【迷える50代のファッションメンター大草直子さん/後編】更年期と体の変化は、躊躇せず一歩踏み出せば解決できます
ファッションエディター、スタイリストとして幅広く活躍する大草直子さん。話題の新刊エッセイ『見て 触って 向き合って』(マガジンハウス刊)では、心身ともに大きく変化する50代の女性のリアルな姿が綴られ、多くのマチュア世代から共感を集めています。『「私の人生」は誰のものでもない。だから、迷い悩んでも離婚を決めました。【大草直子さんインタビュー】前編』の後編をお届けします。
更年期の不調はためらわずに医療を頼って
執筆活動をはじめ、自身が立ち上げたメディア『AMARC(アマーク)』やインスタグラムでの発信、さまざまなブランドとのコラボなどで多忙な日々を送る大草さんは、現在52歳。その中で着々と訪れる体の変化を確認するため、朝と夜の2回、「全裸を鏡で確認する」というルーティンを欠かさず行っているのだそう。とはいえ、ありのままの自分とサシで向き合うのはなかなか勇気がいることですが……。
「鏡を見て自分を仔細に観察することは大切。肌や体型が変わっていくこと自体は別に嫌なことではありませんが、それによって少し胸がざわついたり、ネガティブな感情になることもありますよね。私は以前の自分と競い合うのはとても嫌なので、変化を受け入れつつ、そのざわつきを取り除くために何が必要か見直して、運動や(バジェットを決めて)美容医療なども取り入れています。何か変化を感じたら、まずは"全身を見ること"を始めるといいと思いますよ」
本人曰く「泉のように涌き出る体力」があるとしながらも、マチュア世代の只中で避けて通れないのが更年期。エッセイでは、自身の更年期症状について触れ、それらを対処するために取り入れた具体的な方法や考え方を綴っています。(参照:更年期の向き合い方。私の場合)
「更年期症状で激しく気分が落ち込んだ時期があって、今年の初めは特に酷かったですね。もはやエッセンシャルオイルなどは効かない状態だったので女性外来へ行き、いくつかクリニックを変えながら、状態にあった治療を進めています。
みなさんもちょっとでも不具合や不安が出たら、躊躇せずすぐにお医者さんへ行ってください。治療して私はすごくラクになりました。更年期に対して無理にポジティブになる必要はありませんが、辛さは我慢しなくていい。今の世の中、ドラスティックな解決策が必ずあります」
キャリアを捨てずに続けてきたから出せる「私の答え」
エッセイの中で、ファッションに対しては迷いなくまっすぐに、フィジカルな内容には寄り添って並走するようにアドバイスしている大草さん。ただ投げかけるのではなく、経験を踏まえた上での覚悟ある「答え」は、身体や環境の変化に揺れるマチュア世代の背中をしっかりと押してくれます。
「表現の仕方については全く意識していませんでしたが……ファッションに関していえば、自分の名前で出している本の中での正解ではある、という自信はあります。それは経験というレイヤーと、ずっとキャリアを捨てずにやってきたということが礎になっているのかもしれませんね」
同世代の女性から多くの共感を呼んでいる、大草さんのリアルな言葉。発信する際には、優しく柔らかく、そして特定の人を傷つけないようにしていると言います。
「自分が何度も傷ついたり傷つけたりしてきたので、そこは非常に気をつけています。あとは嘘をつかないこと。やはり嘘を重ねると本当に信頼を失うことになるので。いろんなコラボやインスタライブをやらせていただく時も、きちんと愛を持って作り、自信を持っておすすめできないことはやらないようにしています。そういうところにみなさんが親しみや信頼を感じてくださっていたら嬉しいですね」
仕事も生活も、感謝と愛情をいっぱい込めて育んでいきたい
私生活では更年期と向き合いつつ、家族の形が変化し、新居で3人のお子さんたちとの生活がスタート。一方、仕事ではファッションエディター、スタイリストとして第一線を走り続ける大草さん。留まることなく自らを動かす、その原動力とは何でしょう?
「とにかく本当に好きなんでしょうね、この仕事が。いくらやっても飽きないし、一度やめて他の仕事をやろうと思ったこともないんです。そして、共感したり喜んでくださる読者の方やユーザーの方の存在がとても大きいです。イベントなどで"会えてすごく楽になりました"とか、本やブログを読んで"自分のことが好きになりました"と言っていただくのが何より嬉しくて。私もできるだけの愛をこめて発信しているのですが、それに対して返してくださるみなさんとのキャッチボールがとても楽しいので、私から出せるものはもっと出さないと!という思いが仕事へのモチベーションになっていますね」
最後に、これからやってみたいこと、目指す次のステージについて伺いました。
「これまで本当に幸せな仕事人生を歩んでくることができました。多くの同僚や先輩方に支えていただき、愛情もお仕事もいっぱいいただいた、だからできるだけそれをお返しできたらと考えています。同時に、私の人生は仕事だけではないので、またきちんと恋愛もしたいし、もしかしたら海外との行き来があるライフスタイルになるかもしれない。次の新しい面白いことへ向かっていきたいなと思っています」
大草直子/おおくさなおこ
ファッションエディター・スタイリスト。1972 年生まれ、東京都出身。大学卒業後、婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)に入社。雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わった後、独立。2019年にはメディア『AMARC(アマーク)』を立ち上げ、「私らしい」をもっと楽しく、もっと楽にするために、ファッション、ビューティ、生き方のレシピを毎日発信している。
2021年には、「AMARC magazine」を発刊。ファッション誌、新聞、カタログを中心に活躍するかたわら、トークイベントの出演や執筆業にも精力的に取り組む。
見て 触って 向き合って~自分らしく着る 生きる
ファッションエディター、スタイリストとして幅広く活躍する大草直子さんの新刊エッセイ。年齢を重ねファッションや美容の考え方が変わるなかで、「引いたり、足したり」を軸に自分との向き合い方を説く。ファッション、スキンケア・下着選び・メイク・スカルプケアを見直すなど、大草さんが日々実践している大人のTIPS集。
『見て 触って 向き合って~自分らしく着る 生きる』(マガジンハウス)
1,650円
撮影/小渕真希子、取材・文/松永加奈