美木ちがやさんが叔母の介護で悟った心のバランスの保ち方。3つの「しないこと」と笑顔になる秘訣。【私の介護体験】

美木ちがやさん

素敵なファッションやライフスタイルに注目が集まる美木ちがやさん。忙しい毎日を過ごす中で、長年同居していた叔母の介護を経験したと言います。介護に直面したときの戸惑い、不安、そして介護の経験から学んだことについて、今、改めて思うことを語ってくださいました。

病気になると心も弱る。叔母との向き合い方に戸惑いも

美木ちがやさん

美木さんが介護に直面したのは、50代半ば。母・川邉サチコさんの妹である叔母を4年前に見送るまで、約3年間サポートしていたと言います。

「叔母はサチコさんの10歳下で、他界したときは74歳でした。叔母は私が生まれたときから娘のようにかわいがってくれて、30年くらい同じ敷地の別棟で暮らしていましたが、彼女が病気になってから主に私が介護をしていました。

もともと叔母はお酒が大好きで、友達をたくさん呼んでしょっちゅう家でパーティーをするような、社交的で明るい人だったんですよ。でも、すごく仲良し夫婦だったので、夫を亡くしてからは想像以上に寂しかったようで……。病気で体も心も弱っているせいもあるのですが、時折、思い詰めたような言葉も口にするようになり、ああ、この人はずっと孤独感を抱えていたんだな、と彼女の別の一面を知って驚きました。

同居していたとはいえ、叔母には叔母の世界があるだろうからあまり踏み込んでもいけないかな、という気持ちもあったのですが、叔母としてはもっと寄り添ってほしかったんでしょうね。介護で接する距離が近くなったことで初めてそのことに気づき、まさかあの明るい叔母がこんなふうに変わってしまうとは……というショックもありました。

肉体的なことよりも、精神的なことのほうが何倍もきつい

美木ちがやさん

「病状が進んでからは入退院を繰り返し、体も思うように動かせなくなってヘルパーさんにお願いする回数を増やしたりしましたが、それでも私が介助しないといけないことがひっきりなしにあって。夜中も1時間おきくらいにコールがあったりして眠れなかったですね。自分の仕事や生活もあるので、両立が厳しいと感じる時期もありました。

でも、今思うと、肉体的なことよりも精神的なことのほうがつらかった。やはり母娘とは違うので、お互いに遠慮があって意思疎通がうまくいかない部分もあるんですよ。サチコさんだったら、私がこう言ったらこう返ってくるだろうとか、こうしてほしいのかな、と想像できるけれど、叔母の思いを汲み取るのは難しくて。

例えば、叔母が薬を飲むのを忘れたり、逆に多く飲みすぎたりしたので注意したら、「ちがやちゃんに怒られてすごくつらくて悲しかった」とヘルパーさんにこぼしていたらしく。叔母は直接私には文句が言えなかったのだろうし、私は私で変に気を回してギクシャクすることもあり、体も心も弱っていく叔母にどう寄り添えばいいのか、結局最後までものすごく葛藤がありました。

今でも、もっとこうしてあげればよかった、と思うことがあるけれど、でも、一生懸命やっても、彼女の心の隙間みたいなものはどうやっても埋めてあげられないし、100%相手が満足してくれる介護というのはないんだろうな、と思います」

お互いが苦しくならない、3つの「しない」こと。

介護する側は、「一人で抱え込まない」「棍を詰めすぎない」「やりすぎない」ことが大事だと言います。

「サチコさんにも『やりすぎてはダメよ』と言われたのですが、介護する側が親身になりすぎると、お互い苦しくなってしまう。状況を俯瞰で見るくらいの、冷静な目が必要だと痛感しました。もちろん、人間なので感情的になることがありましたが、相手の体も心も万全ではない以上、話し合っても余計こじれる気がして、そういうときは正面から受け止めないようにしてやりすごしていましたね。

介護する側はどうしても自分でなんとかしようと思いがちですが、一人で抱え込むと精神的にまいってしまうので、相談できる専門機関や地域のコミュニティなどは大いに活用するといい。話を聞いてもらうだけでも、すごく気持ちがラクになると思いますよ」

日々の中で小さな楽しみを見つけて

美木ちがやさん ヘレンド

「デパートで叔母が買ってくれた『ヘレンド』。一緒に出かけるとかわいい小物とかをプレゼントしてくれました。その気持ちがすごく嬉しかったです」

大切なのは、「介護される側もする側も楽しみを見つけること」と美木さん。

「叔母の体調がいいときは車椅子を押して、サチコさんと一緒にデパートへお寿司を食べに行ったりして、出かける時間を作っていました。3人でたくさんおしゃべりして大声で笑って、そういうなんでもないことがとても楽しかったですね。叔母は帰りに他のフロアに寄って、私にちょっとした小物とかを買ってくれたんです。私に喜んでほしいという感謝の気持ちがあったんでしょうね。

叔母には編み物もよく教わりました。普段は私が何かしてあげることが多かったから、私に教えることで立場逆転になって、彼女の気持ちもラクになったのではないでしょうか。あと、整理整頓がすごく得意な人だったので、かわいいクリップとかシールとか文房具グッズを買ってきたら、とても楽しそうに書類とかをまとめていました。その人の好きなことを見つけて少しでも楽しく過ごしてもらうことも介護において大切な気がします」

美木ちがやさん 編み物

「叔母に教わりながら一緒に編んだベスト。大切な思い出です」

介護を通して実感した「今を楽しく生きることの大切さ」

そして、自分自身を大事にすることも忘れてはいけない、と言います。

「私のサロンのお客様の中にも介護をされている方がいらっしゃいますが、その合間を縫ってサロンに足を運んでくださったり、おいしいものを食べに行ったり。そういう息抜き上手な方のほうがやりくりがうまくいっているように感じます。

私が介護中によく行っていたのは100円ショップ! 家の中にいると介護のことがつねに頭から離れないので、その空間と切り離した場所に身を置く。ちょっと空いた時間に自転車で近所の100円ショップに行って、5000円分買っちゃう! みたいな勢いで買い物するとすごくいい気分転換になりました。自分では気づかないうちにストレスが溜まっているので、一人でお茶を飲みに行くでもいいし、ちょっと外の風に当たるでもいいと思います。こまめなリセットが一番効きますね。

さらに、もう一つ心がけていたのが、笑う回数を増やすこと!
楽しいことかあるから笑うのではなくて、笑うから楽しい気持ちになる。これで何度も暗くなりそうなときを乗り越えられたのかもしれません。

一番つらかったのはやはり叔母を見送ったときですが、そのあと、ずっと大事にしていたアクセサリーをなくしてしまったんです。どこを探してもいまだに出てこなくて……。普段の私ならありえないことだったので、かなり精神的にまいっていたんだな、と後になって気づきました。

介護に直面すると、いつまでこの状態が続くのかと途方に暮れることもあるし、自分事に置き換えてこの先どうしようとか、今まで感じたことのない不安やストレスを抱え、いろいろなものの捉え方が変わりました。すごくいい経験になりましたし、だからこそ、“今を楽しく生きる”ということがとても大切なのだと改めて感じています」

写真/玉井俊行、取材・文/矢沢美香

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美木ちがや

美木ちがや

トータルビューティデザイナー。母の川邉サチコさんとともにKAWABE LABを主宰。一人一人に合ったヘアメイク・ファッションスタイリングを提案。ジュエリー・ファッション・コスメなどの商品開発の他、フォトグラファーなどマルチに活躍中。
http://www.sachikokawabe.com/
Instagram : @chigaya_miki

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