小泉今日子さんが小学生の頃から繰り返し読む大島弓子さんの詩集。生と死の世界の繋がりに共感

歌手・俳優の枠を超え、ファッションアイコンとしてクウネル世代のカルチャーをリードしてきた小泉今日子さん。

「物だけじゃなく、素敵な物に出会ったその時の気持ちを大事にしたい」という小泉さんに、買い物にまつわるお話を伺いました。

少女の頃から本は特別な買い物

子供の頃の印象的な買い物として挙げてくれたのは、大好きな漫画家・大島弓子さんのイラスト詩集『小幻想』。アイドルデビュー前、普通の少女だった11歳の頃、地元の書店で購入したものです。

「姉の影響で大島弓子さんの漫画が好きだったのですが、たまたま書店で手に取ったのが、このイラスト詩集でした。ストーリーがあるわけではないけれど、短い詩と美しいイラストがしっくりきて、繰り返し愛読しています。大島さんって生きることと死んでいることをあまり境界線なく描くのですが、私の中にも昔からそういう感覚があるんです。空を見上げて妄想をしたり、物語をつくって演じてみたり。当時の私の世界を、詩集を通じて大島さんと共有できた気がしました。目立つ場所にあったわけでもなく、片隅にひっそりと置かれていたこの一冊を、小学生の私がよく見つけたなと思います」

近所の有隣堂で本を買うと、好きな色を選んでカバーをかけてもらうのがとても素敵に思えたという小泉さん。買い物は、物との出会いだけでなく、その時の気持ちを大事にしているといいます。

大島弓子さんのイラスト詩集『小幻想』。
「大島さんの影響か、小中学生の頃は詩や作文を書くのが好きで、よく花丸をもらいました」

どうしてもこれが欲しい。みたいな物欲は、子供の頃からあまりなくて。母と姉たちと洋服を買いに行った時、『これとこれどっちがいいの?』と母に聞かれて、なんとなく『こっちかな』と答えたら『あんた今値段見て安い方がいいって言ったでしょ。私そういうの大っ嫌い! 両方買ってやるよ!』ってキレられたことがあります。好みがはっきりしている姉たちに比べ、欲みたいなものが見えない私が心配だったのかもしれません。今も変わらず、すっごい欲しいものってないんですよね。車とかも壊れなければいいやと思ってるくらいです」

いいと思ったものは、タイミングよく買えたらうれしいけれど、逃してしまったらそれはそれで仕方ないという考え。必要な実用品はもっぱらネットショッピング。説明をきちんと読まずに購入して、写真のイメージと実物のサイズ感の違いに驚かされることもあるそう。

「こんなに大きかったの? ってびっくりするけど、失敗したと思うことはありません。大きかったら大きい意味があるんだろうと、自分なりに納得しています」

PROFILE

小泉今日子/こいずみ・きょうこ

1966年神奈川県生まれ。1982年に歌手デビューし、俳優としても数多くの映画やドラマに出演。最新出演作は11月22日公開の映画『海の沈黙』。数々の名作を手掛けてきた脚本家・倉本聰氏が長年にわたり構想をあたためてきた贋作事件をめぐる物語で、本木雅弘さん演じる天才画家の元恋人役を好演。『海の沈黙 公式メモリアルブック』(小社刊)¥1,980も好評発売中。

語る小泉今日子さん。動画も公開中!

『クウネル』2024年11月号掲載 写真/中村力也、スタイリング/藤谷のりこ、ヘア&メイク/磯嶋メグミ、取材・文/吾妻枝里子、編集/河田実紀

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『クウネル』NO.130掲載

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