高齢者向け団地住まい70代エッセイストが提案。お金をかけず、センスよく暮らすには?
高齢者向けの団地で、ひとり暮らしを満喫中の美術エッセイスト小笠原洋子さん。最低限のものしか持たず、お金をかけない暮らしぶりが注目を集めています。今回はそんな小笠原さんの暮らしをまとめたエッセイ本『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)より、アイディア満載の手づくりインテリアやお金をかけないセンスの磨き方についてご紹介します。
70代エッセイスト小笠原洋子さんの暮らしをまとめた一冊
1日1000円の予算で生活する「ケチカロジー」の生みの親、美術エッセイストの小笠原洋子さん。
現在75歳で年金暮らし。東京郊外にある高齢者向け団地で、最小限かつお気に入りのものだけに囲まれたひとり暮らしを満喫中です。本書はそんな小笠原さんの豊かでエレガンスな暮らしをまとめたエッセイ本です。
「お金は困らないくらいあれば十分」と語る小笠原さんは、お財布にも環境にもやさしい暮らしを実践中。「1日1000円」暮らしのリアルや、センスあるもの選びの基準、さらにおひとりさまでいることの覚悟など、マチュア世代におすすめの一冊です。
今回は〈クウネル・サロン〉の読者のために、本書の中から一部記事を特別に紹介します。
※これより下の記事は『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)からの抜粋です。
アイディア満載!手づくりインテリアで暮らしに彩りを
お金をかけずに、今あるもので工夫する、ということに努めてきました。「方丈の庵好み」の私にとって、3LDKの部屋は広すぎます。無用の一室を物置にしてしまわないよう、ギャラリー化することにしました。
といっても高価なものはなく、珍奇な品々が展示してあります。家族が遺したものも飾りました。ギャラリーとは、非日常的空間、あるいは別世界的な場だと思っています。この「ワタシギャラリー」に中近東のアイテムが多いのは、現代日本の装飾文化の中で、私がイスラム系にもっとも異国情緒を感じているからです。
たとえば、エキゾチックでアンティークなブレスレットとイヤリングを組み合わせて壁飾りにしてみました。これらは装身具として買ったというより、美術品として手に入れたものです。
さらに、イヤリングのもう片方は、居間の照明器具に取りつけるなどしてみました。こういったことは、考えてみれば考えるほど、アイデアは無限に生まれるものです。
また、大胆な刺繍のあるインド製のロングスカートは、ウエスト部分を切り取り脇の縫い目をほどいて、ベンチカバーに用いていますし、着古しのフレアスカートは、ハンガーに掛けた洋服カバーになりました。
そんな中での最高傑作は、レースをかけたチェストまがい。じつはこれ、上半分を失ったタンスの引き出しなのです。かつて小さなアパートに越したとき、どこからも運び入れることのできなかった大ダンスの一部を、気前よく処分してしまった後の引き出し部分です。
ケチが売りの自宅には、他に大した家具もなく、どれも古いあり合わせ品ですが、気分に合わせて模様替えができ、好きなように暮らせるのがおひとりさまの特権かもしれませんね。
お金がかからないセンスの磨き方
さて、洋服やインテリアには、センスが少なからず関係してきますが、まずは自分の好きなものを知ることが第一です。自分にとって「いいもの」「好きなもの」だけを残して暮らしていくことが、豊かになるカギだと思います。
そのためには、世にある「いいもの」をたくさん見て、感性を磨き、好きを養うことが大切。ここでは感性の磨き方についてお話ししましょう。
ホテルやレストランなどの施設にあるインテリア雑貨や器など、あるいはレッドカーペットを歩くような人のドレスなどを見ると、その美しさに魅了されることが多いでしょう。私は、とくに配色に惹かれ、参考にしています。全体のイメージを決めるのも配色ですが、そのよしあしは、形とのバランスにあると思います。
文化の異なる国々も注目すべきです。たとえば、フランスのライフスタイルアドバイザーのフランソワーズ・モレシャン氏は、日本に長く暮らしておしゃれ文化について発信しています。
彼女の本には、「パリっ娘は日本の若い女性のように洋服をたくさんは持っておらず、その服がベージュやグレーなどの中間色が多いのは、自身の個性を引き立てることに重きを置いているから」と書かれていました。逆にビビッドな色を主にした組み合わせは、個性を潰しがちになり、周囲とのバランスにも不調和を起こしやすいそうです。
だからといって、「パリに学べ」ではありません。風土の違い、街の成り立ち、伝統的な色彩感覚などで、当然国々に違いはあり、優劣を問うものでもありません。ただ一例として、パリは近代の都市大改造で、街路の配備や建造物の高さも整えられ、数百年を経た建物のディテール(細かい部分)や色彩も、一種の完璧さで統一されたモデル都市です。
なかでも私が注目するのは、家屋の扉やカフェの軒先テントの色。くすんだ青や、渋いブルーグレーなど抑制の利いた色が目を惹き、そこに材質や塗装の品質の高さが感じられます。ものをたくさん所有することや、たくさん色を使うことが、センスの基準でないことは学ぶ価値がありそうですね。
目を肥やすには、骨董品もいいですし、美術館でも画廊でもいい。生活用品や工業製品や家具などでも一流のものを見れば、その造形美が植えつけられていきます。ファッションやインテリアに関しては、買わなくともウインドウショッピングやカタログからも十分学べます。
街のポスターや看板を見て、すっきりしているなぁ〜と思うものを「なぜだろう」と考え、色の組み合わせやレイアウトなどを観察することで、センスは磨かれていくと言います。自分の好みを確かめたり、変貌させたりする上でも、トライしてみてください。
たとえば周辺で偶然見つけたハイセンスなもの、あるいは旅先でレアなものに遭遇した時など、感性を磨くポイントは意外とたくさんあるもの。私もシンプルながら満足感のある暮らしのために、これからも目を惹くアレコレを参考にして心のエレガンスを養えたらいいと思っています。
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『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』
1日1000円の予算で生活する「ケチカロジー」の生みの親、美術エッセイスト・小笠原洋子さん。現在は高齢者向けの団地で、最小限かつお気に入りのものだけに囲まれたひとり暮らしを満喫中。本書はそんな小笠原さんの豊かでエレガンスな暮らしをまとめたエッセイ本。「お金は困らないくらいあれば十分」と語る小笠原さんの暮らしのアイディアは、きっと参考になるはずです。
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『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』掲載
写真/星 亘(扶桑社)