【70代マダムのおしゃれの選択/前編】黒を手放しカラフルに、アクセントは重ね付けしたバングル

年齢を重ねるにつれて、「何を着たらしっくりくるのか分からない」と、洋服選びに迷うことはありませんか?そんな大人のファッションの悩みを解決するヒントを、おしゃれなマチュア世代の方々に教えていただきます。今回は、吉祥寺のアンティークショップ『ランジュ パース』店主・田中靖子さんに、コーディネートの楽しみ方について伺いました。
体型や似合う色、おしゃれの変革期は40代でした
かつてシェフとしてパリで暮らし、現在は吉祥寺のアパートの一室でアンティークショップを営む田中靖子さん。まるでパリのアパルトマンを思わせる、クラシカルでかわいらしい店内には、ヨーロッパを中心に集めた雑貨や、田中さんが目利きで仕入れたアパレルが並びます。

棚やテーブルに並んだグラスやブローチ、洋服、布もの雑貨など、センスに溢れた素敵なものがいっぱいのアトリエ。

プライベートのお部屋のような空間。並んでいるものはどれも田中さんセレクトの商品です。
中でも、自身がデザインする洋服にはファンが多く、若い頃からさぞファッショに関心が高かったと思いきや……?
「私、本当におしゃれじゃなくて(笑)。30代くらいまで、ジーンズとTシャツで過ごしていたんです。パリに行っても、コートはGジャンと革ジャン、そんな感じでした」
しかし、年齢を重ねるにつれて、そうしたスタイルに少しずつ違和感を持ち始めたのだそう。
「体型的にジーンズが窮屈になって来て、履かなくなったのが40代。体が変化し始める頃ですね。“みなさんのようにおしゃれをしないと、このファッションではもうもたないな”と思ったんです」

「今、黒を着るのはコートくらい。黒い洋服は全然着なくなりました」
また、当時よく着ていた「黒」との相性にも変化を感じたと言います。
「(デザイナーの)川久保玲さんの存在に惹かれて、コム・デ・ギャルソンをそれはもう毎年買って着ていました。ギャルソンといえば黒、私もありとあらゆる黒をスタイリングして。でも、それが似合わなくなってきたんです。私はほぼメイクはしないんですが、いよいよメイクをしないと、黒が美しく見えないなと。それも40代でしたね。そろそろ変わり時かな?みたいな感じでした」
花を纏うような柄と、心地よく着られる天然素材を日常に

コットン素材のカーキのワイドパンツは『ランジュ パース』オリジナル。シックで華やかな花柄のトップスの手元には、ボリュームのあるバングルを合わせて、動きとメリハリをプラス。
黒を手放し、さまざまな色を着るようになったという田中さん。
「今年は、生き生きとした花柄を装いの中に入れています。花を纏うように着ると、気持ちも明るくなりますね」
洋服を選ぶときには素材にとてもこだわり、できるだけ天然素材を身に着けるようにしているそう。
「子供のころから天然素材で育ったということもあり、着ていて落ち着くんですよね。この頃は、天然ではなくても質の良い製品がありますが、昔ながらの素材を一生懸命作っている方々がいらっしゃるので、そういう背景も大事にしていきたいと思っています」

「スカートもたまには履きますが、体型的に難しくなってきたので、パンツの方が楽。動きやすいワイドパンツが好きです」

トップスとリンクしたカラーの足元は『シャネル』のバレエシューズ。「バレエシューズは履きやすく、登場回数が多いため、どうしても消耗が激しくなります。なので、基本的に2足買いしています」
好きな素材はリネンとシルク、冬はカシミヤも愛用。
「リネンは風通しが良くて乾きやすく、肌触りも好きです。冬はほとんどカシミヤ。お洗濯できて、温かく涼しさもある素材。カシミヤに勝るものはないですね」

ボトムスは、カーキのワイドパンツの色違い。迷彩柄のカシミヤの薄手ニットはフランスで購入したもの。少し涼しい時は冬以外にも活躍。

パンツのこだわりは、スニーカーに合う丈感。全体がバランス良くキマります。
「気兼ねなく洗えることも、天然素材の良さですよね。洗えばいつでも綺麗に着ることができるでしょう?カシミヤも白いパンツも、汚れることを気にせず、お気に入りはどんどん着て、ざぶざぶ洗っています」
アクセサリーはバングルやリングを重ね付け

デザイナー『Jessica Kagan Cushman』のバングルを重ね付け。どんなスタイルにも合わせやすく、田中さんのアクセサリーのスタメン的存在。
アクセサリー系はあまり着けず「バングルくらい」なのだとか。樹脂製の『Jessica Kagan Cushman(ジェシカ・ケーガン・クッシュマン)』のバングルは、軽くて存在感があり、お店でも大人気。
「これはシャネルにオマージュしたデザインに出会ってから、買い付けるようになりました。パリのマダムたちが、こういう大きなバングルをジャラジャラつけてお仕事したり、レストランのサービスもしていますよね。そういう自然体な華やかさがおしゃれだなと思います」

田中さんのバングルコレクション。袋に無造作に入った状態もとっても素敵!

アクセントの赤のバングルは「グレーに合うかなと思って」イタリアで購入したもの。
バングル同様、シルバー系のリングも田中さんの定番です。
「そろそろゴールドも選択肢に入ってきたかなという気はするんですが、質感などを考えると、シルバーの方が自分の装いにはしっくりくるんですよね。バングルとセットで、一年中愛用しています。アクセサリーといえば、せいぜいそのくらいですが(笑)、おしゃれを楽しみながら心地よく過ごすには、やはり自分にフィットするアイテムを選ぶことは大切ですね」
※後編は、色の選び方や小物使いについて伺います
L'ange passe/ランジュ パース
住:武蔵野市吉祥寺本町4-1-15 あけぼのマンション202
電:0422-22-7951
営:水、木、金、土曜日 13:00~18:00
Instagram:@langepasse1986
撮影/斎藤弥里、取材・文/松永加奈