「欲張りな生き方」を目指して。映画監督・呉美保さんがこれからやっておきたい10のこと

漠然と捉えていた「大人」の年齢を超えても、思い描いていた大人像には届かないもの。自分らしく輝く4人の理想の大人像、それに近づくために、やっておきたいことを伺いました。今回は映画監督・呉美保さんのインタビューです。

新しく出会った世界を深め、 自分を豊かにしていく楽しさ。

「年を重ねると、知らないことを知らないと言えなくなるけれど、自分を知り素直に学べる人でありたいと思います」

映画、CMの監督として活躍、9歳と4歳の息子の母である呉さんは、時間がない日々を逆手にとる方法を発見したそう。

「子どもが図書館で借りてきた戦国武将の本や恐竜の本を一緒に読んでいると一回習ったかもしれないけれど、感心したりはっとすることが多いんです。はからずも勉強してる…こういう学びを大切にしたらいいんだと気づき実行しています」

英語やピアノも子どもと一緒に改めて始めています。「圧倒的に息子たちの吸収力に差をつけられますが、頑張ってやっていきたい」。いつか海外の映画賞授賞式で登増して英語でスピーチしたり、子どもと華麗にピアノの連弾をしたり…。

「実現したら素敵ですよね。たくさん手掛けすぎ?いや諦めず種をまかねば…。私、出産する時ある女優さんから『欲張りに生きてね』と書かれた手紙をもらって、指針にしています。そして、母も手本ですね。70代で、今療養中の父を支え焼肉店を営んでいるんですが、元気で明るく、悪口とかマイナスな発言を聞いたことがないんです。楽器とか新しい趣味に挑戦して好奇心すごくて。いい年の取り方!」

呉さんのやり続けたいことは増えるのみ。華道を習ったことがきっかけで、家に花を絶やさないよう心掛けたり、茶道では先生たちの美しい年の重ね方にも感動。「日本人ではなくても日本に生まれたからには、着物も着てみたいしお茶の心や季節の取り入れ方とかを知りたいんです。

新しく出会うことに年齢制限はないと言う具さんの最近のトピックは、手話との出会い。公開中の新作『ぼくが生きてる、ふたつの世界」の製作過程でのことです。

「小1の姪が1歳の頃、聴力を失ったことが最初のきっかけで、手話について考え始めました。さらに手話で話す場面の多いこの映画を撮りながら、手話は言語であり、きこえない人だけのものではないとわかって目からウロコでした。方言や世代、ジェンダーの違い、人によって表現方法も様々で奥が深いんです」

話していると素敵な大人をめざす時間をゆったり取っている様子がわかります。
「このあいだ占いで97歳まで生きると言われました。車椅子でもメガホン、が目標。ゴールがあるのでなく、どんどん充実していくイメージだけ、です。旅ももっとしたいし、自分の心が動くことを共感してもらいたい欲求も強いから小説も書きたいし、年老いて夫や、はたまた女友だちと共同生活をする家の計画も練らなくては。欲張りというか長生きするなら楽しい方がいいですし、成長はまだまだ足りないし。とにかくどんなにゆるやかでもずっと坂をのぼっていけるのが理想です」

諦めない精神を支える持続力もすごい。

呉美保さんがやっておきたい10LIST

1 .子どもが手にする本をともに 読む。
2 .英語を諦めずに勉強する。
3 .ピアノを学び直す。
4 .手話というコミュニケーションを深く理解したい。
5 .映画を 100 歳まで撮るために ピラティスを頑張る。
6 .お花を飾ること、茶道をやり続ける。
7 .着物をひとりで着られるようにする。
8 .小説を書く。
9 .美術館のある土地に旅する。
10. 近しい人たちと晩年に暮らす家の 計画を立てる。

PROFILE

呉美保/おみぽ

三重県出身。『オカンの嫁入り』(10) で新藤兼人賞、『そこのみにて光輝く』(14)でモントリオール映画祭ワールドコンペティション部門最優秀監督賞を受賞。『きみはいい子』(15)以来の長編『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(吉沢亮主演、全国公開中)は耳の“きこえない母”と“きこえる息子”の物語。

『クウネル』2024年11月号掲載 写真/須藤敬一、取材・文/原千香子

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『クウネル』NO.129掲載

素敵に年を重ねるためにしたいこと、やめること

  • 発売日 : 2024年9月20日
  • 価格 : 1000円 (税込)

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