モデル・田村翔子さん【人生最高の買い物】は、山の絶景が素晴らしいスモールホテル。そこから人生が動き出しました
自分にとっての買い物って?多岐にわたる買い物で経験を積んだクウネル世代の素敵なあの人に『人生最高の買い物』について紹介していただく第一弾。今回はモデルで『シアターワン』オーナーの田村翔子さんに教えていただきました。
人生最高の買い物
『絶景のスモールホテル』
緑におおわれ、景観にめぐまれた小さなホテルに出合った田村翔子さん。衝動買いから始まって、ホテルが新しい暮らしのコアにまでなってきたよう。
田村翔子さんが出合い購入したのは、なんと1軒のホテル。
「今のところ、人生で最高の買い物です。わりと吟味をして買い物する方なのですが、完全な衝動買い。偶然の出合いをしたものが自分のものになって、楽しい何かに繋がっていくのは嬉しいですよね。本当にワクワクが多い買い物なんです」
1年前の秋、元オーナーからホテルの買い手を紹介してもらいたいので見に来てほしいと言われ、田村さんは初めて東京西端、檜原村の山を訪れました。
「ホテルの概要は知っていたものの、辿り着いた瞬間に圧倒されました。向こうの山の緑がば〜んと開け、視野の中に人工のものが全く見えないんです。そして貯金をはたけば私でもなんとかなるかもと思わず『買います』と言ってしまって。ちょっと無理をしましたが私が見つけた! 他の人には渡したくない一心で」
自然の真っ只中の小さなホテルと5千坪の土地にはさらにホテル営業権も一緒に付いてくるというリアルな条件も、すんなり受け止めた田村さん。
「現状のホテルの形態を引き継げることや、一棟貸しでシンプルな形だから素人でも無理じゃないなと。マーケティングなどの手伝いをして少し蓄えた知識にも背中を押されましたが、まあ絶景あればこそ、で深くは考えず飛び込んだ感じですね」
その場所はワクワクを生み、人生の新展開も運んで。
手続きを終え、食事やインテリア等々新営業の準備をし、自らのホテルとしてスタートしたのが24年1月。そして一回 の買い物によって生活もがらり、転換しました。
週 に 2、3 度、車で都心から1時間半の檜原村に向かいます。 「オーナーの仕事は多様で限りはなく、体力も必要で。スタッフを配して動かしたり、オペレーションはそれなりに苦労というかいろんなことが起きました。
でも助けてくれる人が現れたり、その度になんとか解決できてきて。精神的に鍛えられましたね。一方でホテルを媒介に回り出す部分もありました。今まで出会えなかったジャンルの人たちと交流もでき、コラボレーションの話を頂いたり、新しいことばかり。ホテルを買っていない人生とは大きな違いでしょうね」
60歳直前での買い物の効用、意外なところまで至ります。都心暮らしの長い田村さんにとっては、自然あふれる檜原村という環境も特別なオプションです。
取材時も田村さん、山仕事の帰りのご近所さんとすれ違うのに、車を一旦止めて会話を交わしたり、村のカフェではマスターと地域の情報交換をしたり。また水源は集落内で交代で守っているとか。
「娘と、また一人でホテルに泊まる日も何日か作れました。とくに朝早い時間の気持ちよさは格別です。雲海が徐々に晴れていく......。ゆったりゆっくり、都会では決して得られない時間です。仕事をしながら、いい空気の中でリフレッシュしています。村暮らしどっぷりではないけど、徐々に村に溶け込めてきた気がするし、もっと村の魅力をアピールすることにも働きたいと思うように」
今までとは違う空気が人生に流れ込んで活性化しているように見えます。
「洋服などは数年たてば飽きるけれど、この買い物はいろいろな経験や課題を与えてくれました。どうやっていく?と今後を考えられるのが面白いんです。今は例えば庭のテントを山小屋風にしたいとか、地産の素材をたくさん使うカフェも併設したいなとか。いずれは自分で暮らす用にすることもありだなあ、とか可能性も広がるところが最高と言えるかも」
無形の魅力があり、享受の仕方や想像力次第でその在り方が変わってくる生きた面白い買い物という気がします。
田村翔子/たむら・しょうこ
モデル・会社経営・シアターワン オーナー
大学在学中にモデルとしてスカウトされ1985 年にデビュー。その後も継続して活躍。4年前に起業、豊富な海外経験を生かして、国内と海 外の会社のマーケティングコンサルとサポート 業務を手掛けているが今はホテルにかかりきり。
『クウネル』2025年1月号掲載 写真/玉井俊行、取材・文/原千香子
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