おしゃれミューズの小林麻美さんの人気連載。今回のテーマは本。大好きな本について思いを巡らせたエッセイの第二弾。(その1からの続きです)
きっと 母も私に
『桃太郎』とか『因幡の白兎』とか
読み聞かせてくれたんだろうな
微かな記憶に 桃太郎の絵や 泥の舟 赤ずきんちゃんが
そして 自分で興味を持って読んだ本の最初は
たぶん 詩集だった
私は すごく暗い子供だった
小さな子供の心で受け止めるには
あまりにも酷な 大人の事情に 振り回され
いつの間にか
見ない 言わない 聞かない子になっていた
北原白秋を 何で知ったのか
家に詩集があったからか 思い出せないけど
白秋の詩を暗唱してた
『落葉松』 『この道』 『からたちの花』
自分でも 拙い詩のようなものを書いていた
言葉と活字に救われた最初が
白秋の詩だったのかもしれない
何だか すごく大人びていて
ウソみたいだけど本当に 子供時代の私は
暗い毎日を 本と音楽に救ってもらっていたのかもしれない
だから ずっと後になって
沢木耕太郎さんの『敗れざる者たち』に
出合ったときの衝撃は
やっと わかってくれる人に会えた!
というような気持ちになったことを覚えている
『一瞬の夏』
敗者 敗れ去った者たちへのレクイエム
やっぱり本は 私の宝物
小林麻美/こばやしあさみ
高1から雑誌やCMのモデルを始め、高3終盤に「小林麻美」で歌手デビュー。憧れのファッションリーダーとして活躍の後、結婚を機に引退。昨年、25年ぶりに本誌に登場し話題に。以来、連載が大人気。
『ku:nel』2018年7月号掲載
文・写真 小林麻美