年末年始にいま一度読みたい不朽の名作『星の王子さま』。俳優・中嶋朋子さんが大切にする言葉
最初に出版されて80年余り。150とも160とも言われる言語に訳され、聖書の次に読まれているとも称される『星の王子さま』。その魅力を中嶋朋子さんが語ります。
お話を伺った方
中嶋朋子/なかじま・ともこ
俳優
東京都出身。俳優。唯一無二の存在感で、国内外の演出家からの厚い信頼を得る。俳優業の他にもナレーションや朗読、執筆活動にも根強いファンを持つ。近年の主な出演作品は、ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』、『シリーズ横溝正史短編集Ⅳ』など。
読むたびに新しい、フランスが生んだ世界文学。
砂漠に不時着した飛行士が、ある星から地球にやってきた小さな王子さまに出会い、王子さまの星をめぐる旅の話を聞く物語。アントワーヌ・ド・サン゠テグジュペリがシンプルな言葉で書いた27章からなる小さな本は1943年にアメリカ、’46年にフランスで出版され、4千万から5千万部も売られてきた、世界中で愛されているベストセラーです。
小学生で初めて読んで以来、中嶋朋子さんもこの小説を愛し、心の中にいつも『星の王子さま』の物語を抱きながら生きてきたと言います。
「最初は王子さまがいなくなってしまう結末があまりにも悲しくて、どうしたらいいのかわからなくて、ページを閉じたほどだったのです。でも、中学生くらいで読み直したら、実はすごくポジティブなことが書いてあるとわかって。王子さまが出会うキツネの『かんじんなことは目に見えない』というメッセージにやられたんですね。
引用は『オリジナル版 星の王子さま』(サン=テグジュペリ作、内藤 濯訳、岩波書店刊より)
「普通の物語では悪者扱いされることが多いキツネがここでは一番賢くて、大切なことを語ってくれる。そのことにすごく衝撃を受けたんです。世の中で当たり前と思ってきたことが、ひっくり返って。思い込んでいることは実は違うかもしれない。物事を違う角度から見る喜びを知ったのだと思います」
以来、王子さまの物語は常に中嶋さんの身近にあって、事あるごとにページをめくる存在になりました。
付箋がたくさんついた中嶋さんの本。
池澤夏樹、河野万里子など、多くの訳が出ているが、最初に触れた内藤濯(あろう)の訳文がしっくりくると言う。左は著者生誕100年を記念して2000年に刊行されたオリジナル版。
サン゠テグジュペリ作、内藤濯訳。右の文庫版と共に岩波書店刊。
本の写真/目黒智子、取材・文/船山直子
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『クウネル』NO.136掲載
なにしろ「フランスびいき♡」なもので
- 発売日 : 2025年11月19日
- 価格 : 1,080円 (税込)