菓子・料理研究家のカフェオレボウルコレクション。フランスの家庭での朝食はカフェオレボウルが定番です
幼いころからカフェオレが好きだった菓子・料理研究家の山本ゆりこさんがその素敵さに目覚めたのはフランス留学中。フランスのセンスがつまった素朴なかわいらしさに夢中になりました。
朝食のテーブルを明るくするフランス発の小さな器。
ブルーやグリーン系の色が多い山本さんのコレクション。中央の小さいものは巡礼地〈ルルドの泉〉の土産品。
山本ゆりこさんがカフェオレボウルを集め始めたのはお菓子を学ぶために渡仏した20代のころ。留学前は、カフェオレボウルという器がフランス生まれの食器ということくらいの知識しかありませんでした。
山本さんがコーヒーを注いでいるのが、白いカフェオレボウルの素敵さに気づかせてくれたもの。お手製のコンフィチュールとパン、カフェオレはフランス時代から変わらない朝食のメニューです。
「留学してフランス人のお宅に泊まると、朝ごはんのときにカフェオレボウルが出されて、これで好きなものを飲みなさい、と言われて。あ、本当にカフェオレボウルを使っている!と感激しました」
カフェオレボウルの原型のような形だが、青色がとびきりきれい。ゴダールの映画『女は女である』のワンシーンにも出てきてびっくり。
カフェオレボウルが気になって出かけた蚤の市、そこで出合ったのがグリーンの模様が入ったボウル。色、形、ステンシルの模様、すべてが好みでひと目惚れして、即購入。その後数十年に渡って続く、山本さんのカフェオレボウル・コレクションの第1号となりました。
記念すべきファースト・コレクションはパリのヴァンヴの蚤の市で求めた。なにげないたたずまいだが、完璧なかわいらしさのボウル。
「カフェオレボウルには観光地のお土産ものや、企業やお店の宣伝を兼ねたノベルティもあって、本当に日常使いの雑器なのです。それなのに、デザインや形、色の完成度が高いのに驚きます。フランス人はおいしいものを食べながらおしゃべりをすることを生活の楽しみとして大切にする人たち。味の作り方、食器や食卓の見せ方が上手で妥協がない。そんな彼らのセンスがこんな雑器にもつまっているところが好きなのです」
留学中は、服や装飾品には目もくれず、お菓子の食べ歩きとカフェオレボウルだけにお金を使う日々。帰国後もフランスへ出かけるたびに蚤の市へ通い、買い続けたコレクションは最大350個くらいまでになりました。イベントなどで手放すこともあって、今は本当に気に入ったものが50個ほど手元に残っています。
ブルターニュの耳付きのボウルは6年前に出合った。土地のお土産品らしく、内側に描かれた民族衣装を着た男性の姿も味わい深い。
「近年、パリにも英語圏発のサードウェーブのコーヒー文化が入ってきて、マグカップでコーヒーを飲むフランス人も増えてきました。でも朝食にボウルを使ってコーヒーやカフェオレを飲むという文化はずっと続いてほしいな、と思っています。もちろん我が家での朝食には必ずボウルが登場、食卓をぱっと明るくしてくれる大事な器です」
仏中部に住む友人夫妻がアンティーク店で見つけ、誕生日に贈ってくれた。花はスポンジで描かれ、葉は手描きのエレガントなもの。
PROFILE
山本ゆりこ/やまもと・ゆりこ
菓子・料理研究家/カフェオレボウル収集家
大学卒業後、1997年に渡仏、12年間にわたり暮らしたパリで、製菓と料理を学んだ。『カフェオレボウル 新装版』『フランス伝統菓子図鑑』など著書多数。共著『パリの美術散歩ノート』を2026年春に刊行予定。Instagram:@yamamotohotel
『クウネル』2025年1月号掲載 写真/刑部信人、取材・文/船山直子
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『クウネル』NO.136掲載
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