長らくファッションの世界で活躍するイラストレーターの飯田淳さん。雑誌 『GINZA』のロゴデザインや、『オリーブ』の裏表紙の広告イラストといえばピンとくる方も多いと思います。そんな飯田淳さんが手放せないものが、アトリエの本棚に積まれた古い洋雑誌の束。時折その束に手を伸ばし、雑誌の中の世界〈1960〜70年代アメリカ〉にトリップするといいます。そんな「宝の山」についてお聞きしました。
飯田淳/いいだじゅん
ファッションイラストレーションのほか、ロゴデザイン・テキスタイル・広告・エディトリアル・パッケージなど、多ジャンルで活躍。7月1日から「東京妙案ギャラリー」で、個展を開催中。
飯田淳さんが「大先輩」と仰ぐ画家の金子國義氏から譲り受けたのが、 古いアメリカのティーン雑誌『seven teen』です。
金子國義氏とは、とあるプロジェクトで一緒に。若かった飯田淳さんにとって、最初は緊張感ある仕事でしたが、回を重ねるごとに信頼を得、親密になっていったと振り返ります。
「金子國義さんのアトリエは宝の山でした。独特なインテリアセンスで、ものが多くて一見、雑然としている……。でもそこにあるものすべてが、計算のうえ配置されていて、乱れ方が美しくおしゃれ」。『seventeen』は、その「宝の山」 のうちの一部でした。
飯田淳さんにとっては、やはりイラストレーションが関心事。大胆な線の使い方や、モチーフの表し方などが素晴らしく、ワクワクすると話します。
「僕はイラストを描くとき、インターネットで情報を集めることはしません。 検索すれば、一発で画像は見つかるだろうけどしない。まずは想像。
それから、古い画集やこういう古い雑誌をめくりながらイメージをふくらませるんです。そこから『これだ』というシルエットや色に落とし込む」
「美の巨人」から譲られた宝は、インスピレーションの素なのです。
写真/有賀 傑 取材・文/鈴木麻子 再編集/久保田千晴