【60歳、井手しのぶさんのペットロスとの向き合い方vol.2】愛犬との別れを受け入れ、新しい相棒を迎えるまで。

井手しのぶさんの愛犬小鉄くん

終の住処と決めて引っ越した現在の家に至るまで、自分のために建てた家はなんと7軒。会社経営を経てフリーの建築家として活躍する<クウネル・サロン>プレミアムメンバーの井手しのぶさん。

昨年体験した愛犬との別れについてのお話を、シリーズでお届けします。

亡くなった愛犬がきっかけで、庭に息子の住まいを建てることに。

井手さんが亡くなった昌夫くんに出会ったのは約10年前、場所はホームセンターのペットショップ。生後4ヶ月で売れ残っていた昌夫くんは囲いの中で不貞腐れているように見え、「私が連れて帰らないと誰も飼わないんじゃないか」と思ったそう。ダックスフントの老犬とジャックラッセル、猫2匹との暮らしに、新たな一員として迎えることを決意します。

「子供の頃からずっと犬のいる生活でしたが、感情豊かなまーくんとは、飼い主と犬を超えた唯一無二のパートナーのような関係でした。9年間一緒に暮らし、この先も一緒に病気を乗り越えていこうと覚悟を決めた矢先に、まーくんを失ってしまった喪失感は想像以上のものでした」

昌夫くんの闘病中から井手さんを支えてくれたのは、離れて暮らしていた35歳の一人息子。それまでは月に1度ご飯を食べる程度のつかず離れずの関わり方でしたが、心細い闘病中は何かと電話で相談していたそう。

「まーくんの介護生活がこれからも続くと思っていたので、ワンオペに限界を感じてしまい『うちに来る?』って聞いたら『いいよ』って言ってくれたんです。庭の一部に息子の住まいを作る計画を進めていた矢先にまーくんが亡くなってしまいました」

建築中の家と小鉄くん
庭の一角に目下建築中の息子さんの住まい。設計は井手さんが手がけ、小さな面積を最大限に活用する間取りに。そしてその中で佇む黒い子は…!

離婚後、母と息子の二人で暮らしていたこともありますが、住んでいた家の売却を機にお互い一人暮らしを始めてから一緒に暮らすのは約13年ぶりとのこと。

「一緒に暮らすと言っても私の住まいはこのままで、庭に息子用の小さい住まいを建てることにしました。お互いライフスタイルが違うので毎日顔を合わせるわけではないと思うのですが、60歳という年齢で新たに犬を迎えるにあたって、息子が引っ越してくることが後押しになったと思います」

元気いっぱい、やんちゃな相棒・小太郎くんがやってきた!

ふだんめったに迷うことがないという井手さんも、新しい相棒を迎えるにあたってはかなり迷ったそう。

「息子に相談したら『犬のいない生活は無理だと思うし、飼ったほうがいいと思うよ』と背中を押してもらい、まーくんと同じフレンチブルドックを探し始めました」

ブリーダーのサイトで子犬を見つけ問い合わせてみたものの、新しい子を迎える準備ができているか自信がなく、一度は断ってしまったという井手さん。でも会うだけ会ってみようとブリーダーの元を訪れたところ、やんちゃな兄弟たちの中でワンテンポ動作が遅くおっとり見えた男の子に惹かれ、新たなパートナーに迎える決意をします。

「まーくんとは全然タイプが違うんだけど、60歳という私の年齢を考えると、おっとりした子のほうがいいかなと思ったの。まだ赤ちゃんだったので、2ヶ月になるまではブリーダーさんが育ててくれたんですが、その間もずっと悩んでいました。自分の年齢を考えると、おそらく最後の子になるだろうと。

ちゃんと愛情を注げるか、最後まで面倒を見られるか悩みましたが、息子が引っ越してくることが決まっていたので、何かあった時に病院に連れていってもらったり、頼れる存在がいるというのは心強かったですね」

こうして井手さんの家に迎えられた新しい家族の名前は小太郎くん。生後2カ月で迎えた当時はトイレの失敗も多く、お世話に追われる毎日だったそう。

井手しのぶさんの愛犬小鉄くん
こちらが井手さんの新しい相棒、小太郎くん。現在6ヶ月のやんちゃ盛り。迎えた当初はオドオドしていたそうですが、今や先住の猫たちや来客にも物怖じせず、堂々たる貫禄です。

「おっとりしているという第一印象は裏切られ、いたずらもすごいし、家の中は滅茶苦茶(笑)。毎日家の中でおしっこを拭き歩いて、一生こんなことやってくのかなって……。強く叱ったこともありましたし、この子とやっていけるのかな?て思ったこともありますが、次第にお互いの調子が分かってきてようやく落ち着いてきた感じです」

新しい相棒の小太郎くんと暮らし始めて約4カ月、息子さんの家の建築も始まり、新たな暮らしに向けて忙しい日々を過ごす井手さんですが、昌夫くんへの思いは変わることはないと語ります。

井手しのぶさんと小鉄くん
取材中、井手さんに構ってほしくてカットインしてきた小太郎くん。

「息子の引っ越しも、こっちゃん(小太郎くん)を迎えたことも、まーくんが導いてくれたんじゃないかって私は思っているんです」(次回へ続きます)

取材・文/吾妻枝里子

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