誰も私に関心がないからと、身なりを構わないのはもったいない。おしゃれは自分のためにするものだから、自由に楽しんで。そのためには自らを知ること、と島田順子さんは語ります。
おしゃれに引け腰になり始めるクウネル世代。誰にも見られていないと思い込んでいるから手を抜きがちになるのでは?と、島田順子さんに質問すると、「逆に、誰も見ていないとおしゃれしたくならない?」と意外な答えが。
「家にいるときのほうが、いつもとは違った服や着こなしを試して、気持ちを上げることができると思うの。お酒があまり飲めない私がシャンパンを飲むのと同じね。生活のどこかに豊かさがあれば嬉しくなる。自分だけのおしゃれをすると気分が上がるんです」
家で、これまでしたことのないコーディネートを自分の定番服で試す。クロゼットに眠っていたアイテムで、新しい着こなしをテストする。おしゃれ には好奇心を刺激する効果があります。「家の中で着ていてだんだん慣れてきたら、次は外に着て出てみる。家で『いいかも!』と思った余韻が残っていたらもっと楽しくなると思います」
私たちが思っているより、おしゃれ が気持ちにもたらす影響は大きい。
「たとえば、この春作った長いヒッコリーデニムのコート(写真下)。好きで作ったものの自分ではどう着ようと考えていました。私は肩幅が狭く背も高くないので着こなしに少し悩みましたが、今回撮影で着てみたら気に入って、今度外に着ていこうと思っています」
下の写真は、無難におさまりがちなジャケットスタイルに、シャツでフェミニンな薫りをプラス。そういう大人のエレガンスをさり気なく表現できるのもクウネル世代ならではの役得です。
「シャツのボタンをいくつか外しても、ネックレスやペンダントを着けると、だらしなく見えないし、人の視線を胸から少しずらしてくれます」
おしゃれは、着る人が豊かな気持ちでいるためにすること。その人なりの似合うおしゃれを楽しんでいれば、他人の目にも素敵に映ります。
「目線を外したり合わせ方を工夫したり。そうやってカモフラージュするのは、自分のことを知っているからできるんだと思います。やっぱり自分を知るというのは大事なことね」
『ku:nel』2019年7月号掲載
写真 加藤新作/取材・文 綿貫あかね