仕事や家事にと忙しいうえ、思い通りに出かけられない日々が続くけれど、ときには大自然に囲まれて心と体をリフレッシュしたい……そんな希望を叶えるべく旅に出たのは、料理研究家でありローフードマイスターの志村双葉さん。都心から車で約1時間半の距離にある東京本土唯一の村〝檜原村〟に向かいました。豊かな自然に抱かれて佇むツリーハウス風の貸別荘「ちゃめ*ハウス」に1泊2日のショートトリップです。
*「ちゃめ」とは運営会社である井上店のオーナーの愛犬の名前から。檜原村の大自然の中で、愛犬とともにゆったり過ごせる場所を、との思いを込めて付けられました。
■shoppinng
ちょっと寄り道。地元名産品が並ぶ「山の店」にふらり
「思い立ったらすぐに行ける距離なのに自然がすごく近い!」「東京とは思えないわね」──その日、志村さんは30年来の付き合いである友人の川崎博子さんと愛犬モモちゃんと連れ立ってのお出かけです。
宿泊地である「ちゃめハウス」に向かう途中、目に留まったのは地元の名産品がズラリと並ぶ「山の店」。「寄って行こうか!」と志村さん。こうした寄り道も自由きままな旅ゆえの醍醐味です。大小さまざまな里芋や大和芋、手作りの生芋こんにゃく、立派なひのはら舞茸……。気になる食材をいくつか購入して、いざ「ちゃめハウス」へ向かいます。
山の店
住:東京都西多摩郡檜原村下元郷22
電:042-598-1025
営:10:00〜17:00
休:火曜日
https://hinohara-kankou.jp/spot/yamanomise/
■food
パンの香りに誘われて。渓流テラスで自家製ピザを堪能
到着したのはちょうど昼過ぎ。車を降りるとすぐそこに山がそびえ立ち、辺りの空気が澄んでいるのを感じます。思いきり深呼吸をすると木々の香りと、なにやら美味しそうなパンの匂いが……。
「ちゃめハウス」の入り口にはパン屋「まい酵母パン たなごころ」が併設されています。作るのは卵や牛乳、砂糖、油脂類を一切使わず、国産小麦と自家製酵母を原材料にしたナチュラルなパン。優しくも滋味豊かな味わいに地元民のみならず、県外からわざわざ足を運ぶ人もいるといいます。
嬉しいことに川側に設置された渓流テラスでも食事可能。自家製ピザや地元の野菜をたっぷり使ったスープ、有機栽培の森のコーヒーなどが楽しめます。
■stay
愛犬と一緒に泊まれる「ちゃめハウス」で〝何もしない贅沢〟を
さて、腹ごしらえが済んだところで「ちゃめハウス」に向かったお二人。パン屋の脇を奥に進んだところが入り口です。自然が近いことに加え、愛犬と一緒に泊まれる*ことも「ちゃめハウス」の大きな魅力。しかも「一棟貸切りだからこそ他の人に気兼ねなく楽しめるのがいいですね」と志村さん。
*小型犬(~10kg)1匹まで
中に入ると木の温もりを感じられる空間が広がり、大きな窓から太陽の光が射し込みます。1階はリビング兼寝室、その真下にあるデッキには開放感溢れる露天風呂やバーベキューグリルのあるキッチン設備、夜空を眺めるときにおすすめのハンモックなどが用意されています。
どう過ごすのかはその人次第。志村さんはモモちゃんと遊んだり、自然をボーッと眺めたり。川崎さんはノートに日記を書いたり、お昼寝したり。とくに何をするわけでもなく、自由な時間を思い思いに過ごしていました。
■nature tourism
桜・紅葉・ドウダンツツジ……100年後の人里(へんぼり)に思いを馳せる
「ちゃめハウス」の前に流れる南秋川の河原を散策するお二人。冬ならではの静謐な空気と川のせせらぎ、木々の匂い、鳥の声。志村さんは言います。
「水はきれいだし、空気もおいしい。新鮮で冷たい空気を吸うたびに体の中から嫌なものが出ていって頭の中がスッキリとするような気がします。まさに脳みそのデトックスね」
見上げると、対岸に整備中の山がありました。実はここは地元住民からなる「人里(へんぼり)もみじの里」が100年後を見据えた里山作りに挑戦している場所。人里の山々に美しい景色を取り戻し、近い将来も遠い未来も人々が豊かに暮らせる場所にすることを目的に、数千本もの桜や紅葉、ドウダンツツジを植栽しているといいます。
「ちゃめハウス」オーナーの井上佳洋さんも「人里もみじの里」に参加するお一人。「まずは10年後を楽しみにしてください。春には桜やツツジが咲き誇り、秋には紅葉が山を赤々と彩りますよ」と話します。志村さんと川崎さんは「想像しただけで嬉しくなります」「毎年足を運んで、山の成長を見るのもいいね」とまだ見ぬ景色を想像しながら楽しんでいました。
