30年以上にわたりフランスと日本を行き来している、フランス式アロマテラピーの第一人者・日下部知世子さん。日下部知世子さんによると、パリの女性は自然のものを取り入れながら、更年期と上手に向き合っていると言います。そんな彼女たちの更年期ケアについて、お話を伺いました。
日下部知世子/くさかべちよこ
一般社団法人ベジテラピー協会代表理事。アロマテラピースペシャリスト。1978年よりフィトテラピー(植物療法)とアロマテラピーを学び、1981年より、仏アロマテラピーの父と呼ばれる故ジャン・ヴァルネ博士と後継者マダムティフィーヌに師事。トップアスリートのコンディショニングやスパのプロデュースなども手がける。
準備を怠らない、意識が高いパリの女性。
「パリの女性たちは、年齢を重ねてもおしゃれ心を忘れませんが、同じように、美容や健康に対しても敏感でとても意識が高いのです。以前、私がパリに滞在していたとき、虫歯が痛くなって歯医者に行ったのですが、あきれた顔で門前払いされそうに!お医者さん曰く、日頃からメンテナンスをしておくのがフランス人にとっては当たり前で、こんなにひどくなるまで放っておくのは論外、というわけです」と日下部さん。
普段から病院や薬に頼らず、自然のものを上手に取り入れながら体調も自己管理をしているというパリの女性たちは、更年期がきても慌てないと言います。
「40歳くらいから、更年期を意識してアロマオイルでボディマッサージをしたり、毒素をためないようにタラソテラピーでデトックスしたり。タラソテラピーは海泥や海水を使った自然療法で、治療やリハビリテーションの目的にも用いられていて、フランスには3000カ所くらいの施設があります」
「また、普段はシャワーで済ませることが多いフランス人はスパが大好きで、定期的にメンテナンスに通っている人も。日本のスパのイメージとは違い、医師や専門家によって食事や運動、ケアの内容までプログラムがきっちり組まれていて、1週間ほどそこでゆったり過ごす滞在型のスパなどが人気です」
日下部さんもフランスではスパによく行くそうですが、ダイエット目的の女性、糖尿病の治療の一環として来ているご年配の方まで、年齢に関係なく、一般の人が気軽に利用しているのをよく目にすると言います。
「歯のお手入れにしてもそうですが、悪くならないように予防することの大切さを知っているので、早め早めの準備を怠りません。だから、更年期のケアも若いうちから意識している女性がとても多いのです」
更年期対策はアロマとフェムケアで。
パリの女性たちが実践している更年期のためのケアとは、具体的にどんなものなのでしょう?
「フランスでは、アロマテラピーが古くから医療に用いられてきた歴史があり、広く親しまれています。更年期のケアとしては、女性ホルモン様作用が知られるクラリセージなどの精油が入ったオイルで鼠けい部のリンパドレナージュをしたり、血液の循環をよくする精油でお腹をマッサージしたり。カーッとするようなほてりには鎮静作用のあるラベンダーを、手のこわばりにはローズマリーを、というように更年期特有の症状を和らげるためにも精油が用いられます」
また、フランス女性はデリケートゾーンのケアにとても気を遣っているのだそう。
「いくつになってもパートナーと親密でいるのがフランスの文化。また、自立や尊厳をとても大事にするので、排泄機能を保つ意味でもデリケートなパーツのお手入れが行き届いている女性はとても多いです。
「普段からきちんとケアしておけば、更年期特有のかゆみやにおいなども防ぐことができますし、肌がたるむのと同じように、加齢で膣も萎縮すると言われているので、フランスでは膣の中をマッサージできるオイルもたくさんお店に並んでいます。ボディソープではなく、専用のセンシティブなソープで洗うのが一般的ですし、ビデの洗浄にハーブウォーターを使っている人もいますよ」
最近は日本でもフェムテックやデリケートゾーンのケアも広がってきていますよね。クラリセージやラベンダーなどの精油はアロマショップなどで手軽に買えるので、ケアに役立ててみてはいかがでしょう?
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パリマダムの更年期ケアは、次回(後編)に続きます!
写真 (c)SIPA/amanaimages 、取材・文/矢沢美香