【伊藤千桃さんがお金について考える/前編】十分に無かったからこそ、生活力が向上し、今の自分に
「あれば安心」のお金ですが、どれくらい必要で、どんな風に使うのが快適かは、人によってちがいます。「これから」を見据えたお金との心地よい関係についてさまざまな価値観の方に伺いました。
今こそもう一度考えたい、あなたにとって、お金とは?
60代後半で初の著書を上梓し、それを機に、一躍メディアで取り上げられるようになった伊藤千桃さん。
豊かな自然に囲まれた葉山の山の上の家をベースに、民泊やケータリング業を営んでいます。
「雑誌に紹介してもらったりするのを見てか、『優雅でいいわね』なんてたまに言われるんです。でも優雅なんかでは全然無いのよ。我が家の家計を知ったらきっとみなさん驚くわね」と、あまり困ったふうでもなく笑う伊藤さんに、こちらが拍子抜けしてしまいます。
預金通帳を見てはため息、数年後の家計を予測しては頭を抱え......。そんな話をよく聞きますが、伊藤さんはいたっておおらか。幼少期には家の事業 が失敗、シングルマザーとして一男一女を育てと、山あり谷ありの人生でし た。
でも、「お金がないことを恐怖だと思ったことはない」と、言い切ります。「なんとかなると思っているし、その分、私が働けばいいんだし」と、実に頼もしい。お金に苦労している母することも身に付いたかな。それが私 の性格には合っていたんですね」
財産といえば、亡き養母が遺してくれた家と広い庭だけ。そのことに感謝 しつつ、その財産を十分に活かすことを考え、暮らしてきました。
「シングルマザーとしてこの家で暮らすことになって考えました。家や庭の 手入れを放棄し、外に働きに出てお金を得るのと、私がこの場所を活用して仕事にするのとどっちがいいかな?」
そして、始めた「桃花源」。家の離れを旅人に開放し、得意の料理を詰めたお弁当をあちこちに届け、これこそ自分らしい仕事と胸をはります。
『クウネル』2022年11月号掲載
写真/柳原久子、杉能信介(石黒さん)、 取材・文/鈴木麻子
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この記事の
プレミアムメンバー
伊藤千桃
1950年ジャカルタ生まれ。インドネシアと日本のダブル。「桃花源」の屋号で、神奈川県・葉山の自宅をベースにお弁当ケータリング、バーベキューサービス、民泊などを行う。著書に『千桃流・暮らしの知恵』(主婦の友社)が。
Instagram:@toukagenhayama