バゲットを偏愛する3人に聞くフランスバゲット文化と、日本も負けていない!おいしいバケット
バゲットを偏愛する人たちに改めてその魅力を聞きます。またフランスでの愛され方、バゲットの愉快な話、フランスぽくて、おいしい東京バゲットを挙げてもらうと!
小麦の味と酵母の香り。 ひと口でフランス気分に。
バゲットと言えば、パリジャンが片手に持って自転車に乗っている情景を思い浮かべる人も… …。その〝バゲット=フランス人の日常〟というイメージは、あながち間違いではありません。生活必需品であり、特別な存在。それは伝統的なバゲットに関する法律「1993年パン法令」があることからもわかります。
1『ブーランジェリー ブルディガラ 広尾本店』の〈バゲット・グルマン〉432円/北米産小麦を中心にフランス産と石臼挽き小麦を合わせて使用。生地は低温で一晩寝かせて甘みを出し、重厚感ある焼き色に。
2『トシオークーデュパン』の〈バゲット・トラディション〉390円/高灰分の道産小麦粉を使用。18時間以上発酵の後、極力火入れは短く。毎食でも飽きないフワフワなバゲット。
3『ブーランジュリー ボネダンヌ』の〈バゲット〉399円/石臼挽きを含む3種類の仏産小麦にゲランド塩を使用。芯まで焼き上げることで、酵母の香りが引き立つ1本。
4『パン・デ・フィロゾフ』の〈バゲット〉380円/シャンパーニュ地方産小麦に石臼挽き小麦を加え、味と香りと甘みに奥行きを。焼色の良い皮と香ばしさが魅力。
「小麦粉、水、塩、酵母またはルヴァンのみを使用、添加物や冷凍生地は使用禁止。長時間発酵させる伝統的な製法で作られたものだけが、バゲット・トラディションを名乗れると決められています」とはパンジャーナリストのパン野ゆりさん。日本なら特に「トシオークーデュパン」のバゲット・トラディションは、ひと口で心がパリに飛ぶくらい、フランス的で好みだとか。
「小麦の味わいが広がり、噛むほどに旨味が。早朝から営業しているところもフランスっぽくて好きです」
また「パン・デ・フィロゾフ」のバゲットは、「ガリガリのクラスト(皮)と柔らかいクラム(中身)のコントラストが絶品。サンドイッチにしてもパンが負けないのが素晴らしい」とのこと。
こんな食べ方でバゲットを愛でています。
『トシオークーデュパン』のバゲットは、何も付けずにそのまま食べるのも大好きなのですが、お店の2Fのカフェ『COMPTOIR』で楽しめる、サンドイッチとスープとラペのセットもお気に入り。フィリングもとても美味です。
ベーカーの茂木恵実子さんは、幼少期を過ごした米国でフランス人による仏語の授業を受け、仏文化、そしてパンの魅力に開眼。
「初めて訪れたパリの駅のスタンドで食べたハムとチーズを挟んだバゲットサンドが驚くほどおいしかったことは、今でも忘れられません」
「ブーランジュリー ボネダンヌ」のバゲットは、そんな茂木さんにパリを思い出させてくれるそう。
「細身でしっかりした焼き込み、潔い〝1本クープ(切れ込み)〟も私が思い描くフランスのバゲット。パリの路地裏にありそうな佇まいも気分が上がります。同じく焼きが深い『フィロゾフ』のも好き。バターがあればご馳走になる素晴らしい1本」
こんな食べ方でバゲットを愛でています。
『ボネダンヌ』のバゲットを半割にし、バターを塗ってハムとチーズを挟む“ジャンボンフロマージュ”が大好き。赤ワインにキャロットラペなどフランス的な一皿を添え、パンがしっとりする前になるべく早く食べるのがポイント。
何度もフランスを訪れている漫画家のじゃんぽ~る西さんは、現地でバゲットを買うときは2本購入し、家までの道中、そのうちの1本の先端を歩きながら食べるのが常です。
「バゲットをちぎって食べる、その行為が楽しいし、他人がちぎって食べるのを見るのも楽しい。シンプルなので飽きが来ないところが魅力ですが、慣れてくると味の違いや強弱がわかるようになるんです。それを知ってから、フランス人にとってのバゲットは、日本人にとっての白ご飯なんだと思うようになりました」
じゃんぽ~るさんにとってフランス的なバゲットとは、食べるのにちょっと苦労するくらいの皮の硬さと、内側の粘るような食感があること。広尾の「ブーランジェリー ブルディガラ」のバゲットがまさにそれ。
「風味がフランスで食べるものと同じ。どこの店でも焼き立ての少し熱い状態のものが買えると、〝フランスみたい〟と嬉しくなります」
こんな食べ方でバゲットを愛でています。
『ブルディガラ』のバゲットをちぎりながら、料理と一緒に食べるのが好きです。ドレッシングがかかったサラダや肉料理や魚料理など。日本の食卓に白ご飯が欠かせないように、バゲットはテーブルに必ずあってほしいです。
PLOFILE
パン野ゆり/ぱんの・ゆり
モデル・パンコーディネーター、日本で訪れたベーカリーは数しれず。海外にも足を延ばし独自の視点でパンを分析。人気のベーカリーとコラボでパンを作ることも。
茂木恵実子/もぎ・えみこ
ベーカー・「Fermentation」主宰、ル・コルドン・ブルー東京校にてパンディプロム取得後、パン教室とパン販売を開始。現在はパンと焼き菓子の卸売、イベント販売を。
じゃんぽ~る西/じゃんぽ~る・にし
漫画家、フランス人ジャーナリストの妻との日々を描いた『カレンさんの言うことには』を雑誌『FEEL YOUNG』(祥伝社)にて連載中。
shop information
1 ブーランジェリー ブルディガラ 広尾本店
住:東京都港区南麻布4-5-66
電:03-3280-2727、営:8:00~20:00(日曜、祝日~19:00)
休:火曜、https://burdigala.co.jp/
2 トシオークーデュパン
住:東京都目黒区中根2-13-5
営:6:30~16:00、休:月曜、火曜
https://www.toshipain.com/
3 ブーランジュリー ボネダンヌ
住:東京都世田谷区三宿1-28-1
電:03-6805-5848、営:11:00~17:00
休:月曜、火曜、水曜、Instagram:@boulangerie_bonnetdane
4 パン・デ・フィロゾフ
住:東京都新宿区東五軒町1-8
電:03-6874-5808、営:10:00~19:00
休:月曜、Instagram:@pain_des_philosophes
『クウネル』2026年1月号掲載 写真/山崎智世、取材・文/河野友紀、編集/原 千香子