ファッションの聖地・パリには流行がないって本当?「おしゃれ指南」を必要としないフランス人

フランス・パリではメンズのファッションウィーク(パリコレ)2025年秋冬コレクションがスタート。3月にはウィメンズが開催され、賑やかで華々しい雰囲気が街を包みます。ファッショントレンド発信地の印象が強いパリ、街の人々を見ればさぞや流行で溢れているのでは?と思いがちですが、実際のところは……。
在パリライターのリアルなパリ事情と、ルイ・ヴィトンのパリ本社に17年間勤務しPRのトップをつとめ、業界内外で「もっともパリジェンヌな日本人」と称された藤原淳さんの『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)から、パリジェンヌのファッション事情を紐解きます。
※在パリライターの記事の初出は2021年。内容は執筆時の状況です。
「流行の先端」パリには流行はないって本当?
流行(ファッション)の発信地と呼ばれるパリに住んでいると、日本の友人たちから「今なにが流行っているの?」とよく訊かれます。私も渡仏するまで、「パリの流行って何だろう?」と気になっていました。さて、実際に移住してみると…。
当時「少しでも馴染むようパリジェンヌをお手本にしよう」と街の中を見渡すと、人々のファッションはばらばら。洋服もバッグもヘアスタイルも人それぞれ。そこにはぱっと見て「ああ、これが流行りなんだな」と分かるものは1つもなかったのです。
フランス人に訊ねても「今のトレンド?」「さあ、あるのかしら?分からないわ」と言われる始末。みんなが持っている最先端があるはず!と勢い込んでいた私はびっくり。パリには流行がない…。でも、この街で暮らしているうちに、人々が何をベースに物を選び、自分を構成しているのか少しずつ分かって来ました。
文/松永加奈
日本のファッション誌ではおなじみのあのページがフランスには存在しない?
パリのポン・ヌフ通りにあるルイ・ヴィトン本社には、毎日2000人の社員が出勤します。
私は直の上司となる金髪美人のパリジェンヌについて、広報部の挨拶回りをしていました。右も左もわからないまま、あちこち連れ回され、紹介される人の顔と名前を一生懸命覚えようとするのですが、ほとんどの社員はこちらをチラッと見て口先ばかりの挨拶をしておしまい。顔さえ上げてくれない人ばかりです。

チラ見の際、私は頭の上からつま先までチェックされているのを見逃しませんでした。
「どんな奴が入ってきたのか」
と、値踏みをされているのです。
私は途中から名前を覚える無駄な努力をやめ、こちらも相手のルックスをチェックすることにしました。意外なことに、バッグこそ、スタッフ全員が自社製のモノを普段使いしていますが、洋服はブランド物をまとっている人はあまりいません。
学生のような恰好をしている人。スポーツ・ウエアを着ている人。カジュアルなワンピースを着ている人……。実に千差万別、多種多様です。皆が皆、オシャレというわけではありません。一部の男性はスーツにネクタイですが、女性はスーツをカチッと着ている人はいません。何を着てもオッケー。そんな空気が流れています。
※藤原淳さんの『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)より
パリジェンヌが選ぶファッションは「好きな服」と「着たい服」
クウネル最新号の「パリのスナップ」に登場しているパリマダムたちも、着こなしはさまざま。スカートやヒールの丈はもちろん、デザインや色、フォルムまで好きなものを合わせて「これが私」と自信を持って着ている姿が印象的です。

薄着も厚着も、地味も派手も、文字通り「何でもあり」なフランス人。
そして、パーティなど「ここぞ!」という時のスイッチの切り替えが上手なのも、パリジェンヌのおしゃれテクニック。フランス人の価値観の1つ、「他人の目を気にせず個性重視」という文化の違いも大いにありますが、おしゃれを自由に楽しむという点は、ぜひ参考にしたいところです。