■BBQ
地のものをシンプルに味わう大人のバーベキュー
陽が暮れはじめた頃、「少し早いけど夕飯にしようか」。来る途中に買った地元の野菜や手作りの生芋こんにゃくを取り出した志村さん。そして檜原村のお隣に位置するあきる野で飼育されている東京ブランド黒毛和牛〝秋川牛〟も購入していました。「こういう質のいい地のものがあれば難しい調理なんてしなくても十分美味しいのよね」
「ちゃめハウス」に用意されているバーベキューグリルで秋川牛や舞茸を焼いて塩で食べたり、地元産の味噌をつけてアレンジしたり。さっと湯がいた生芋こんにゃくは味噌と柚子皮を添えて味噌田楽に……食べたいものを自分の好きなように味わう。これぞ大人のバーベキューです。
■bonfire
冬ならではのお楽しみ。大自然に抱かれながら〝焚き火〟に癒される
そしてもう一つ、冬だからこそのお楽しみがあります。それは焚き火です。「ちゃめハウス」には誰でも簡単にできる焚き火セットが用意されています。
「都会ではできないし、自分で用意するのも難しい。焚き火ができるシチュエーションて、なかなかないわよね」と志村さん。木が焼ける匂い、パチパチと弾ける音……。オレンジ色の温かい火に手をかざし、ボーッと眺めます。ただそれだけで心が落ち着いていくのが分かります。
「どうして自然の中に身を置きたくなるのかといったら、やっぱり生きるためのエネルギーを充電するためだと思う。もちろん都会ならではの楽しいこともあるけれど、いろいろ忙しくしていると消耗することも多くて。人間だって自然の一部。天然物でしょう?人工物に囲まれてばかりにいると疲れるのは当たり前よね。だからこそ自然のなかでエネルギーチャージしないと。檜原村なら少し足を伸ばせばすぐに来ることができる。こんな冬の過ごし方もあるんだってことを、ぜひ知ってほしいですね」
冬の檜原村。自然に抱かれた「ちゃめハウス」で何もしない大人の休日を楽しんでみてはいかがでしょう。
撮影/青木和義 取材・文/葛山あかね 編集/篠崎恵美子
■+α
付録!
春になったら訪れたい、檜原村の見どころあれこれ
季節ごとに異なる表情を見せてくれるのも檜原村の魅力です。たとえば東京で唯一〝日本の滝百選〟に選ばれる名瀑「払沢(ほっさわ)の滝」。新緑や紅葉、雪景色など四季折々の趣を楽しむことができます。
写真/檜原村観光協会
払沢の滝
住:東京都西多摩郡檜原村村本宿
電:042-598-0069(檜原村観光協会)
また「ちゃめハウス」から車で5分ほどの距離にある「玉傳寺」は知る人ぞ知る人気スポット。檜原村の山々を借景に佇む枯山水庭園は見どころの一つ。また枯山水を眺めながら楽しめる寺カフェ「岫雲」、さらに本堂正面にある広縁では「座禅会」なども実施。ただ座っているだけで心が整う……そんな場所です。
愛犬と泊まることのできるツリーハウス「ちゃめハウス」
住:東京都西多摩郡檜原村人里2100-1
電:0425-98-6307
(「まい酵母パン たなごころ」も同上)
料金:通常(4月〜11月)2人まで33,000円/1棟 3人目以降 1人+7,700円/子供(5歳以下)1人3,850円。冬季(12月〜3月)2人まで26,400円/1棟 3人目以降 1人+6,160円/子供(5歳以下)1人3,850円。追加料金:愛犬(中小型犬1匹まで)2,200円。駐車料金(3台目以上)1台1,100円
チェックイン:14時〜18時 チェックアウト:10時
*ほかにも宿泊施設「ゆらく」やBBQハウスもあり。詳しくはホームページを参照ください。https://www.chamehouse.com
Nature Tokyo Experience
豊かな山々に囲まれた多摩、青空と海が広がる島しょ。これらのエリアでは、日本の中心都市の顔とはちがった、「東京の自然」という今までにない魅力を感じることができます。そんな東京ならではの自然エリアに注目し、体験型・交流型の新たなツーリズムを開発する事業を応援するプロジェクトです。
https://www.naturetokyoexperience.com/
問:公益財団法人東京観光財団
電:03-5579-2682
志村双葉/しむらふたば
ローフードマイスター、野菜寄り ごはん研究家。「簡単・おいしい・キレイ」なローフードを軸にしたヴィーガン料理を雑誌などで紹介している。また「ふたばずロー」ブランドで毎年2月前後のみの期間限定でローチョコレートを販売。
ふたばずロー ネットショップ https://futabasraw.base.ec