「暑すぎる夏、無理が見えるおしゃれは不粋と考えます」。作家・甘糟りり子さんの夏ファッション最適解

甘糟りり子さんのワンピース

作家の甘糟りり子さんのおしゃれと美容にまつわるエッセイ。「楽ちんは手抜きではない」をモットーに、心地よく、気分が上がるファッションで酷暑をかわした甘糟さん。ゆるりとしたアイテムを大人スタイルに仕上げる極意とは?

最高の着心地で追加購入した『トゥモローランドB』のアイテム

あまりの暑さにバテたのか、8月の終わりに体調を崩して寝込んでしまいました。やっと日常に戻ったものの、まだまだ暑い。「季節の先取りがおしゃれの鉄則」なんてかっこつけていたのは昔のこと。今の私は「無理が見えるのは不粋」という感覚です。ですから、着るもの履くもの、そして持つものも「楽ちん」を優先しておりますよ。

今年の夏は『トゥモローランドB』(TB)の部屋着級にリラックスできるシリーズを見つけて、まとめ買いしまして、ほとんどそれで過ごしておりました。てれんとした肌触りのいい生地が最高なんです。最初に、黒のVネックのTシャツリラックスパンツを買ったのですが、着心地の良さと楽ちんさで他の服が着られなくなり(笑)、白の VネックのTシャツ、グレーのリラックスパンツ、さらにはグレーのノースリーブのワンピースと買い足しました。

甘糟りり子さんのTBのTシャツ

葉山のトリッカバルコニーでネイルをしてもらいました。全面に端切れをあしらった籠バッグは Caban。

甘糟りり子さんのTBのTシャツ

昨年、還暦パーティーをした海の家にて。貝殻だらけのバッグはドルチェ&ガッバーナ。

部屋級と書きましたが、デザイナーの方によれば、こういうのをエフォートレスウェアと呼ぶそうです。effort=努力、取り組みがless=より少ない、つまり肩の力を抜いた装いってことですよね。今の私にぴったりです。もうこういうの着ちゃうと、布帛を着るハードルが上がってしまう……。ヤバい。笑

でも、まあ、夏はほとんど都内にはいかず、海のそばから動きませんから、問題ないわけです。

VネックのTシャツは右の脇だけシャーリングになっていて、身体のラインを程よく主張するシルエット。この匙加減が意外とポイントな気がします。肌見せとか身体のラインとかどこかひとつだけ強調するのが、今の私のスタイル(正直にいうと、若い頃、というより、四十過ぎくらいまでは、あちこち強調しまくるクドい人でした。汗)。

甘糟りり子さんと伊達公子さん

テニスプレーヤーの伊達さんと鎌倉散策。楽ちんバッグは大昔のドルチェ&ガッバーナ。

リラックスパンツは、ウエストの際だけ光沢のある同色の布が使われています。Tシャツなりシャツなりをインしなければ見えない部分ですけれど、そういう細部は私のテンションを上げてくれる。ファッションって、結局はいかに自分の気分を良くするかが大切だと思います。楽ちん優先は手抜きとは違うのだ。多分。きっと。おそらく。

小物をたくさんプラスして脱・部屋着スタイル

私はアクセサリーをあんまりつけないのですが、春夏シーズンはバングルをよく使います。大好きだったピアスはアレルギーになってしまってつけられなくなり、指輪はパソコンに向かう際に外してしまうので失くすのが怖い。なんてこともありまして、袖が短くなってきたら、バングルをつけることが多いです。わりとボリュームのあるものが多いかな。ハイブランドのレザーのもの、シルバー専門店のオーナーから買ったインディアンのもの、骨董市で見つけた恐竜の骨みたいなもの、ファストファッションのものなど、いろいろあります。

