酒井順子さんが提案「自分なりの旅のテーマを立て、ゆったりオリジナルな旅を」

クウネルが推す「テーマ旅」。
その道の達人と言える酒井順子さんにテーマを設定したり磨き上げるコツを教わりつつ、共にテーマの例を考えます。旅はテーマ次第でおおいに変わる!
旅テーマを浮かべれば湧いてくる「行かなきゃ!」に背中を押されて。
多彩でワクワクする旅をしている印象の酒井さん、旅はテーマ重視と提言。
「有名だからという理由で、旅先やそこで行く店を決める旅からは、そろそろ卒業してもいいのでは。混んでいるし、予期せぬものとの意外な出会いもありません。自分なりの旅のテーマを立てることによって、ゆったりとオリジナルな旅をしましょう」
自分の定番旅を繰り返し、ただただリラックスするのも悪くはないけれど。
「年齢を重ねたからこその旅のテーマは、たくさんあるはず。例えば私は、行ってみたい湖、食べてみたい餅・だんごなどをスマホのメモにためて、旅の〝トリガー〟にしています」
目的地探しに腐心するより自由にテーマを考える。さすれば旅人生も回ります。
「旅のテーマに正解も不正解もありません。自分の興味と好みに従ってすぐにでも旅立ちたくなるテーマを」
テーマはいつでも降りてくる?!
「自分の内と外の未知なことと出会うのが旅の醍醐味」という言葉にも納得。
テーマ提案1/友人の実家を訪ねる

「自分が選んでいない地に行きたくて、友人達の実家へ」。たしかにありきたりの逆にいけそう。
「別に『田舎らしい田舎』狙いなのではなく、馴染みがないことが大切。2、3年前、友人が帰省するというので、中国地方の山あいの小さな城下町に行ったのですが、彼女の実家がなければ一生縁のなかった所。何もないなりに土地の流儀や環境、おいしいものに出会い尽くせました」。
お店では食べられないその地方の食や地元の人が参加する行事、ガイドに載らないスポットなど、豊かな付録付きのテーマです。
テーマ提案2/太平洋側⇔日本海側、列車で横断

ルート例:名古屋〜︎富山/JRで岐阜、高山経由でも、名鉄で犬山など経由した後、高山本線へ入るでも。
岡山〜︎鳥取・島根/津山線経由で鳥取に至るコース、倉敷経由伯備線で米子・松江へのコース。
京都〜︎敦賀/湖西線・北陸本線コースは内陸の京都発でも変化が感じられる。どのコースも特急で一気に行くより各駅停車がおすすめ。
「列車で列島を輪切りにするように移動すると、日本の地形や気候が見えてきます」。
酒井さんのおすすめは例えば福島県のいわきから磐越東線に乗車、郡山で磐越西線に乗り換え徐々に日本海側の風を感じながら新潟県の新津、新潟に至る旅。
「空気の変化におおっと感動します。途中下車して温泉に入ったり、何泊かしながらゆっくりと」。
日本海側に住む人ならもちろん逆コースで。
お話を伺った方
酒井順子/さかい・じゅんこ
エッセイスト。1966年出生時から東京在住。2003年『負け犬の遠吠え』で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。『女子と鉄道』『女人京都』、共著で『来ちゃった』ほか旅にまつわる著作も多数ある。最新刊は『松本清張の女たち』。
イラスト/丹下京子、取材・文/原 千香子
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『クウネル』NO.134掲載
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