パリマダムが素敵に見えるのは、「おばさんっぽい服」を着ないから?【2024年人気記事まとめ】

2024年〈クウネル・サロン〉でご紹介した記事は約900投稿!そのなかから特に注目度の高かった記事を少しずつご紹介していきます。

「すっぴん=ありのままの自分」で爽快に生きるパリジェンヌたちの姿を描き、クウネルの連載も大好評だった藤原淳さんの著書『パリジェンヌはすっぴんがお好き』。ルイ・ヴィトンのパリ本社に17年間勤務してPRのトップをつとめ、業界内外で「もっともパリジェンヌな日本人」と称された藤原さんが語った、フランス人女性の生き方とパリジェンヌへの道とは? 書籍転載記事とインタビューを振り返ります。

パリマダムは「おばさんっぽい」服ではなく「自分相応」の服を選ぶ

まずは、藤原さんの著書について、反響が大きかった記事をご紹介します。
※本稿は『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

ある週末のこと。たまたまエレベーターでそのおばあさまと居合わせることがありました。気まずい沈黙を破ろうとした私は、後先考えず、
「そのお靴、素敵ですね」
と口走っていました。
(くだらないことを言ってしまった……)
後悔していた矢先、マダムがにこりともせずに言いました。
「5センチよ、5センチ」
「??」
「ヒールは5センチが最適なの」
見てみると、確かにヒールは高すぎもせず、低すぎもせず、ぴったり5センチです。
「やっと自分に合う高さがわかったのよ」
キョトンとしている私におばあさまは、
「いろいろわかったのは、60を過ぎてからよ」
そう言い残し、エレベーターを降りて行ってしまいました。

おばあさまは、自分に合い、自分が素敵に見えるヒールの高さを長年発掘してきたと言うのです。そしてそれを見つけるのに60年かかったと言うのです。エレベーターに一人、取り残された私は、なんだか背筋を正された思いでした。

(中略)

職場でも、とりわけ目を引くのは年配のパリジェンヌです。「あっ、素敵だな」と皆が振り返るのは例外なく、若い「マドモワゼル」ではなく、「マダム」と言われる年代の女性なのです

そんなマダム達は、決して「おばさんっぽい」服を着ることがありません。ハイヒールでも、ミニスカートでも、胸元を大きく見せる服でも、自分が良しとしたモノは平気で着ます。そして妥協することなく、自分が心地よいと思うことができる形、色、そして素材を選び、自分に合うモノを追い求め続けています。幾つになっても「年相応」の服ではなく、「自分相応」の服を貫いているのです。

自分らしい生き方を貫く勇気と気概。そんなことを教えてくれたおばあさまは今日もサングラスをつけ、ヒールを履き、近所のパン屋さんにバゲットを買いに行きます。

自分らしく生きるために必要な勇気の一歩

パリジェンヌ的な「自分らしい生き方」に心地よさを感じた藤原さんに、日本の女性の姿はどう映っているのでしょうか。インタビューを紹介します。

日本人の良いところは、自分より相手のことを思う気遣いや心配り、周囲の空気を読むところだと思います。フランスのように個人主義が強く空気を読まない人たちの中で暮らしていると、そうした特徴がとても素晴らしいなと。ただ、それが行き過ぎると、自分を犠牲にして損をすることが出てきてしまう。日本の女性は強くて頑張り屋さんだから、困難も乗り越えようと努力しすぎて辛くなってしまう人が多いように見えるんですよね」

周りを気にせず空気を読まないフランス人のスタイルも、時には有効なのではと藤原さん。まずは身近な人に自分の葛藤を伝えれば「私もそれ言いたかった」「やりたいようにやっていい」と理解されることはたくさんあるはずと言います。

「我が道を行くパリジェンヌたちも、ひと昔前の世代の方たちが頑張って声をあげてきたからこそ、今のようになれたんですよね。最初の一歩は勇気が必要で、私もいまだに上手に手を抜けないところもあるんですが、自分で意識を変えていかないと何も変わらないと思うようになりました」

藤原淳

ラグジュアリーブランド・マイスター。著作家(パリ在住)。
東京生まれ。3~6歳の間イギリスで育つ。聖心女子大学国際交流学科卒業。1999年、歴代最年少のフランス政府給費留学生としてパリ政治学院に入学。卒業後、在仏日本国大使館の広報を担当したのち、ルイ・ヴィトンのパリ本社にPRとして入社。ディレクターを経て、2021年に退社し著作家へ。著書に「Mes rituels japonais (日本人である私の生活習慣) 」(2022)など。

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