国際中医専門員の資格を持ち、「衣食で心と身体のケア」をテーマに、ライフアンドファッションスタイリスト®として活躍する、やくぜんもとこさん。クウネル・サロンでも、薬膳やファッションがテーマの記事を担当しています。
やくぜんもとこさんが現在のキャリアをスタートしたのは、実は51歳のとき。過労から体調を崩してしまったことで、26年近く勤めた会社を早期退職。このことがセカンドキャリアを考え始めたきっかけだそう。
そんなやくぜんもとこさんが、今のファッションと食という軸の仕事を見つけるまでのお話を全4回のショート連載でお届けします。
vol.1の「過労で体調を崩してしまった当時のお話」に続き、vol.2では体調が回復した後、薬膳と出会い、薬膳の勉強をスタートしたときについて。
◆約10年前に行っていた、菜食中心の食事のこと。
体調が徐々に戻り始ると、「なにかをやりたい!」と意欲が湧いてきました。そのときに、ふと思いついたのが「食事」にまつわること。
東日本大震災の年に夫が大病をし、薬の副作用で苦しむ姿を目の当たりにしました。夫の退院後、「食事を変えて、二度と病気にならないようにしなければ」と食事療法に挑戦することを決意。
そのとき参考にしたのが、当時、済陽高穂先生が提唱されていた「動物性たんぱく質と塩を大幅に減らす食事療法」です。いわば、玄米や豆・野菜・果物など菜食中心の食事でした。
しかし「お医者さんからは食事制限について何も言われていない」と、肉好きの夫が猛反発! 同時に、作る側の私も大変でした。
減塩でも美味しく食べられるように、と丁寧に出汁をとったり、下味をつけた高野豆腐をフードプロセッサーでひき肉のようにするなど、フルタイムで働きながら、今までの倍以上に時間と手間がかかる調理工程に、体も心も疲れてしまいました。
退院後半年間は身体のためにも続けようと2人で決めて頑張りましたが、やはり全てを徹底するのは難しく、少しずつ以前の食事に戻していきました。
そんな過去のこともあり、今回は「無理なく続けられて健康を保てる」食事法を学ぼうと、薬膳とマクロビオティックの2つに絞って、料理教室を探すことにしました。
◆料理研究家・青山有紀さんのある一言に救われ、薬膳の道へ…
そんなとき、当時中目黒のおばんざいやさん『あおや』の店主で、料理研究家の青山有紀さんが主宰する薬膳料理教室を見つけました。直感で通いたい!と思ったものの、この料理教室は毎回抽選制。メディアでも人気の青山さんが直接指導してくれることもあり、なかなか通うことができませんでした。
ようやく三度目の申し込みで当選し、初めて伺ったのが2016年の12月。その時に青山さんが「薬膳は食べてはいけないものがない食事です」と話してくださいました。この一言で、薬膳を学ぶ決心がつきました。
以降、この料理教室には数回通いましたが、韓国料理や京都の季節のおばんざいを取り入れたお料理の美味しさが今でも時々思い出されます。
◆薬膳の学校へ。そして猛勉強の日々。
気持ちが決まれば行動が早いのが取り柄の私。さっそく、薬膳を学べる学校の資料を集め始め、2017年4月から本草薬膳学院の国際薬膳師コース(現中医薬膳師コース)に通い始めました。この学校は今でもお世話になっています。
本草薬膳学院を選んだ理由は、平日昼間のクラスがあったことと、1つのコースの中に調理実習も含まれていたことです。検討した他の学校は、2つのコースを申し込まなければ調理実習が受けられない受講体系となっていました。
学校への通学は、2週間に一度。まず午前は、座学で中国医薬学の基礎を学びます。聞きなれない、見慣れない、四字熟語に目を白黒させながら日々奮闘。そして、午後は季節や体調に合わせた薬膳の調理実習がありました。1日5時間、毎回あっという間に過ぎていきます。
勉強は大変でしたが、調理実習があったおかげで頑張れた気がします。午前の講義で聞いた珍しい材料に実際に触れながら、皆で和気あいあいと調理。さらに最後に試食する時間はとても楽しく、座学の疲れも吹き飛びました。
卒業発表時には課題が出されて、オリジナルの薬膳をグループ毎に試行錯誤しながら作ったことも良い思い出です。
◆努力が実を結び、国際薬膳師・国際中医師と次々に合格。
よちよちと始めた中医学の学びはあっという間に1年が過ぎました。そして2018年6月に国際薬膳師(*1)に合格。その後、学びを深めること約3年。2021年1月に薬膳の勉強を始めた当初からの目標であった、国際中医師(*2)に合格しました。
(*1)国際薬膳師とは中医薬膳学や食材、調理に関する専門的な理論や知識を有する薬膳の専門家としての資格。中国国家中医薬管理局に属する一級学会の中国薬膳研究会が発行。
(*2)国際中医師とは中国国内を除いた世界の中医学従事者を対象として、正しい中医学知識を有する人材であることを認定する資格。中国政府の外郭団体である世界中医薬学会連合会が発行。
試験に合格したから、「はい、おしまい」といかないのが、学ぶことの面白さ。今でも月に1回学校に通い、中医学の大元となる古典を学ぶほど、薬膳の奥深さに魅せられています。
薬膳を学び始めて、どんどん興味の幅が広がっていったやくぜんもとこさん。次回vol.3では、ファッションを学んだお話をお届けします。
●やくぜんもとこさん連載 50歳からのセカンドキャリア
vol.1「過労で体調を崩し、48歳で早期退職した当時のこと」