【70代マダムのおしゃれの選択/後編】今を輝かせる季節の色と、小さめバッグで軽やかに

年齢を重ねることで難しく感じる洋服選びのヒントを、おしゃれなマチュア世代の方に教えていただく連載。前回に引き続きご登場いただくのは、吉祥寺のアンティークショップ『ランジュ パース』店主・田中靖子さん。後編では、色の選び方や小物使いについて伺いました。
ファッションは、本当に好きなものだけをお迎えします
洋服やバッグは、目的を持って買いに行くのではなく、「たまたま見かけて心惹かれたら購入する」という田中さん。
「なかなか欲しいものがないので、あまり買わないんですよね。お友達とランチやお茶をするときに出かけた先で、好きなブランドがあれば見る程度。ただ、大好きなコム・デ・ギャルソンには必ず立ち寄って、ボーダーのシャツやセーターを新調します」

華やかな『DRIES VAN NOTEN(ドリス・ヴァン・ノッテン)』の花柄のジレは「かなり前に買ったものですが、70代の今だからこそ着たいものを着ています」
ボーダー柄が好きで、メイドインフランスの『ORCIVAL(オーシバル)』や『SAINT JAMES(セントジェームス)』もお気に入り。
「あとは、綺麗なブラウスがあればなるべく買うようにしています。欲しいものになかなか出会えない分、気に入って買ったものや昔のものも大切に着ていますね」
季節の中の色を使って肌も心も華やぐスタイリング

竹繊維を使った白いカットソーに『DRIES VAN NOTEN』の花柄ジレを重ね、ボトムスも白に。トップスの華やかさが引き立ちながらまとまりのある、軽やかなコーディネート。
「いつ何があるか分からない年齢だからこそ(笑)、着たいものを着ておこうと、フェミニンなデザインや明るい花柄も楽しんでいます」と、おしゃれに対して自由でポジティブな田中さん。コーディネートの際はどのように色を選んでいるのでしょうか?

シルク製のジレは、襟の形やボタンのあしらいまで美しい一枚。

バックスタイルがぐっとおしゃれになる、ディテールの個性が秀逸!
「季節感にはこだわっていますね。例えば桜の時期は、ピンク系にグリーンを合わせるなど、季節や自然の中から色を選ぶようにしています。新緑の季節に透け感のある黒はとても映えるので、ときにはそういったスタイリングも楽しんだり。四季の色を取り入れるのは、日本人ならではの感覚。それは大切にしたいと思っています」

チノクロスを使ったパンツは『ランジュ パース』のオリジナル。「昔、フランスでは男性がみんなチノパンを履いていて、それがとてもおしゃれに見えたんです。メンズのスタイリングは好きですね」
マチュア世代が憧れる、田中さんの上品で華やかなスタイリング。『ランジュ パース』のゲストには、フルコーディネートを提案することも多いと言います。
「肌の色が綺麗に見えるような、花柄やピンク系をおすすめしています。雰囲気が柔らかくなっていいんじゃないかしらと。店頭にはアンティークを中心に並べていますが、みなさんが(オリジナルの)お洋服を求めていらっしゃるのは、そういったコーディネートがお望みだからかもしれないですね」

ハリのあるチノクロスは、足のラインがすっきり見えるきちんと感も魅力。「最近はデニムよりチノパン派です」
小さいバッグとポケットで、お出かけは身軽に
今回、コーディネートに登場したブラウンのがま口型バッグは『アーツ&サイエンス』のもの。店内にもかわいいバッグが並び、ご自身もバッグ好きかと思いきや……。
「手ぶらで歩くのが好きなので、ショルダーや買い物用のバッグぐらいしか持たないんですよね。実はお財布も(アーツの)これなんです(笑)。他には、コインケース付きの小さいショルダー。かごバッグも使いますが、大抵はここに布物(エコバッグ)と交通系カードと小銭、あとはハンカチ。それだけです」

『ARTS&SCIENCE』のがま口型バッグをお財布一体型として愛用。「お買い物は決まったものを買いに行くので、それに合わせたサイズの布物を入れて出かけます」

こちらも『ARTS&SCIENCE』のバッグ。ほつれたところはダーニングでかわいく目隠し。洋服も小物も、手芸的なものをプラスして長く楽しむのが田中さん流。

畳める布製のバッグは、小さなショルダーにも入れられるお買い物の相棒。

かごバッグにアンティークレースをあしらったオリジナル。ちょっとしたアクセントで、普段使いのバッグがお出かけ仕様に。
さらに小さいショルダーの場合、スマホはポケットへ。できるだけ手ぶらが基本なので、洋服にポケットはマストなのだそう。
「私が着る服には全部ポケットが付いています。むしろ、ポケットがない服なんて……という感じ。ハンカチも入れたいですし。持ち物にこだわるとすれば、このハンカチですね、白のリネン。タオルは持ちません」
快適に気持ちよく過ごすための小物選び
リネンハンカチを愛用する理由には、大判タイプでもすぐに乾く扱いやすさはもちろん、おしゃれへの意識の高さも伺えます。
「タオルは洗面所で使うものだと思っているので、持ち歩きたくないんですよね(笑)。綺麗な白いハンカチは、見ても使っても気持ちいいもの。手を拭くだけでなく、食事のときに膝に広げることもできますしね」

白いリネンハンカチは、フランスのアンティーク。「日本ではあまり見かけないので、パリへ仕入れに行った際に購入しています」
「それに、帰宅後に手を洗うタイミングで一緒に洗えば、リネンはすぐに乾いて、いつでも白く清潔に使うことができます。そういうお話をしたら、(ゲストの)みなさんが白いハンカチを持つようになって。今ではコレクションしている方もいらっしゃるんですよ」
ちなみに、「できれば靴下はあまり履きたくないんですよね」と言う足元のこだわりについては、靴とのバランスを考えながら、ストレスを感じないタイプの靴下を選んでいるそう。

足元は、前編で登場したハイテクスニーカーやバレエシューズのほか、コンバースなども。『コム・デ・ギャルソン』のロゴがデザインされた靴下とバレエシューズの組み合わせ、キリっとしてかっこいい!
「靴下を履いたときに、つま先がきゅっとなるのが苦手なんです。私の足は小さいんですが、それでもゆるいくらいがちょうどいい。なので、メンズソックスを選んでいます。意外にデザインもおしゃれなんですよ。ストッキングは本当に苦手で、カシミアのタイツを持っていますが、よほどのときしか履きませんね」
好きなものに正直に、今の自分が身に着けたいものとその気持ちを大切にしている田中さん。おしゃれを楽しむ次のステップとは?
「これから先は、どうしていこうか考えている段階ですね。コーディネートに綺麗な色を取り入れることは、変わらず続けていきたいと思っています。ただ、濁った色であっても組み合わせ方次第で素敵になるので、そういうことにも少しずつ挑戦していけたらいいですね」
L'ange passe/ランジュ パース
住:武蔵野市吉祥寺本町4-1-15 あけぼのマンション202
電:0422-22-7951
営:水、木、金、土曜日 13:00~18:00
Instagram:@langepasse1986
撮影/斎藤弥里、取材・文/松永加奈