夫、娘と暮らしていた、都内の賃貸一軒家生活から一転、築150年の古民家へ移り住み、日本伝来の住宅の良さを楽しんでいる山本ふみこさん。移住を決めたきっかけや、新しい住まいでの工夫を教えていただきました。
山本ふみこ/やまもとふみこ
1958年北海道小樽市生まれ。4歳から東京暮らし。暮らし周り、生活と社会を見つめる多くのエッセイを執筆。「ふみ虫舎通信エッセ
イ講座」主宰。新生活をブログでも紹介。https://www.fumimushi.com/
長年、東京に暮らしてきた山本ふみこさんが埼玉県熊谷にある古民家に引越しをしたのは去年の5月のこと。そこは夫で映画監督の代島治彦さんが生まれ育った、築150年は経つという、大きな古民家です。
「ドイツ人の建築家が日本の古民家のよさに惚れ込んで、新潟で古い農家に手を入れて素敵に暮らしている番組を深夜のテレビで見たの。そうだ、私にもこういう家との縁があると思ったんです」
山本ふみこさん、夫の実家に引越すことを「5秒で決心して」宣言しました。「私、熊谷に引越すことにします!」
義母が亡くなり、義父は引越して、 無人になっていた家。代々農業を営み、また養蚕もしていた大きな住宅。そのリノベーションと共に、山本ふみこさんの新しい生活が始まったのです。
移住を大げさに考えなくていい。
引越しは大変、考え直したほうがいいのでは。移住を決めた山本ふみこさんに知人、友人は心配し、そう声をかけてくれたそう。アドバイスをしてくれた友人たちには感謝の気持ちだけれど、山本ふみこさんに迷いはなかったようです。
「今回の引越しをおおげさに考えない、というのが心に決めたことなのです。もともと先々のことを考えすぎないようにして生きてきたし、考えたって何かが起きるときは起きるでしょう?」
年を重ねるとどうしても動くのが面倒になったり、用心深くなったり。でも失敗したら、またやり直せばいい、そう山本ふみこさんは言います。
「この世代でだって、新しいことは始められるし、どうしようか迷っている方に、こんなやり方もあるってお伝えできれば。もう少し暢気でもいいんじゃないかな、と思うのです」
古いものも新しいものも活かす。
家の背後にある蔵には、古い家具も眠っていました。台所で食器棚として使っているのは、義母が結婚するときに持ってきた靴箱。畳敷きの仏間には、山本ふみこさん愛蔵の書の掛け軸がぴったりとなじんでいます。
古いものを生かし、新しいものも取り入れて暮らしを整えながら、山本ふみこさんは「私、笑いながら生きています!」
写真/柳原久子 取材・文/船山直子 再編集/久保田千晴