映画好き! イラストレーター金井真紀さんが大事にする言葉。普遍的に真理をつく言葉に心が動く

活躍中のイラストレーター金井真紀さんが心にしっかと留めていた映画の中の言葉を、描き出してもらいました。視点はユニーク!それぞれの言葉が、またパワーアップして輝き直してくるのも面白い。
核心をついた語りに我が身を振り返る。
世界を広げてくれる格言や共感できる至言を噛みしめて。
「ひとひねりある言葉、普遍的に真理をつく言葉に心が動きます。たぶん自分と照らしてそこでシンパシーを覚えた言葉で、何度も噛みしめるからよけい感じ入るんだと思います」
\映画『バービー』より/

『 バービー 』
人間の世界に降り立ったバービーは、そこが暮らしていた完璧なハッピーランドとは違って、男性上位の旧式な世界だと気き......。終盤に至り、マテル社で自分を生み出したルース・ハンドラーと交信をもつ。この一言をきっかけにバービーの決心は固まっていく。
若い頃からずっと取材などで海外に出かけることが多い金井さん。「移動の飛行機内って意外な映画との出合いがあります。『バービー』は1年前に観て自分の来し方を一瞬に振り返ってしまいました。両親に反発しながら海外に行っては母に見守る役をさせてきたと」
\映画『マルモイ ことばあつめ』より/

『マルモイ ことばあつめ』
日本占領下で朝鮮語が弾圧された歴史を紐解く韓国映画。 辞書編纂を進める若き研究者からかけられた言葉を「無学な男、パンス(ユ・ヘジン)が応用を加え格言として語る設定も痛快でした」。パンスは14人の仲間を呼び各方言を話させ収集するという画期的なアイデアを出す。
取材で世界の多様性に触れることも多い背景もあり『マルモイ』も印象深い。「抑圧された言語をテーマにする取材もしてきました。独自の言語を守ろうとした人たちの決死の誓いがやさしくひねられた格言になっていてぐっときましたね」
\映画『そして人生はつづく』より/

『そして人生はつづく』
アッバス・キアロスタミ監督がセミフィクションスタイルで撮った1991年の作品。大地震に見舞われたイラン北西部。映画監督と息子が過去作の出演者たちの安否を尋ね車で旅する。ジグザグ道で、前作に出てくれたおじいさんと再会。しみじみと鮮烈な一言が発せられる。
何度か訪れたイラン。言葉が風土と一緒に映画からじわり、押し寄せます。
「達観したおじいさんの言葉、市井の人が放つからこそ重みがありました。そして人生つづいていくんだなあ......」
PROFILE
金井真紀/かない・まき
1974年生まれ。作家・イラスト レーター。イラストとインタビュ ーによる探訪書『テヘランのすてきな女』(晶文社)、『パリのすて きなおじさん』(柏書房)ほかの著書では、集めるのが好きな嗜好 をいかんなく発揮。クルド民族の祭りを見る旅から戻ったばかり。
『クウネル』2025年7月号掲載 取材・文/ 原 千香子
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