【目利きが選ぶフランス映画】恋愛の多様な姿を教えてくれる4本。これぞフランスの恋愛模様
夏の終わりのアンニュイな時期。夜更かしして、フランス映画を観ませんか?フランス映画には、恋、おしゃれ、アート、濃密な人間関係…人生で大事なことが全部が詰まっている。目利き10人におすすめのフランス映画について聞きました。
今回は映画コメンテーターのLiLiCoさんとスタイリング・ディレクター古牧ゆかりさんのおすすめ。「恋愛の多様な姿」を見せてくれる4本です。自分を貫きつつジェンダーの壁に惑って愛を追う姿、男女の飽きを知らない押し戻し、性愛の心理のひずみ……。多様な恋愛テーマの映画で、一生勉強しなくては?!
cinema1/『わたしはロランス』
女性になりたいという願望に正直に生きようと、主人公は一緒に暮らしてきた女性との仲もリセットして再出発。彼女もよき協力者たろうとするが……。
「二人は心の制御に苦悩します。カナダが舞台ですがフランス映画のムードを強く感じました。映像表現にもおしゃれな空気が満ちていて大好きです」とスタイリング・ディレクターの古牧ゆかりさん。
cinema2/『彼は秘密の女ともだち』
若くして亡くなった親友の、残された夫と赤ん坊を見守ることを誓ったクレール。彼女はその夫の女装指向を知ることになる。ノンバイナリーなど今日的な性と愛の問題が主題のひとつ。
「ありのままの自分であること。そこに生命の根本的な力があるんだという監督のメッセージが伝わります。結末の解釈が観客にゆだねられるのも、フランス映画のいいところ」とLiLiCoさん。
cinema3/『エル ELLE』
「女の心はホラーより怖い!という事実がひしひしと。主人公に共感はできないかもしれないけれど、こんな人間もいるよね、もしかしたらそれはあなたでは?と問われる映画なんです」とLiLiCoさん。
ゲーム会社の経営者であるミシェルはある日、自宅に侵入したスキーマスクの男にレイプされてしまうが、なぜか警察に通報しようとしない。やがて彼女の意外な過去が明らかになっていく。
cinema4/『パリの恋人たち』
「妊娠したの、でもあなたの子じゃない」と同居するマリアンヌに告げられたアベル。二人は別れるが数年してマリアンヌの結婚相手が亡くなる。その後、マリアンヌの家に転がり込むアベルだが、一方アベルを慕うエヴが恋慕をむきだしに。マリアンヌは驚きの提案をする。
「うだうだの恋愛はフランスぽい。男はダメダメで女はそれを許容します。誰かを傷つけても自分に正直学びたいけど、学べるものでもないですね」と古牧さん。
すすめてくれた人
古牧ゆかり/こまきゆかり
スタイリング・ディレクター。90年代ファッション誌で活躍した後パリに3年暮らす。現在は多メディアにてファッション、インテリアの記事、広告を手掛ける。かごブランド『cargo』を主宰。
LiLiCo /りりこ
映画コメンテーター。第17回淀川長治賞受賞。苦手だったフランス映画を好きになったのは『メルシィ!人生』というコメディを観たのがきっかけ。「面白いだけでなく、深いメッセージもある作品です」
『クウネル』2024年9月号掲載 取材・文/船山直子、原 千香子