美しい絵本の中で 一生ものの言葉と出合う。表参道のギャラリー主宰者が大切にする4つの言葉

子どものときに出合って心の奥深くに刻まれたあの言葉。大人になって、自ら選んだ本の中で巡り合った忘れがたい文章。絵本に書かれた美しく印象的な言葉は、読者の心にずっと寄り添い続ける人生の宝物です。絵本好きピンポイントギャラリー主宰 西須由紀さん聞いた珠玉の言葉集です。
生活、平和、生きること…… 絵本の言葉にはすべてが詰まっている。
\言葉1/
『たいせつなこと』より

あなたが
あなたで
あること

『たいせつなこと』
マーガレット・ワイズ・ブラウン 文/レナード・ワイスガード 絵/うちだややこ 訳/フレーベル館
1910年生まれのアメリカの絵本作家M・ワイズ・ブラウン。シンプルな表現の中に細やかな愛情があふれるその世界に多くのファンが。この絵本でも見過ごしがちな日常のものをきっかけに、大切なことは何か、自分らしく生きるとは、という問いを投げかける。
まだ幼かった娘が絵本を見て、きゃっきゃっきゃっと楽しそうに笑ったときに感じた、母としての喜び。青山でギャラリーを営む西須由紀さんにとって、絵本の素晴らしさを決定的に感じた瞬間でした。1988年のオープン以来40年近く、多くの絵本作家、イラストレーターを世に紹介してきた西須さんが4冊のとっておきを選んでくれました。
\言葉2/
『たべる たべる たべること』より

たべる
たべる
たべること
たべることは
いのちを つなぐということ

『たべる たべる たべること』
くすのきしげのり 文/小渕もも 絵/おむすび舎
この世に生まれ、初めて母乳を口にしたときから死ぬまで、命の基本である食に焦点を当てた1冊。「食をテーマにした絵本を手がけている新潟の一人出版社の作品。人生の移ろいの中で、食べることがもたらす恵み、愛、感謝がまっすぐに伝わってきます」
「平和であること、おいしくご飯が食べられて、自分らしく生きられること。そんな人生の原点、最も大切なことを伝える絵本です。こういう絵本を読んだ子どもが大人になって政治や社会を司っていくとき、ここに書かれていることを思い出してくれたら世の中も変わっていくのではないでしょうか」騒然とした世の中だけれど、静かにページを開き、絵本の絵や言葉の世界に没入する。そんな時間が今、誰にとっても必要なのではないか。そんなメッセージが伝わってくるようです。
\言葉3/
『へいわってすてきだね』 』より

やさしいこころが にじになる。
へいわっていいね。
へいわってうれしいね。
みんなのこころから、
へいわがうまれるんだね。

『へいわってすてきだね』
安里有生(あさとゆうき)詩/長谷川義史 絵/ブロンズ新社
沖縄県与那国島に暮らす小学1年生の少年が書いた『へいわってすてきだね』という詩に、人気絵本作家の長谷川義史さんが絵を描いた作品。
「平和がなくては何も始まらない、平和は幸せの原点だということ、それを絵本で伝えることの意味は大きいと思います」
\言葉4/
『こもれび』より

「わたしは ここで 生きるしかない。
でも、やっと わかったの。いつも 同じじゃないって。
今は、しんじられる。いつか また 光がくる。
そのときのために、葉を ひろげておきましょう。
どんな 小さな光にも ちゃんと ふれられるように」

『こもれび』
林 木林 文/岡田千晶 絵/光村教育図書
同じ作家と画家のコンビによる『あかり』『ひだまり』に続く秀作。こもれびが差し込む木陰で生きているたんぽぽやつゆくさたち。それぞれが光を求めて、でも風の流れや鳥の動きで光の当たる場所は変化する。人間社会に通じるような草花の気持ちの揺れが愛おしい。
PLOFILE
西須由紀/ さいす・ゆき
ピンポイントギャラリー主宰 68歳
ギャラリーが毎年開催し、若手絵本作家を発掘、応援する『ピンポイント絵本コンペ』はコロナ禍でも休まず今年26回を迎えた。絵本作家の仕事ファイル『絵本のいま』(玄光社)の創刊から6号までの監修も。
『クウネル』2025年7月号掲載 写真/久々江 満、取材・文/船山直子
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