出しています。このニットストールはフードにもなるんですよ。暖かさもデザイン性も兼ね備えた、かわいくて優秀なアイテムです」
『HYKE』のフードにもなるニットストールは、後ろ姿に個性がきらり。
すっと伸びるリブと色合いがコートにフィット。「茶系やベージュ、グレーのようなどちらかというと地味な色が好きで、落ち着きますね」
小物使いで、今の空気感にアップデート
独特の存在感を放つバッグは、ハンドルがレザー仕様。さりげない佇まいながら、スタイリングに上品なアクセントを添えています。
手元には、ミニマルなリングをたくさんつけることで華やぎをプラス。
「水仕事など、その都度外すのが大変なので、基本的にはつけっぱなし。日常生活に支障がないよう、華奢なものを。ときどきつける位置を変えたり、重ねたりしています」
アンティークな風合いで馴染みのいい『noguchi』のリング。控えめな存在感をいくつもつけることで、手元に洗練さが生まれます。
「まとめ髪×眼鏡」のスタイルが千葉さん流。輪郭を引き締め、イメージにもぴったりの眼鏡は渋谷の『ジャックデュラン』で。
「古い服も、小物を使えば空気感をアップデートできますよね。そういうちょっとしたところで、大人のファッションも楽しめると思います」
年齢を重ねたら、新しいおしゃれで元気をチャージ
50代後半になり、いつもと違うファッションにトライするのも素晴らしいことなんじゃないかと考えるようになったそう。
「ずっと同じテイストのものを着ていると落ち着くんですが、ときには刺激も欲しいですよね。先日『3rdinary』で水色のギンガムチェックのオールインワンが目に留まって。今まで絶対に着たことがないタイプでしたが、好奇心から試着してみたら、意外と似合うかも?と思って買っちゃったんです」
昨年は赤いブラウスにもチャレンジ。「周りの人や出先で褒められたり、家族の評判も上々でした」
「結局、この夏は一度しか着ていないんですが、とても新鮮でわくわくしました。ときには殻を破ってトライすると、気分がこんなに上がるんだ、それもいいなと感じましたね」
これから歳を重ねる中での変化も、おしゃれを楽しむことで気持ちを軽やかにしていきたいという千葉さん。
「白髪やシワが増えてきたら元気な色のファッションからエネルギーをもらい、毎日を明るく、気分を上げて過ごしていきたいですね」
千葉和子/ちば・かずこ
1968年生まれ。1991年株式会社『イッセイミヤケ』入社。
撮影/斎藤弥里、取材・文/松永加奈