イザベル・ユペールとケイト・ブランシェット/前編。石川三千花さんのイラスト&エッセイで深堀り

超然としてかっこいい大人の代表として誰もが思うイザベル・ユペールとケイト・ブランシェット。2人の輝きの秘密を、石川三千花さんのエッセイに出演作やファッションのピンナップも加え深めます。

年を重ねて進化を続ける2人のすごさとは?

イザベル・ユペール/Isabelle Huppert

パリ16区生まれ。リセ時代から演技を本格的に修め、後に国立高等演劇学校にも学ぶ。舞台から1971年には映像デビュー。以降、現在に至るまで圧倒的演技でめざましい活躍を続ける。

ケイト・ブランシェット/Cate Blanchett

オーストラリア、メルボルン出身。国立演劇学院を卒業、1992年舞台でキャリアを始め映画デビュー後、ハリウッドへも進出、多くの映画で活躍。UNHCRの親善大使を務めるなどの活動も。

若くて活きのよいライジングスターがもてはやされるエンタテインメントの業界で、独自の才能を発揮し続けて、年を重ねてもなお進化を止めないイザベル・ユペールとケイト・ブランシェット。

両者には、信頼に値する確かな演技力や、筋の通った自身の考えを発信する知性ばかりではなく、ファッションアイコンになるほどの美しさを兼ね備えているところなど共通点が多い。また、このSNSが幅をきかす現代において、私生活を売りものにせず、一個人としての生活を大切に過ごしている様子には、好感を抱かずにはいられない。

自分の仕事に誇りを持ってチャレンジし続けるプロ意識。成熟した大人の女性としての魅力。彼女たちが称賛される存在なのは明白だが、その素敵の素を探ってみたい!

コンスタントでかつアグレッシブな取組みに感嘆。

映画を観るとき、たとえば、好きな監督作だからとかロマコメが観たいからなど、さまざまな理由があるけれど、イザベルやケイトが出ている作品なら観てみたい。間違いない、という信頼感がある。

2人ともにキャリアのスタートは舞台女優。映画デビュー後、イザベルはフランスのアカデミー賞といえるセザール賞に16回ノミネートで史上最多記録を更新中(2回受賞)。カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの国際映画祭での複数受賞の他、2017年『エル ELLE』でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)では主演女優賞を獲得した。ハリウッドのスター女優なら嫌がるような倒錯した性的嗜好を持つ女や、レイプ犯と関係を持つ女の役を彼女は淡々と、しかし強烈な印象を残す演技で、映画史にそのキャラクター像を刻んでゆくのだ。

ケイトもまたアカデミー賞ノミネートの常連で、すでに2個のオスカー像を獲得。演技の幅の広さは歴史物からアメコミのキャラクターまで、ときには性別を超えて男性の役までこなし、次なるメリル・ストリープに確定!

悪役だろうとなんだろうと、恐れなく役柄をリアルに生きる姿勢は名監督たちに愛されて、まさに役者の鑑だ。

『エル ELLE』

会社の経営を担うやり手でリッチなマダムが自宅でレイプされるが、彼女はそれを訴えない。しかし徐々に彼女の真意が見えていくことに……。ハリウッドでも絶賛を受け、この作品でイザベルの立ち位置がまた進化した。2016年

『主婦マリーがしたこと』

イザベルは、ノルマンディのふつうの主婦だったがフランスの女性最後のギロチン処刑をされた主人公に扮し、鮮烈な印象を残している。30代なかば、淡々としつつ運命をただ悲しいだけで終わらせない壮絶な演技! 1988年

『ピアニスト』

禁欲的な人生を送ってきたピアノ教師が、若い男性に迫られてから、屈折した性衝動を暴発させ始める。こういったセクシャルな暗部を抱えるマダム役はイザベルの独壇場といった感じ。2001年カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞。

『TAR/ター』

ベルリンフィル初の女性マエストロ、リディア・ターの栄光と苦悩のストーリー。演技力うんぬんは言わずもがな。ケイトと扮するターとの一体感が激しく、リアルな話のような気さえしてくる。演奏、指揮シーンも見もの。2022年

『エリザベス』

ケイト・ブランシェットの存在を世界に知らしめた作品。16世紀イングランドの女王、エリザベス1世を演じた。歴史の流れに翻弄され孤独を極める女王が覚悟をもって国を守っていく様子はケイトの知性や堂々の姿勢とぴったり。1998年

『キャロル』

1950年代のNY。ミステリアスな上流の女性と彼女に憧れるアルバイトのデパート店員、2人は本当の恋に生きられるのだろうか。スーツ姿の流線を描くラインも美しく、強く繊細なエレガンシーで演じる。2015年

PROFILE

石川三千花/いしかわ・みちか

映画、ファッションに造詣が深く、独自の視点によるイラストとエッセイで長く雑誌、WEBを中心に活躍している。『石川三千花の勝手にシネマ』ほか著書も多数。『J:COMマガジン』で新連載がスタート。リノベーションした別荘に通う日々。

『クウネル』2024年11月号掲載 編集/原 千香子、エッセイ・イラスト/石川三千花

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『クウネル』NO.129掲載

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