訪れた国で集めたお気に入りのアイテムでテーブルを彩る重松久惠さん。世界中から集められたカトラリーや珍しい道具類には、旅の思い出が詰まっているのです。
人を招いてご飯を食べるのが大好きな重松久惠さん。そこで振るまうのは中東やモロッコ・ロシアなど馴染みの薄い料理。完成度の高さと味は、現地のレストランに招かれた気分になるほど。こんな料理を生み出すキッチンは?と見せてもらうと、驚くほどシンプルでコンパクト。ところが、棚を開けるとそこには世界中から集められたカトラリーや珍しい道具類が、所狭しと収められています。一つ一つが愛着を持って使い込まれ、ていねいに手入れされているので、年月を経ても新品のような輝きを放っています。「若い頃から旅行好きで食いしん坊。自分が食べて感動したものは舌で記憶し、帰国後すぐに再現します。現地で見つけた道具や器を手にすると旅の思い出が蘇り、幸せな気持ちになります」
訪れた国は50か国以上。食と共にキッチングッズの宝探しも楽しみのひとつに。必ず足を運ぶのは市場や地元人御用達のスーパー、金物店。オーダーメイド品は旅の始めに注文し、帰国前日にピックアップする手際のよさです。「私にとってキッチンは、旅の思い出のストックルーム。ご飯会のテーブルに並ぶのは、そのストックの中から選んだストーリーのあるものばかり。お茶時のときにお道具の説明をするような感覚で、自分が集めた器などの話がきっかけとなって皆の会話が弾んでいけば素敵だな、と思っています」
重松久惠/しげまつひさえ
D&DEPARTMENT商品開発コーディネーター。中小企業診断士。東洋大学大学院非常勤講師。招き上手の母を見ながら育ち、自身もその血を受け継ぐ、料理の腕とセンスは玄人はだし。
『ku:nel』2020年7月号掲載
写真 山東サイ/取材・文 高橋敬恵子