甘糟りり子さんのバングル

バングルは安いものからそれなりのものまでいろいろ。夏のファッションに欠かせません。

外出する時、バングルのコーナーからひとつかふたつ引っ掴んで左手首に装着して完成。まるで味の決まらない料理に最後の調味料を足すみたいな感じです。そもそもがそっけないと申しますか、もうちょっと気の利いたいい方をするならシンプルこの上ないコーディネイトですから、どのバングルを合わせても大丈夫。あとは籠バッグを持って、ぎょさんかビルケンを履いて終わり。アクセサリー代わりにインパクトの強いバッグを持つ場合もあります。そして、今年の夏は帽子とサングラスが必須でしたね。こうして書いてみて、意外と部屋着スタイルにプラスしているアイテムが多いことに気がつきました。

せっかくのリラックスしたファッションですから、重量級の革製ブランドものバッグとか、履くのに時間のかかる凝ったサンダルは避けておりますよ。つっかけて終わり、が今の気分。ご存知ない方もいらっしゃるかもしれないので説明しますと、「ぎょさん」というのは、漁師さん用に作られたビーサン。漁業用サンダルの略らしい。船の上などでも滑られないように工夫がされたプラスチック製のサンダルです。私のは足の裏に当たる部分がイボイボになっていて、歩きやすい。葉山の釣具店で買いましたよ。

甘糟りり子さんのTBのトップスとイージーパンツ

もう15年ぐらい使っている帽子はイタリア製。

ワンピース&オールインワンのリラックス感を夏ファッションの味方に

話をTBに戻ると、このシリーズのワンピースは部屋着にしておくにはもったいないようなエレガントなシルエットです。上半身はタンクトップなんですが、下半身にボリュームがあって歩くと揺れるのが気に入りました。162センチの私がぎょさんで着ると若干長いので、階段なんかの際はドレス気分で裾をつまんでます。そのうち転んで、痛い目に遭いそうですが。

甘糟りり子さんのTBのワンピース

パレスホテルで打ち合わせ。場所によってはジャケットを羽織ります。バッグは昔の GUCCI。

この夏、 FMラジオに呼ばれた際もこれを着て行きました。葉山在住のフォトグラファー横山泰介さんがナビゲーターの「最高じゃん」という番組です。収録はスタジオではなくて、逗子の『サーファーズ』というカフェ&バー。海岸線沿いある同店は目の前が海という「最高じゃん」なロケーションなんですよ。

甘糟りり子さん

葉山のサーファーズで。背景の海も私にとってはジャケットです!笑

グレーは大好きな色なんですが、夏は汗染みが目立ちますよね。汗をかいた時用に大判のスカーフとかシャツとか、何か隠すものがあったほうがいいなあと思ったのでした。このワンピース、他に赤と黒があります。断捨離中なのに黒が欲しくなっちゃった。

さて、なぜか夏のものは気にいると色違いで何着も買ってしまうのですが、ここ数年愛用している『COGTHEBIGSMOKE』(COG)のオールインワン、今年は黒が出ていたので買いました。チャコール、カーキ、パープル、そして黒。同じものを四着です(笑)。昨年まではタンクトップにノーブラで着ておりましたが、黒はノーブラで。せっかくだから、背中のぱっくり開きを楽しんでます。

甘糟りり子さんのワンピース

全身黒なので、レザー製のベージュのビーサンでアクセントに。

今年の夏はクローゼット部屋の改修工事で、普段着る服をラックひとつにまとめなければならなかったので、TBの部屋着シリーズとCOGのオールインワンだけで乗り切りました。

年々暑さに弱くなってきましたが、肩の力を抜かざるを得ない夏のファッション、やっぱり好きです。肩の力を抜いた時こそ個性が出ると思うので。

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甘糟りり子

甘糟りり子

1964年生まれ。幼少より草花に囲まれた鎌倉の家に暮らす。『産まなくても、産めなくても』、『産む、産まない、産めない』(ともに講談社文庫)など、出産にまつわる物語が多くの女性の支持を得ている。『鎌倉の家』(河出書房新社)や『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)などでは、鎌倉での暮らしの魅力と愛情を綴っている。その他著書として『バブル、盆に返らず』(光文社)も。
Instagram:@ririkong

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