美しい湖に導かれ、都内から移住。自然からエネルギーを受けとる日々ーpaco 飯田尚子さん【住まいと暮らしvol.69】

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の早坂香須子さんのバトンを受けてご登場いただくのは、クリエイティブディレクターの飯田尚子さん。

飯田さんの暮らしのルール

1)見えないものも、ちゃんと整える
2)自然と調和させる。そして、たまに意図的にずらす
3)自分にとって必要のないものを見極める

東京で生まれ育った飯田さん。4年前、湖畔に立つ築30年のログハウスをリノベーションし、長野へ移住したそう。

「コロナ禍で完全に仕事がリモートになり、東京にずっといなくてもいいんだと思いました。昔から湖畔に住むというぼんやりとしたイメージがあったことを思い出して、地図でこの辺かなと選んだ湖に旅行で来てみたのです。

ここは日本でも珍しく、湖が三つ連なっているのですが、透明度の高い湖がイメージにもぴったりで。偶然ここに住む人と知り合い、家と暮らしを見せていただいて衝撃を受けました。さらになかなか売りに出ることのない湖畔の土地と家を手放したいという人を紹介してもらい、この流れに乗ってみるしかないよね、と移住を決めました」

天窓から光が差し込むリビング。満月の日は家の中から鑑賞できるそう。

梁だけは元の家のものを活かして、フルリノベーション。湖の目の前という立地を最大限楽しむため、窓を大きく広げ、自宅桟橋も作りました。

「家の中から四季折々の湖が、アート作品のように見えるようにこだわりました。建築家の納谷新さんから、湖側の壁を黒にすることで、変わりゆく湖の色にフォーカスできるとご提案いただいたので、梁も黒にしてアクセントに。木をふんだんに使っていますが、カントリー調やログハウス風にしないようにお願いしました。

湖付きの土地なので、桟橋を作って意外な使い方をしようと主人と決めました。夏は同じ町の人気カフェを営む友人と、SUPでしか来れない桟橋カフェをオープン。

自然環境の中での暮らしは出会いも多く、薪仕事など暮らしのためにすることがたくさん。必要なものだけに純度を上げながら向き合いたいと思っています」

自宅桟橋カフェを開催した時の様子。「今年は、伝説のサーフボードビルダーの方と受注会を計画しています」

一番のお気に入りは、玄関土間からリビングにつながる縁切りが気持ちいいところ。そして湖の景色はもちろん、空間の中で大きな面積が占める壁の遊びが気に入っているそう。

「漆喰の白、生木の色、木に一度白を塗った薄い白、アクセントの黒という、自分たちがリクエストしなかったところのバランスの妙が、住んでみると心地よく、建築家ってすごいなといまだに毎日感心しています。暖かくて機能的なところも気に入っています。

インテリアだけでなく、服も言動も、自分たちの環境に合っているかを考えつつ、完璧な調和より、意図的にずらしを入れるとおもしろいなと思っています。

今の暮らしを始めてからよかったことしかないのですが、湖のパワーが想像以上に大きく、その水で暮らしているから、心身ともに健康になり、エネルギーがクリアになりました。働き方や仕事にもわかりやすく、よい影響がもたらされていると実感し、感謝する日々です」

玄関は土間を広く取り、雪を落としたり、薪を一旦置いたり、生活の同線としても重宝するスペース。「毎日塩を撒いて箒で掃き出し、澱んだ空気を浄化して、澄んだ空気が入ってくるように心がけています」

キッチンの棚には好きな陶芸家の作品を並べて。「上はNY在住の陶芸家Shino Takedaさんの作品、下は主人のコレクションで、グラフィティーライターESOWさんと九谷焼のコラボ作品です」

秋田杉の一枚板を使い、家に合わせて建築家にオーダーした長いテーブルと、HIDAの椅子。「家族とのごはん、仕事の作業、読書、お茶の時間、友達との語らいのため、機能しながらも家の顔になるものが欲しくて作ってもらいました」

キッチンの作り付けの棚には、上の段に梅干しを干すための大きなカゴや、日常的によく使うカゴや蒸籠をディスプレイしながら収納。

玄関から家に入るまでの、広々とした土間。「冬は毎日ソレルの靴を履く日常が訪れるとは、東京にいるときには想像もしませんでした」

玄関に花を絶やさないようにしているという飯田さん。「しつらえは見た目だけでなく、家に入ったときの空気が変わるので、できるだけ信頼している地元のフローリストの方にお願いしています」

和室は来客用のスペース。「小上がりで茶室に入るように、入り口を低くしたデザイン。床の間に飾る作品はときどき入れ替えていて、今はナイジェルグラフの掛け軸と、マグマの花器を」

洗面所は脱衣所でもあり、トイレもある大きめの空間に。「物を出さないよう、すべてが収納できるサイズにするため、東京の家に来てもらって物量をチェックしてもらって作りました」

香りはキャンドルよりお香派。「東京香堂の麻の香り“あさ”は、神聖でありつつモダンさもあるので、気に入っています。木彫りの人形は出雲大社で見つけた木工作家による作品」

ベッドルームの窓から雪を見る、愛犬のピース。飾っているアートは河村康輔さんのもの。

土間でごはんを待つピース。「わが家のYETIと呼ばれ、Instagramで密かに楽しみにしてくださっている方も」

リビングからつながるウッドデッキ。「朝から夕方まで太陽の光が差し込み、四季折々の湖と木々の風景が、スクリーンのようにリビングから楽しめます」

夏は焚き火台で火を起こし、魚を炙ったり、野菜やマシュマロを焼いて楽しんでいるそう。

アウトドア用の椅子を用意して、すぐにお茶ができるように。

桟橋までの階段。「大工さんに間伐した木の枝で階段と手すりを作ってもらいました」

豪雪地帯にある湖の家。「冬になると2m越えもしばしば。庭に積もった雪でかまくらを作り、壁に小さな穴を開けてキャンドルを灯し、中でコーヒーを飲んで楽しんでいます」

profile

paco 飯田尚子/いいだひさこ

外資系企業を経て独立。現在は湖畔の自宅を拠点に、夫と共に「SNOW合同会社」を経営。企業やブランドのための商品企画やブランドコンセプトを手がけながら、AIで未来の風景を描くクリエイティブディレクターを務める。夫とポーティードゥードルのピースと暮らす。
https://paco-lightscape.com
Instagram@pacopeace
Instagram@_live_love_lakelife

 

飯田さんがバトンを渡すのは、ハワイ在住のアーティスト・山崎美弥子さん。「山崎さんと私は美大時代からの親しい友人。彼女の暮らしは彼女のアートそのもの。海と空が見渡せる天国のような場所に、広い庭と白い家。インテリアもハワイらしさをうまく取り入れた、彼女のセンスがそこかしこにあって、無造作に置かれたように見える彼女の作品と暮らしが完全に調和しています。ぜひみなさんに知っていただけたら!」と飯田さん。山崎さんの暮らしは、3月下旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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